納棺業務に行ってきました。
お金持ちのご葬家です。
私が感じるお金持ちのとある共通点は“いきおい”があることです。
こちらのご葬家も通ずるものがありまして
納棺準備をしている間のご葬家と担当者の方で打ち合わせはまるで喧嘩腰。
ですが、お顔を見ると別に起こっている様子でもなくにこやか。
『なんだかパワフル』と感じました。
その中に故人様の連れ合いであろうかなりご高齢であろうおばあちゃんも
打ち合わせに加わり、しっかりとご意見を述べているように感じました。
その時は。
いざ準備が整い皆さんにご案内すると
「じゃあ○○さん(おばあちゃんの名前)行くよ!」と
喪主さんがおばあちゃんを車椅子に乗り移させるべく支えようとしています。
『元気そうだけどお体弱いんだ』と観察。
車椅子に乗り移るほどのアクションでさえ、心理的にショックなようで
真っ赤な顔で今にも泣き出しそうです。
介護も介護されるご高齢の方の心理というものも疎い私ですが
『ちょっと赤ちゃんに戻るものなのかしら』と眺めておりました。
泣きそうなおばあちゃんに全く動じない喪主様は「なぁに大丈夫!」とカラッと答え
抱きかかえる際のご自身の腰の使い方もギックリ腰にならないよう動き
「なれている」という事が良く分かりました。
車椅子でおばあちゃんは故人様の一番側にならび納棺式開始。
まず皆様に末期のお水からお取り頂きます。
でも布団に寝ている故人様に体の自由の利かないおばあちゃんが
末期のお水ができるわけもなく「ううぅぅう(TへT)」と今にも泣き出しそうです。
喪主さんもご家族も「大丈夫!いま筆持たせたものでやったから!○○さん末期つけたよ!!」と
明るくフォロー、コロッと納得するおばあちゃん。
末期終了後、おひげ剃りとお化粧に移ります。
しばらくはご葬家には見ていてもらうだけなので
喪主様たちはまたリビングで打ち合わせを始めてしまいました。
少ししてお化粧を眺めるおばあちゃんが一言言いました。
「この人だあれ?」
あら!おばあちゃん結構痴呆だったんだ。と初めて理解できました。
「○○さんの旦那さんですよ」
「なんで死んじゃったの?」
「肺炎になったのよ」
「幾つだったの?」
「91歳ですよ」
「あーそーなのー」
・・・・・・・・・。
「この人だあれ?」
「○○さんの旦那さんですよ」
「なんで死んじゃったの?」
「肺炎になったのよ」
「幾つだったの?」
「91歳ですよ」
「あーそーなのー」
・・・・・・・・・。
「この人だあれ」
・・・・・・・・・。
10回くらい続いたように思われます。
でも全然面倒くさがらず、喪主様の奥さんはきちんと答えます。
それから時折「あぁ綺麗になってーありがとうございますぅ。」と
何回も繰り返しお礼を言われ続けました。
少しこちらでの作業が静かになった時、相変わらずリビングから
喪主様たちの打ち合わせの声がにぎやかに聞こえます。
それがお気に召さなかったのか
「こちらは静かにやっているのに、うるさい♯」
おばあちゃんの声は届かず、にぎやかなのは続きます。
「うるさい!うるさい!うるさいぃいいい!!!」と叫ぶおばあちゃん。
ご本人としてはご立腹だったのでしょうが、なんとも純粋な感じがして可愛らしく思い
不謹慎ですがちょっと笑ってしまいました。
その後の旅仕度もおばあちゃんは当然車椅子から届かないので
また悔しい思いをし「ううぅぅう(TへT)」と泣き出しそう。
『ア!泣いちゃう!』と思い「ではお数珠つけて差し上げてください」と
故人様に頑張って(?)もらって硬直した腕をぐいぃんと引き伸ばしながら
故人様の手をおばあちゃんに近づけお数珠をつけてもらいました。
満足そうでした。
旅仕度が終わると納棺になりますがもうおばあちゃんにお手伝いは難しいのでリビングの方へご移動。
おばあちゃんは何事もなかったかのように静かになりました。
そんなおばあちゃんの事は“まったくさて置き”という感じの喪主様は
ご納棺の品を見て思い出された故人様のエピソードをずーっと私に面白おかしく話し続けます。
あんまりオカシクくてちょっと声出して笑ってしまいました。
ちなみに納棺式が進まない状態に葬儀屋さんは苦笑いでしたけど・・・。
とある調査で“ポジティブシンキング”な書籍の著者は揃って短命。とありました。
「著者である自分が暗くてどうする」というストレスがあるのでしょうか?
無理な前向きは寿命を縮めるようです。
こちらは普通に考えるとおじいちゃんが亡くなり(91歳)
おばあちゃん(かなり高齢)は介護される状態で大変な状況。
でも長生き!そして無理矢理前向きでもなく、悲壮感もなく天然に明るいご葬家。
一概には言えませんがお金持ちだから明るいのか?明るいからお金持ちになれるのか?
幸福をグッとつかんで離さない力強さを感じたのでした。
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