
フランソワーズ・サガン/著 朝吹登水子/訳
『ブラームスはお好き』
新潮文庫 1961年
美貌の夫と安楽な生活を捨て、人生に何かを求めようとした三十九歳のポール。孤独から逃れようとする男女の複雑な心模様を描く。
新潮文庫web
<例会レポート>
今月の例会は節電いろいろ自粛の影響を今頃かぶって、
いつもと違う場所での開催となりました。
いつもの教室風とはひと味違う、照明の色も暖かい茶房はサガンにぴったり?!
39歳バツいちのインテリアデザイナーポール、同年代の恋人ロジェ、
25歳のイケメン弁護士(ただし仕事が嫌い)シモンの恋愛模様が描かれます。
簡単に言っちゃえば、束縛し合わない代わりに
孤独感が募るロジェとの関係に疲れたポールは、
熱心にアプローチしてくるシモンに心が揺れますが、
「オバーサンなの」という衝撃のセリフ(だって39歳よ、ポール)を残し…
というお話です。
まず、同じ作者の「悲しみよこんにちは」の既読率の高さに驚きました。
1976年から1997年まで「新潮文庫の100冊」にエントリーしていたせいでしょうか。
会員の皆さんの青春時代の必読書だったようです。
そして、「悲しみよ〜」で、さらにサガンに突っ込んで行くタイプと、
あ、もう一生サガンはいいわ、と思うタイプに分かれますが、
どちらも今回の「ブラームス〜」で久しぶりにサガンを手に取ったというのが共通点。
やはり過去の作家なのでしょうか。
面白かった派の意見としては、
・小娘のときにはわからなかったことが今回わかりまくり、
年齢を重ねるだけでわかるようになることがあると思った
・50年前の小説が古びていないことがすごいし、
20代前半で中年心理を書いたのもすごい
・シモンになって、歳上の女性にいろいろ教わりたい など
面白くなかった派は
・テレビドラマみたいな安っぽい設定
・登場人物の誰にも感情移入できない
・訳文がごつごつしていて読みにくい など
講師からは
「この歳(60代)になってあらためて読めてよかった。
この本が出たのはサルトルやボーヴォワールが人気だった時代。
サガンは時代の主役ではなかったし、
物語性のない小曲と批判され、本人も傷ついたようだった。
しかし、今読むと、サガンの感性、人生観がちりばめられ、
50年代という時代もきちんと伝えているいい小説だと思った。
スピード狂で薬物中毒でギャンブルにのめり込むというサガンの内面の危うさが、
ポールの中に見え隠れしている」というお話がありました。
推薦人は訳者の朝吹登水子さんに興味がありました。
芥川賞作家朝吹真理子さんの大叔母さまにあたります。
時代は違いますが、白州正子、須賀敦子、オノヨーコなど、
「いいとこの嬢ちゃんで若くして欧米に留学し、
“ほんもの”を知っているいい女として女性の憧れ的存在」という箱に、
私が勝手に分類している人です。
今回、朝吹さんの訳文はあまり評判良くありませんでしたが、
中学高校時代にサガンを読めたのは、朝吹さんのおかげだから、
それには感謝しなくちゃね、と思いました。
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