遺体屋の仕事

日常生活では見ることも聞くこともない「遺体屋の仕事」とは・・・

所要時間の話

2007-11-26 15:39:28 | Weblog
いつもちょっと“無理気味”の内容で仕事の依頼をしてくる葬儀屋さんがいます。
「今日は30分で湯灌から納棺まで全て終わらせて!」とのご依頼。
湯灌は通常15分ほどかけているので、その前後の末期のお水や旅したく
納棺の時間も考えると本当に“大急ぎ!”な業務になります。

担当者さんいわく「喪主さんが体が悪い人なので30分しかじっとしていられないから」
ウルトラマンのような喪主様。
でも通夜・葬儀自体30分以上じっとしていなければいけない場面は沢山あるのに
湯灌だけ時間限定なことに大きな(?_?;)
全ての工程をきちんと行うと時間を“まく”事も出来ず、逆に慌しくなるため
要所要所で何かの工程を省かなければいけません。
ご葬家は一緒にあせってくれる訳ではないのですから・・・。

とても悲しみ深いご葬家で喪主様(兄)と故人様の娘さんは呆然とした様子でした。
他のご親族の方も故人様のお顔を見て目頭を押さえています。
「故人様のシャンプーを代表でどなた様かお手伝いお願いします」
お一人様に限定したかったのですが皆さん出てくる・・・。
「最後のお顔拭きお願いします」
これも皆出てくる・・・。
司会役の私は手元の時計をにらみつつ『悲しみ深いから・・・でも…時間が』と
グルグル頭で段取りの計算をします。
何かをお手伝いするため、その都度ご移動いただく喪主様はこれといって“辛そう”には見えないのですが・・・。
あっという間に湯灌も終わらせ進行しているこちらもアレヨアレヨという間に納棺になり終了。
28分の業務でした。

帰りの車中で新人研修中の子に
「巻き業務って初めてだよね?こんな感じなのでおぼえておいてね」というと
新人さん「はい~。なんか、なんだかなぁって感じですね~」
はい、おっしゃる通りです。ご葬家からの反応に“手ごたえ”なぞありません。
同じ事をゆったりと大らかな気持ちで行うのと
バッバッと手早く行うのでは丁寧さどころか雑に見られ兼ねません。
「ま~そんな時もあるから」とは新人さんには伝えましたが
言われた事をその通りにしているとは言え、こんな時はちょっと後ろめたい気持ちが残るものです。








遺体処置・エンゼルケア・湯灌サービス
ヒューマンケアでは、最期まで故人の尊厳を守るために死顔を整え、ご本人にもご家族にも、人生の最期にふさわしい最高の「グッドフェイス」でお送りいたします。

身をもって感じる話

2007-11-23 07:20:27 | Weblog
時折、葬儀社からの依頼で「湯灌のデモンストレーションをお願いします」とのお話をいただきます。
秋や春などに葬儀社で“○○葬儀社葬祭展”なるイベントを開催することがあり
その中の催し物のひとつとして模擬湯灌を行うのです。
もちろん本物のご遺体を使うことはできないので誰かが“ご遺体役”をしなければいけないのですがその大役は男性社員にしてもらいます。


ある日のデモでご遺体役の男性社員が遅刻をしてきました。
待てど暮らせどやってこないので上司がシビレを切らし、致し方なく入社3日目の右も左もわからないど新人の男性社員に急遽ご遺体役を任命!
彼は海パンを用意していないので自前のパンツそのままでお願いしました。
「やさしくするから(!?)寝てるだけでいいから大丈夫よ!」と安心?させるつもりで言ったのですがやはり緊張したらしくなかなかの硬直っぷりで良いご遺体役をはたしてくれました。


デモをやって思うのは“生きている人の軽さ”です。
ご遺体と生きている人では同じ重さであっても亡くなった人のほうがずっと重たく感じます。
「ご遺体の冷たさ」は日常のこの仕事でもうなれっこなのですが「重さ」というものにはハッとさせられるものです。


納棺のデモというのもあります。
その時のご遺体役は私がさせてもらいました。
お棺はだいたい6尺(約1m80)くらいの平均的なお棺です。
いつもは納棺する側で入る機会はなかなかないのですが、その感想としては・・・
ワタシは「熱い」でした。
一応!中肉中背で太ってはいない(ハズ)ですが割りと体にフィットした気分になり
顔周りを綿花で飾りつけされ、それがなんとも圧迫感というか?綿が痒くて熱いとボーっとしてくるいうか…。
『痒いなぁ~』なんて思いつつも『ワタシはご遺体。静かに死んでるの』と
役目に徹底していた姿があまりにもうまくできていたのか?
「なんだこの故人様は穏やかな顔してるなぁ~寝てるんじゃないの?」という葬儀屋さんのチャチャが入りあせった上司が「礼子さん?」と一声
暑くてボーっとし、音もボワン~と聞こえて返事できなかった私に上司はあせり
「礼子さん!!起きてる?!」とちょっと引きつらせてしまいました(ゴメンナサイ)


最近入社した新人さん、大変好奇心旺盛で彼女は自ら「お棺に入ってみたいです!」と、たっての希望で体験納棺したそうです。
彼女いわく「なかなか寝心地良かったです。ワタシは○○棺がいいです」と言っておりました。
お棺も湯灌の体験もこの仕事をしていないと“お試し”はできないので故人様は自分の好みは考慮されません。
生前予約じゃないですけどこだわりのある方は生きているうちに希望を伝えておいたほうが良いのかも?しれませんね。






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駆け抜ける話

2007-11-21 07:04:13 | Weblog
一日に何件もお仕事を抱えると、次のお仕事の予定時刻に間に合うためにも
規定の予定時間内に終わらせたく少しでも潤滑な動きをしたいものです。
焦っていてもご葬家に喜んでいただくために一生懸命努めさせていただきますが…
思わぬ障害がおこることもあります。

ご葬家はマンションの高層階。
ご自宅の浴槽にお湯をためて頂きポンプで給排水するやり方になりました。
いつもより準備物が多く大変な状況。
そんな時にかぎって故人様が困難な状態。
ご病気の為でしょう。
片方の目とその周辺の頬のお肉がエグレる様に欠損しており顔も引きツレていました。
知らない人が見ると「ドキっ」とするような大きなガーゼで手当てされていました。

白いガーゼと大きくはみ出して張ってある絆創膏が痛々しい。
処置係りの後輩がベーシュの目立ちにくい絆創膏に取り替えてご処置。
私はその間の湯灌の準備のため「お風呂からお湯ひかせて頂けますか?」と言うと
ご葬家「あら!すみませんまだお湯溜めていません」
ガーン担当者の話では準備できてるって言ってたのに…(><゜)゜。
「20分くらいで溜まりますから!」とご葬家もあわててくれて
遅ればせながらも湯灌スタート。
娘さんも泣きながら長い時間、故人様のシャンプーをお手伝い。
「シャンプーできた良かったです」ととても喜んでくれました。
『よかったな~』と思いつつ故人様につけたベージュの絆創膏も中のガーゼも半分ズブ濡れ(TT)
「お着せ替え後おとりかえ致しますね」と処置係りの後輩にまかせ
一人湯灌浴槽の片付けにかかりました。

最近の高層階の建物にあるエレベーターの中には鍵のついている“扉”があり
開くと押入れのように奥行きが広がります。
湯灌と納棺で伺う事を管理人さんも知っていて
オートロックのドアとエレベーター内の扉を開放してくれ、とても助かりました。
一人浴槽1Fに降りていくと管理人さんがいました。
「大変ですね、ところでですね私明日休みなんですけど棺はいつ入れるんですか?」
「今からです、お棺運びましたらエレベーターの扉はもう閉めていただいて大丈夫です」
「私、明日休みなんですけどいつ斎場に?」
「ではご自宅出発の日程のご連絡しますね」
「あ~明日ならどうしようかな~
 でもエレベーター空いてないと~
 でもちゃんと斎場に連れて行ってあげたいしね~~~~~~~」としばらく続く話。
だーかーらー(TДT)連絡しますって言ってるのにぃ~しばらく話し続ける管理人さん。
もう本当に時間がないのでちょっと振り切る感じでその場を離れお部屋に戻りました。

お部屋に戻ると処置係りが「故人様やっぱりガーゼにして下さいとのことです」
目立たないように気を配ったつもりがご葬家に伝わらずガッカリ。
お風呂を溜めるのと管理人さんで足止めを受け、もう時間がない!
そして更に再処置(><|||)・・・。そしてトドメに
「ガーゼに止める絆創膏どこかしら?あれがいいわよね、買いに行く?」
『キャー(><)無理ですぅー時間ないんですー↓』
なんて多分後輩も同時に同じ思いを抱いた直後
そこへ使いつけの絆創膏を持ち出した喪主様↑
ホッとしたのもつかの間、喪主様の腕時計が目に入り
『っ!!終了予定時刻過ぎてる!!!』と更に青くなりました。↓
ガーゼに絆創膏を貼るだけでしたので、最終手段でご葬家にお願いし
車まで棺を取りに戻るとまた管理人さん登場
「さっきの話だけど葬儀屋さんと連絡取れたよー」とほっとした顔でやって来て
エレベーターの扉がなんとかなる話をされました。
ゆっくりお話している場合ではないので申し訳ないですがサラっ→と逃げてきました。

ご納棺は大変な駆け足で終わり、お嬢さんに見送られながらバタバタと出て行こうとしている奥で
喪主様が「寸志は?用意してないの?」なんて会話が聞こえましたがそれどころじゃない私たちは
ものすごい勢いでその場を後にさせていただきました。










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納棺師は見た!の話

2007-11-18 07:50:26 | Weblog
“ひやり”とする出来事がありました。
納棺業務に伺って葬儀屋さんが来るのを待っていました。
お寺の控え室(小屋) 兼 霊安室での納棺。
その小屋の前で待っていたのですが静まり返っていたので
ご家族は着ていないものと思っていたら
喪主のおばあちゃんと娘さんはいらしていて休憩を取っていました。
おばあちゃんは亡くなったおじいちゃんの事で心労がたまったのか
故人様と平行に布団を引いて横になっていました。
いらした葬儀屋さんが私の先に立ち、納棺の準備をさせてもらうため
おばあちゃんに少し移動してもらえる様お話。
「すいません、疲れていたもので今どけます」と娘さんは布団を上げだして
おばあちゃんもフラフラ~~と辛そうに立ち上がりました。
『なんか具合悪そうだな~布団ずらして寝ててもいいけど…』と
フラフラしているおばあちゃんを見ていると

「ぁ…ぁ めまいする」

全員が あっ!! と思ったときにはもう遅く
立ち上がってすぐ畳でスベリ背中から倒れて
頭をドンッ!と強打
「大丈夫っ!!」と娘さんの一声と共におそらく全員頭によぎったのは
『最悪の状況だったらどうしよう~(><|||)』だったと思います。
おばあちゃんはTVのゲームコントで失敗したお笑い芸人のリアクションのように
仰向けになったまま後頭部を押さえ
「うーーー」と左右に体を揺らして苦しんでいました。
やっぱり布団で横になりましょうと準備中寝ていてもらうことに。

それから他の身内の方もいらして事情をきいて心配した息子さんが
「お水か何か飲む?」と優しく聞いたのですが
「ぁーーぁ♯何にもいらない」
「え?」
「(><♯)!!欲しくない!!!」
逆切れするお年寄りというのを私は初めて見た気がしました。
その後の納棺式でも「動きたくない」と言うことでおばあちゃんはお部屋の端から眺めていました。

お年寄りになるとよく転んだり骨折したりとケガをして
それが原因で寝込むことがあるとは聞きます。
転んだ瞬間を見て『原因はこういうことかー』と納得しました。
具合の悪そうなお年よりに付随する危険と足がおぼつかなくなる事は「=」なのでしょうか?
ご家族にお年寄りがいる方はご注意ください。
天国のおじいちゃんもきっと心配してましたよ。
おばあちゃん。お大事にされてください。







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本職者メディアを考えるの話

2007-11-04 15:36:33 | Weblog
TV業界はネタ切れなのでしょうか?
室内清掃・湯灌・エンバーミング
今まで知る人ぞ知るとされていたこの職業が情報番組での紹介やドラマ化・映画化されてきていています。
一応チェックはしています。
現職として見た者の感想としては・・・『伝え切れてないなぁ』というのが
正直なところです。

室内清掃の部屋はいろんな異臭にハエたちが集まり室内に渦巻いています。
ドアを開けたら一斉に“黒い大群”たちが「ガーー」という大音量の羽音とともに
こちらに向かって飛んでくることや
油汚れ・埃・生活の汚れとともに流れ出た体液と絡み合い
独特の雰囲気の部屋などもあります。
また、亡くなった人は生きている人と比べると
どんなに綺麗な亡くなり方をされていても“生気がない”のを
感じずにはいられません。
生活・生命を感じられないのがリアルだったりしますので
新しい切り口で始まったドラマで見ると
「ゴミでも新品ばっかだな」「生きてるな」と思います。
死を表現するということは難しいことなのだなとも思いました。
ですが良く考える以前から“ご遺体関係”のドラマは結構あって
“赤い霊柩車”シリーズとか“法医学教室”シリーズとか
大女優さんたちが奥様を2時間ドキドキさせてくれるドラマは沢山ありましたね。
「ワー!」とか言いながら崖から落ちていく“人形”がそれはそれでアリで
微笑ましかったりして・・・。

エンバーミングのドラマの原作の漫画本は
『この仕事をする上での心構え』として気持ちを改めて律することができる
良い漫画だと思い購読していました。
来春には“湯灌師”をテーマにしたコメディタッチ(え?)の映画が本木雅弘さん広末涼子さん主演で公開されるそうです。
命の尊さをドラマで伝えるのは、すごく難しいんじゃないかな~と感じるのは
メディア素人の独り言として聞き流していただきたいのですが
原作が好きだったり、現職者であったりするので
ブツクサ言いながらも逆に一番期待しているのは私たちなのかもしれませんね。
どんな仕事であっても
表に出ない色んなこと・色んな思いの積み重ねで
時に困惑したりピキッ♯ときたり、胸が張り裂けるような辛い思いをする日もあります。
「こんな辛いなんて…こんなハズじゃなかった」
仕事にまつわる出来事・人間関係・¥などでも迷うことは多々あります。
それでも「やりがいがあるから頑張れる。」

仕事ってそういうものじゃないかなぁと思います。
もし!もっくんの映画を見て
「湯灌屋さんになりたい!」なんて人が現れたら?
「色んな意味でやりがいありますよ」とお伝えしておきます。

また余談ですが
むかーし【EM/エンバーミング
という高島礼子さん主演の映画があったので
仕事柄興味がわき、参考がてら観に行こうと
映画好きの青年を誘いました。。。。もちろんフラれました。
高島礼子さんもこの作品のことは、多分「忘れたい」と思っていることと察します。
もっくんガンバレ!








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