遺体屋の仕事

日常生活では見ることも聞くこともない「遺体屋の仕事」とは・・・

想い出の記念樹

2006-06-04 09:18:46 | 湯灌の儀式
ブログを書きながら入社した頃のことを思い出していました。
入社して3日目?に訪問したご葬家のことです。まだ何もできず、見学をするという立場でした。

ご自宅に訪問すると、玄関先にある大きな木に登っている中年男性がいました。家は築30年以上たっているような歴史を感じさせる造りでした。多分、玄関先にある木も同じ年月がたっていたと思います。

その男性に軽く会釈をし、お部屋に入っていきました。
準備をして湯灌を開始する頃、その男性が入ってきました。その男性は喪主様でした。

亡くなったのは、その男性の奥様で、年齢は60歳くらいだったと思います。
湯灌をしているときは、ご遺族の方たちと普通に話をされていて悲しんでいるようには見えませんでした。
むしろ、男性以外の親族の方たちが涙され、悲しんでおられました。


湯灌が終わり、着付けとお化粧、整髪がおわった段階で私たちは部屋を退室し、ご遺族の方だけでお別れをしていただきました。

・・・5分ほどご遺族だけでお別れをしていただいた後、お柩をお部屋に搬入し、ご遺族のほうを見ると、その男性が目を真っ赤にして泣いていました。
悲しみを堪えていたんですね。
奥様を柩にお納めするときは、

「何で先にいくんだよ!!」
とお声かけをされてました。

「故人様に持たせて差し上げたいものをお柩へ入れて差し上げてください」
とお声かけすると・・・

その男性は、故人様のお身体のまわりに沢山の柿を入れ始めました。
涙されながら裏返った大きな声で

「毎年、一緒に食べた柿だぞ!全部、持っていけ!」


・・・私も見ていて辛くなり、抑えていた涙がとまらなくなってしまいました。
柿の木は、結婚したときの記念樹だったそうです。


あのときの男性は元気にされているだろうか・・・と、ふと思い出してしまいました。






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先輩との雑談

2006-05-27 09:08:25 | 湯灌の儀式
・・・業務に向かう車中、「自分が死んだら湯灌をやってほしいか?」という話になった。

先輩は「私はやってほしくない」と即答。

私も「やってほしくないかな~・・・」と思った。

それは何故か?


私たちの仕事は、お通夜の前にすることが多く、ご家族以外に近所の方や喪主様の会社関係者など故人と面識のないかたまで湯灌に立ち会われることが多い。
お肌が見えないように湯灌・お着替えをさせていただいてるが、それでも恥ずかしさはある。
一番理想なのは、一緒に住んでいた方だけの立会いが望ましいかもしれない。

先輩との話では「自分はやってほしくないけど、家族にはやってあげたい」ということで決着しましたが、自分が死んだときに「湯灌をやってほしいな~」と思えるようにお仕事をしていきたいし、お亡くなりになるすべての人たちに受け入れられるサービスにしたいと思った。





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寂しい最期

2006-05-25 08:50:12 | 湯灌の儀式
都内某所。
業務をする場所は中華料理屋さんの2階、商店街の中にありました。
中華料理店2階で亡くなり、死後3日ということで検死が入ったそうです。

中華料理屋さんの2階は、コンクリートむき出しの10畳ほどのスペースがあり、大きな冷蔵庫と野菜の入った段ボールが山積みになっていました。不衛生な物置といったところでしょうか・・。 
段ボール脇の蓙を捲ると
そこにはガリガリに痩せ、お顔の色が黒くなってしまっている故人様がお休みになっていました。

ご家族の方は、湯灌も納棺式も立ち会いたくないとのこと、立ち会いのない中で私たちは作業を進めました。

故人様は70歳、奥さんも独立している息子さん・娘さんもいらっしゃいました
ご家族の間に何があったかわかりませんが、70年間人生の最期が、コンクリートのうえというのは悲しすぎます。

人生最後は、自宅で暖かいお布団で送りだしてあげたいものです。





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悲しい一言

2006-05-24 08:47:08 | 湯灌の儀式
神奈川県某所・・
今日の業務は、ご自宅での湯灌でした。

故人様は75歳のお爺ちゃんで、ご家族やご親戚、ご近所の方の立ち会いは、30名以上いました。

立ち会われた方は、非常に協力的で準備や片付けなどお手伝いしていただけました。
また、故人様の洗髪も積極的に参加され、大事にされていたな~と感じました。

そんなこともあり、納棺をする前に5分ほど私たちは退席し、ご遺族だけでお別れをしていただくことにしました。
私たちが部屋の外でお待ちしていると・・耳を疑う一言がありました。

部屋の中から出てきた親族のオバサンが、『洗い屋さ~ん』と呼ぶのです。

・・・???

『洗い屋さん???』

このお仕事をはじめて『湯灌屋さん』や『葬儀屋さん』と呼ばれたことはありましたが、『洗い屋さん』ははじめてです。
この呼ばれ方は非常にショックでした。

『洗い屋さん』=『死体洗い』を意味するからです。

湯灌サービスは喜んでいただけましたが、悪気はないものの、何気ない一言は考え深いものになりました。





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再会

2006-05-23 09:45:23 | 湯灌の儀式
今日の湯灌は、都内某所・・・
ご自宅での施行でした。

いつもは先輩の運転するクルマに乗って施行場所まで地図を見ながら案内するのですが、今日は地図を見なくても近くまでいける。
それは、以前、私が勤務していた会社の近くだったからです。

ご葬家に到着し、インターホンを鳴らすと・・・
出てきた方は見覚えのある顔。(男性で喪主様)
それは前の仕事のお客さんでした。しかも仲良くしていただいたお客さんでした。
故人様は、この方のお父様です。
私も特に余計な声をかけるわけでもなく、喪主様も私に声をかけてきませんでした。

準備が終わり、湯灌をはじめても無反応というか・・・不思議そうに私を見ていました。
喪主様は落ち着きがなく、部屋を出たり入ったり・・・

喪主様を除くそれ以外の家族は涙され、非常に悲しんでおられました。

湯灌と納棺が終わり、ご遺族の方には喜んでいただけ、感謝のお言葉もいただきましたが、喪主様だけは、最後まで私と言葉を交わしませんでした。

喪主様も他のご遺族同様、悲しんでおられたのかもしれませんが、私が行ったことにより、充分なお別れができなかったのでは・・・とスッキリしない再会と業務になってしまい、申し訳ない気持ちです。






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大きな葬儀の湯灌

2006-05-22 07:42:36 | 湯灌の儀式
今日の業務は・・・都内某所。
元大物○○議員さんの湯灌と聞かされ、緊張の中、向かいました。
ご依頼いただいた葬儀社さんもかなり神経を使っているらしく、「くれぐれも失礼がないように・・・」「ご遺族の要望はすべて聞いてあげるように・・・」
いつもより細かい指示です。
(常に失礼がないように、一生懸命やっているつもりですが・・・)

雨の振る中、クルマを走らせ、ご葬家に到着しました。
立派な門の奥に大きな家があります。(大豪邸ってやつです。)

いつものようにお線香をあげ、ご遺族様にご挨拶。
(お部屋の広さと中にある装飾品にビックリ!和室で30畳くらいありました。お部屋には著名人からの御花がたくさん届いてました。)
一緒に組んだ先輩は、ベテランだけあって、物怖じせず、ご遺族の方と打ち合わせしながら進行していきます。

私たちがおこなう湯灌サービスは、寝たきりのご老人をお風呂に入れて差し上げる訪問入浴サービスのようなスタイルで行います。
改造した特殊なクルマでお湯を沸かし、使い終わったお湯を吸い取り、持ち帰れるようになっています。

門の前にクルマを着け、クルマからお部屋までホースを引いていきます。
距離にしてお部屋まで50Mくらいあり、しかも雨が降っているから なお大変です。


私たちが準備をしていると・・・葬儀社の方がトラックでやってきました。
到着するなり、トラックの荷台から棺を次々とお部屋に運びいれ、ご遺族の方に選んでいただいてました。
棺はすべて高級品(布張りの棺や漆を塗ったもの、樅や檜の棺)らしく、5本ならべてみていただいてました。
結局、ヒノキの彫刻入りを選ばれました。(聞いた話によると数百万円だそうです!)
その他の棺は、雨の降る中、葬儀社さんが撤収。

・・・準備と棺が決まり、湯灌がはじまりました。


スミマセン。続きは明日。






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「チューしていいですか?」

2006-05-20 09:11:35 | 湯灌の儀式
今日の業務は千葉県某所・・・

お亡くなりになったのは50歳の独身男性です。
喪主は弟さんで推定40歳くらいで立会いは10名程度です。

いつもどおり、準備をすすめ、機材の搬入・故人様のお身体の処置を終え、ご家族の皆様にお集まりいただきました。

お身体のお清め前に「末期の水」をお取りいただきます。
通常はお水をお取りしますが、故人様が生前、お好きだったと日本酒をご用意されたので綿棒を使い、ご遺族の皆様にとっていただきました。
この際に、故人様のご兄弟がお話しているのを耳にしたのですが・・・
両親を早くに亡くしたため、中学卒業後、働きに出て、兄弟3人を育てたそうです。
そんなこともあり、婚期を逃し、独身だったそうです。(兄弟は皆、結婚したそうです。)


・・・厳粛な雰囲気の中、私がシャンプーをしていると喪主様が私に向かって

喪主様「チューしていいですか?」

私「えっ???・・・」

喪主様「チューしていいですか?」

私・・・思わず「はっ はい・・・」

喪主様は故人様の頬にチューをされました。
喪主様は私にチューをしたかったのではなく、故人様にチューをしたかったのです。(冷静になれば、分かることなんですが・・・)
私の戸惑っている姿と「はい」という答えに先輩も思わず「プッ」と吹き出してしまいました。
立ち会われていたご遺族も爆笑されました。

私は恥ずかしくなり赤面してしまいました。


しかし、弟さんのお兄さんに対してのキスの意味が、若輩の私には理解できません。








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「おじいちゃん、よかったね~」

2006-05-16 16:00:28 | 湯灌の儀式
・・・とあるY市の業務。故人様は80歳の男性、湯灌です。葬儀担当の方から「お亡くなりになる前に故人様は大変お風呂に入りたがっていた」と昨日お聞きしていました。
湯灌業務は基本的に2名で行う為、さっそく先輩と湯灌車でご葬家様宅へ向かいます。
到着し湯灌の準備が終って・・・家の中を見回すと20人以上の親族?の方が・・・おじいさん、おばあさんから小さな子供まで。
持参した浴槽で故人様の体を丁寧に洗い清めます。もちろん皆さんに故人様の体が見えないように注意しながらです。シャンプー、リンスでは喪主の方からの希望もあり一緒に洗髪をしました。
「おじいちゃん、きれいになってよかったね」
「風呂に入りたいってずっと言ってたもんなあ」
「おじいちゃ~ん、ありがとうね」
こんな場面に遭遇すると湯灌という業務をやりながらもついついウルウルきてしまう私はまだ半人前なのでしょうか。
お顔にごく薄い自然体のお化粧をし、旅仕度を整えます。そして皆さんと一緒に納棺。葬儀担当の方に前もってお聞きしていたのでしょうか。生前、故人様が愛用されていた品が用意されていて棺に納めていただきました。
このご葬家を立ち去るまで私と先輩は何回ありがとうと言われたことか・・・こんなに喜ばれるなら・・・!って思っちゃいます。でも私はまだ新人で半人前なんでそんなにお礼を言わないで・・・。
「湯灌」てなんとなくわかりましたか?ただしこんなに良い状態の故人様ばかりではないのも事実です。事故や自殺で亡くなったという場合もありますし、時には小さな赤ちゃんの時も・・・少しずつ皆さんに日記として紹介していけたらいいかな。っていうか、この文章を社長が読んだら「今回で終わりにしていいよ」って言われたりして!!






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