遺体屋の仕事

日常生活では見ることも聞くこともない「遺体屋の仕事」とは・・・

物モノ物語 という話

2007-06-29 16:35:21 | Weblog
弊社では“お炊き上げ”という業務をやっています。
亡くなられた方の使われていた遺品を
導師様にご祈祷、炊き上げて頂くというサービスです。
遺品回収に伺うことも、私たちの仕事です。
多くは最後使われていた“お布団”が多いのですが
その日は「70cm.四方のダンボール」と聞いてご葬家に伺いました。



迎えて下さったのはたぶん奥様
「お待ちしてました~」とニッコリ
玄関先に置かれた遺品を見ると「あれっ?」
聞いていた量の1.5倍はあるように思える。
奥様は一瞬『バレたっ!?』と思ったかどうかはわからないが

「電話で多少多くても良いと聞いて。多すぎますか?」と奥様

「弊社でそのようにお伝えしているのでしたら、大丈夫ですよ」とお応え
奥様は駄目押しという訳ではないだろうが
お炊き上げに至るまでの「ものがたり」を語ってくれた。


「実は主人が亡くなる2ヶ月前から、処分する予定だったんです」

一瞬『え"っ、まだ生きてるのに?(д゜;)』とドキッ
奥様の話は続く
「それがもう主人ちょっと痴呆きてたのねぇ
“明日から出張だから”とか言うのよ。20年も前に退職してるのに」
「ビックリしちゃってね~処分しようなんて思ったから察したのかしら?
それでちゃんとしなくちゃいけないと思ってお願いすることにしたの
で、これが主人がずっと使っていた【ボストンバック】」

ドスンと置かれたボストンにはナゼか出張には関係ないナイフとか小物などが
みっちり入れられていました。
仕事のかばんがあるならば、当然
スーツ(5着)・靴・肌着(5.6枚)・ネクタイもドンとプラスされた。

「あとねぇ、これ作業ズボン(5本)。
主人が“散歩するからって、ただ歩くだけって訳にはいかない”って
定年後、自主的に公園のゴミ拾いを亡くなる2年前までやってたのよ~」
「まぁ、ご立派ですねぇ」さすが大正生まれですねぇ~とまでは
言わないがつい口が出てしまった。
奥様は「でしょ~(^∇^)″」と誇らしげ。
なんだかここまで来ると微笑ましくなって来てしまった。
そして最後、碁盤を出された。
碁盤ってたしか結構値の張るものだと聞いたことがある。
「碁盤もよろしいんですか?どなたか使われないのですか?」
「んー。いいんです。誰も使わないだろうから。」と
碁石はボストンバックに入れたそうだ。
そして他によく着ていたセーターやマフラーなどオシャレ着もドンとお預かりした。


碁盤をお預かりしてちょっと寂しい気分になってしまったが
“送り出す人”である奥様はとても優秀な人なのかもしれない。
亡くなられたご主人のモノにしがみつくことなくても
明るくご主人のお人柄を自慢する事ができるのだから。
「よろしくおねがいします~」とさわやかにお見送りして下さった奥様に
故人様の人生丸ごとお預かりしたような気分になり
「 間違いなくたしかにしっかりとご祈祷させて頂きます」と
ヘンテコな挨拶をしてその場を後にしました。










遺体処置・エンゼルケア・湯灌サービス
ヒューマンケアでは、最期まで故人の尊厳を守るために死顔を整え、ご本人にもご家族にも、人生の最期にふさわしい最高の「グッドフェイス」でお送りいたします。

湯灌車の車窓から という話

2007-06-26 08:12:20 | Weblog
一日中車に乗っている事があります。

すごーい遠くに行ったり
大渋滞に巻き込まれたりと腰にかなり堪えます。
湯灌チームで2人で仕事に行く時は話相手もいていいのですが
時に一人での納棺業務に行く時もあり自分をもてあましてしまう事もあります。
もてあまし過ぎて、運転しながらすっごいキョロキョロします。
何か、刺激を求めるかのように・・・。

求めると刺激は目に入ってしまうのか
時にもみじマークのオジイサンがスーパーカブを跳ね飛ばす事故瞬間を目撃したり
自転車で携帯メールをしている少年が電信柱に顔から激突するのを目撃したり
『あぁ世の中って油断大敵だわ』と怖くなります。


ある日、理由は忘れましたが仕事帰りなんだか落ち込んでいました。
『もーヤダ。カエル(TT)』と帰社を急いでいました。
薄暗い夕方、どこかの奥さんが黒っぽいゴロゴロした犬を散歩させています。
『ずいぶん太ってる犬。何の犬種かな?』と
走りながら何気なく見ていました。
車ですれ違いザマにビックリ。
犬じゃなくてブタでした。
「ブタだぁーブタ散歩させてるぅーー(´>▽<`)」
全然田舎じゃない首都圏です。ペットなのでしょう。
ブタ愛好家、モデルの森泉さんではありませんでした。
お散歩ブタをみて爆笑し、お陰さまでご機嫌になって帰る事ができました。


『すばらしい!』って感動する事もあります。

ある日信号待ちしているとき、車椅子の女性が犬と一緒にいるのを見ました。
【 介護犬 】というやつでしょうか?
犬の胴回りににゼッケンのようなモノをつけています。
  『あれ?でもあの犬、プードルじゃない?』
プードルはサイズによりスタンダード、ミニチュア、トイの3種類
“スタンダートプードル”はもとは鳥猟犬として飼育され
体高は♂で38.1cm~ある大型犬である。
 スタンダートプードル


『 あのプードルが介護犬だとしたらめずらしぃ~
車椅子の人おしゃれさんじゃな~い(^^)?』と
車椅子の方をよく見てみると
きれーにお化粧をして
金髪に近いほど明るく染めたサラサラの髪
車椅子はカスタマイズしたのでしょう。
タイヤにホイールのようなものをつけて
カラフルなストーンで飾りをつけています。
車椅子になったのは後天的な原因なのかもしれません。
スカートから伸びた足はまだそんなに曲がっても細すぎもありませんでした。

『 車椅子の生活だって、おしゃれしよう。
  どうせカワイクするなら車椅子もカッコよくして
  介護犬もオシャレなワンコにしよう 』
あの女性はそう考えたのかもしれないですね。  
おしゃれをするのは大抵の女性なら大好きでしょう。
でも大変な状況に屈することなく、前向きに楽しんでいるその方を見て
お陰さまで遠巻きにも、心が熱くなる思いがしました。


偶然に見るだけで、為になったり、励まされたり、感動したり
生きているだけで人は誰かの役に立てるものなのかもしれないですね。







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ヒューマンケアでは、最期まで故人の尊厳を守るために死顔を整え、ご本人にもご家族にも、人生の最期にふさわしい最高の「グッドフェイス」でお送りいたします。

意外と○○な話

2007-06-23 07:13:42 | Weblog
「大変なお仕事されてご立派ねぇ」
「偉いわね~」
ご葬家よりたまにそのようなお声賭けを頂きます。
確かに忙しい時は、お水を飲む暇もないほどです。
1日4.5件業務を持つときはまさに「時間との勝負」
絶対、遅れるわけにいかないからです。
で、も。
逆にものすごーく暇な時もあります。


不思議なことにここの地域全体的に
“一斉に忙しくなり一斉に暇になるから”です。


暇になってしまった時は何をしているか?
社内の備品の準備・片付け・・・お茶・お菓子・ごはん・お茶・お菓子…。
やることをこなしてしまうと、空き時間になってしまい
違う意味での「時間との勝負」になります。


真ッさらの新人の時
私が入社したのはたしか今頃の季節
3ヶ月間は研修なのですが研修期間中は「完全師弟制度」で
同じ先輩にずーと研修してもらい勉強させてもらいます。
私はとてもラッキーなことにスゴクお仕事のできる先輩で
今でもあの先輩に教えてもらったことに感謝しています。

無駄のない動き
要領の良さと的確な判断
臨機応変の対応力
よかったです(^^)V


ただ唯一良くなかったことがありました。
その先輩はお仕事ができるあまり、いつもスムーズに事が進み
時間に余裕ができてしまうことです。
そして…食いしん坊なところです。

当時その地域にやっとスター●ックスができました。
もう7月後半、業務で大汗のでる季節
でもその後はだいたい時間があるので先輩より
「スタ●行かない(^∇^)″?」
「はーい(^∇^)″」
先輩の中でブームだったのでしょう。
生クリームのこってり乗ったカフェフラペチーノ(クリーム増量)を飲んでいました。
その“夏”は2kg程太ったのを覚えています。

ご葬家の皆さんが「大変ね~」と心配して下さるのはとてもありがたいのですが
そうではない時があるのもまた事実で
『時間が余っちゃって大変』とか
『太っちゃって大変』というのもまた事実です。




遺体処置・エンゼルケア・湯灌サービス
ヒューマンケアでは、最期まで故人の尊厳を守るために死顔を整え、ご本人にもご家族にも、人生の最期にふさわしい最高の「グッドフェイス」でお送りいたします。

誤解されそうな話

2007-06-14 09:03:44 | Weblog
大変体格の良い男性の故人様の湯灌に行きました。


とてもオシャレな方だったらしく
普通は病院の浴衣などを着ている場合が多いのですが
故人様はご自身の浴衣と帯をされて
きちんと上方もなでつけれられていました。

ただ“体格が良い”ので故人様のお体をご移動するのがかなり大変で
湯灌の浴槽とお布団への移動に手こずっていると
ご親族の男性の方々が
「手伝ってやるよ」と
気さくにお声を掛けて頂きとても助かりました。


湯灌が終わりお着せ替えに用意されていた服は
シャツとベストとアスコットタイ
ちょっとしたお出かけ時にアスコットタイを普段からつけていたのかもしれません。
ご納棺の品物には
 油絵のエプロンと筆
 今チョット流行っている“数読”の本
 ジャイアンツの応援の旗
ご納棺の品物を入れている時なんだか皆さんとても楽しそうでした。
そして
海軍にいた時の帽子と日の丸の国旗

「この国旗は棺の上に掛けたいんですけど」とご家族がご希望されました。
普通お棺の上には“棺掛”という金糸で色鮮やかに刺繍された覆いを掛けます。
一説によると、お坊さんが着ている“袈裟”に似たててたもの だそうです。
ですがこちらのご葬家は国旗を掛けたいご希望があるので
「どうぞどうぞ」という気持ちでいたのですが
ご葬家はなんだかちょっとテレ気味というか恥ずかしがって
「これは、海軍の時の…海軍の…」とポソポソしゃべり
半分に折ってかけていました。
「全部開いたら」と他のご親族は言いましたが
「なんか、ちょっと右翼っぽいような。。。」とそのままにされました。


たしかに、あまりにも大判でお棺を覆ってしまいそうな国旗は派手で
見ようによってはソレっぽくもありました。
たぶん「よくわからない人に誤解されちゃったらどうしよう、でも掛けたい」
という思いだったのでしょう。
なんだか微笑ましい気持ちになりました。
 着たい洋服
 趣味のお道具
 お仕事への誇りが詰まった品物
参列される会葬者の方はたぶん「故人様らしい」と思われる事と思います。
きっと良いお葬儀ができるだろうなと感じました。

気の持ちようの話

2007-06-11 08:30:14 | Weblog
大変ショックな事がありました。

その日は残業で帰りが遅くなり最寄の駅に着いたのが夜の9:30すぎ
お腹もすいて帰り道を急いでいたら前方にただずむ男性がこちらを見てる
『なんだろう?』と思ったら
露出狂の人でした。。。

ビックリしすぎて「ヒィィっ」ってカワイクない叫び声が出ました。
とっさに顔を背けて、恐る恐る振り返るとその【男性】はもういなくなっていました。

猛烈な恐怖と怒りで急いで自宅に戻り
やり場のない思いを友人にぶつけようと電話しました。
事の成り行きを話すと友人曰く
「叫んだんだ。それ正解」と言われました。
???
友人曰く
“露出狂の人の目的は叫ばせる事”だそうで
叫ばせる事ができた時点で満足なのだそうです。
(凶暴な犯罪にエスカレートする確率が低いとのこと)

と、いうことは私はまんまとその【男性】を喜ばせちゃったのか!と
更に怒りが増徴しましたが
「ふんっ」なんてバカにすると逆ギレする可能性があるので叫ぶ方が安全なのだそうです。



さらに友人曰く
「でも仕事で色んな人の見てるんじゃないの?」
そう言われるとたしかにそうでした。
湯灌で故人様の着衣を取り、お体を処置する時に見ていました。
もちろん凝視はしませんがチラ見でも叫んだりはしません。
必要であればご処置もしなければいけません。
もちろんご洗体もしなければいけません。
「お尻よく洗ってくださいね」とご葬家に言われる事もあります。

心構えがあるのとないのとでは
同じ人間でも反応はこんなにも違うものなのですね。

飛び降りの話

2007-06-08 07:21:50 | Weblog
寒がりの私は春が大好きです。
過ごしやすい

ただこの仕事を通じて春に寂しさを感じるのは
・・・自殺の故人様が増える事です。
単純に五月病?とは決めることはできませんが。
亡くなられた方の心模様とご遺族の気持ちを考えると辛くなります。
先日3日続けて“飛び降り自殺”の方に会ってしまいました。



1日目湯灌
若い女性の方
育児ノイローゼだったのかもしれません。
生後7ヶ月の赤ちゃんがいました。
「子供に今の顔を見せたくない。傷を消せないなら隠したままで良いです」
とのご主人の希望
大きな傷ではなかったのでメイクで隠す事ができました。
「これなら大丈夫だ」とご主人は少し安堵された様子でした。


2日目メイク納棺
ご年配の男性の方
病気を苦にして、目を放した隙に入院中の病院の高層階から飛び降り。
柔らかいところに落ちたのか?損傷の具合は酷くなく
もちろんすぐに救命措置はしたけれども…

家族は元気になってもらいたかった。
でも
故人様本人の長期入院という事実に『楽になりたい』という思い

ご家族は亡くなられた故人様に対して悲しむというより深い
何が正解なのか?という“複雑な思い”を抱かれていたようです。



3日目
びっっくりしました。
湯灌業務に向かう途中の高速道路
『反対車線が通行止めされているなぁ~』
規制を掛けている先頭には道路公団の人
(よく黄色い車で落下物拾ったり事故処理する人)
そのもうチョット先には作業着を着た“飛び降りた人”

えっ!?
「飛び降りてるっ!!」
どうやら高速道路の上にまたがる歩道橋というのでしょうか?
高さで言うと電信柱くらいのそこから高速道路に向かって飛び降りたらしいのです。
お亡くなりかどうかはわかりませんが
車にも轢かれず、普通にお顔も見えましたが傷もないようでした。

うーん。…とても辛かったのでしょうね。
ただ高速道路は前後左右と時には頭上注意であることと
3日連続飛び降りの方に遭遇するのはこの仕事ならではなのね、と
感慨深く思いました。


生まれ変わりの話

2007-06-05 14:18:05 | Weblog
お天気の良い日のお仕事が最近つらい礼子です。
お仕事はもちろんお天気の方がいいのですが・・・“日焼け”が気になるのです。
もうすでに手の甲は黒くなりつつあります。
夏が大好きだった10代の頃の私は無邪気だった…と思うのは
年頃なのでしょうか?老化なのでしょうか?

たしかにこのお仕事は涼しい気候の方が良いに越した事はありません。
お体を守る“ドライアイス”も早く解けてしまいます。
そして“特殊清掃”でおなじみの虫もたくさん出てくるからです。



メイク納棺に伺ったとき、準備中に故人様に忍び寄る影・・・大きなハエでした。
清掃班でない限り殺虫剤なんか持ち合わせていません。
そしてヤツの狙いは・・・故人様。
故人様に止まりたがるのです。
含み綿をしても、お顔をきれいに拭いても「ブーーン」って飛んでます。

古くからの言い伝えとのことですが

「お葬儀の場で現れる虫は“故人様の生まれ変わり”」

という説があるそうです。
生まれ変わりで故人様の魂が飛んで歩いているのだとしたら
絶対やっつけるわけにはいきません。
『 やだなあ~困ったな~ 』と思いつつ
故人様のお顔にハエが止まらないようハンカチをかけてご葬家をお待ちしていました。



しばらくしてご葬家・ご親族の皆さんが到着。
「この度は誠にご愁傷様でございます。これよりご納棺式執り行わせて頂きます」と
先輩のご挨拶。
私が故人様のお顔のハンカチを取ると“ホクロ”と思しき黒い点。
『アレ?ホクロあったっけ?』と思ったとたん「ブーーン」ってヤツは飛び立ちました。

「あら、ヤダ!ハエ?」とご葬家様
私のせいじゃない筈だけど申し訳なくて、一気に冷え汗。
とりあえず何事もない顔で先輩は儀式を進め始めたので
私も何事もない顔でお化粧の対応。
途中、「ブーン ブーン」って奇襲しようとしてきましたが
優しく“はら~ふわぁ~”とした手つきで払わなければいけないそうです。
なぜなら“生まれ変わりかもしれないから”


古い風習も言い伝えも、因習にこだわる人もだんだん少なくなってきているらしいのですが
それでも信じている方もいるかもしれない。
『でも、明らかに虫は虫じゃ…』と思う私は日焼けによる老化は気になるけど
古い因習は気にならない“微妙な年頃”のようです。






遺体処置・エンゼルケア・湯灌サービス
ヒューマンケアでは、最期まで故人の尊厳を守るために死顔を整え、ご本人にもご家族にも、人生の最期にふさわしい最高の「グッドフェイス」でお送りいたします。


一膳飯の話

2007-06-02 16:05:08 | Weblog
6ヶ月ぶり、久しぶりのブログ更新です。
ご拝読いただいていた皆様、長いお休みをしてしまいまして申し訳ありませんでした。
今日から茜さんに代わりまして不定期かもしれませんが頑張ります。
エンゼルケア事業部所属の「礼子」と申します。宜しくお願いします。

最近は少しずつですが、難しいお仕事などを行かせてもらえるようになり
嬉しい気持ち反面、緊張の連続でもあります。
そんな緊張の糸が“プッツリ”切れる時がありました。



湯灌で伺ったご葬家
故人様はお父様、お母様と息子さんが施主さんと喪主さんでした。
湯灌の準備中、お葬儀屋さんがお二人と打ち合わせをされてました。

「だからーちがうってー!」 突然大きな声で息子さんが叫ぶ声
「あっ、ここはですね~;」 とお葬儀屋さんが慌ててフォローするような話し声

どうやら“マイペース?”お母様に向かって息子さんはつい声を荒げてしまいたくなる様子。
今日の湯灌は先輩から“司会進行役”(湯灌のご案内)を任されていたので
『うわ…どうしよう…。』と先輩に救いの眼差しを投げかけましたが
返ってきたのは“大丈夫よ!頑張って!”という無言の微笑だけでした。



緊張しながら湯灌のご案内をはじめさせて頂くと
お母様も息子さんもだんだんキレイになっていく故人様を見て
「あ~ぁ、気持ちよさそう」
「安心して眠っているみたい」などのお声をお二人から頂くことができ
やっと緊張の糸がほぐれた感じがしました。

ご納棺・ご焼香も終わり後は退室のご挨拶をさせて頂こうとご葬家の後ろでお待ちしてたら
葬儀屋さんに奥様が質問し始めました。

「あのー祭壇に上げるご飯は炊き立てのほうが良いんですか?」
故人様に備える“一膳飯”のこと
*故人様のご飯茶碗にてんこ盛りのご飯と端を立ててお供えする“アレ”
 お葬儀まで日取りがある場合は毎日ご飯を取り替えして、お供えした一膳飯は日数分全てお棺に納めるのは普通です。
 まさに一日一膳なのです。

『ん?』と一瞬止まった後に葬儀屋さんが
「いえ、炊き立てじゃなくても良いですよ」と笑顔でご返答
「そういえは、昨日のご飯どうしたの?」 と息子さんがお母様に聞かれた。

「冷凍したよ。ラップに包んで」

「・・・・。」その場の全員が一瞬固まった

「あれは、故人様のご飯ですので…」と葬儀屋さん苦笑い

「あら~後でオジヤにでもして食べるのかと思った」とお母様


和やかなムードは一変、全員大笑い。
さすがにこれにはピリピリしていた息子さんも
「そんな訳ないじゃん」と大笑い。
私は…肩がプルプル震えましたがなんとか我慢しました。
(でもかなり、苦しかったです)
お葬儀の悲しい場面でも笑いが沸き起こる場面があります。
業務終了後、先輩に
「近い身内の方なら良いのでしょうが、私が笑うのは不謹慎ですよね?」と聞くと

「自然にしていれば良いのよ」との事。
“自然”って難しいです。
楽しいアクシデントもお葬儀では意外に起こるものです。




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