
『ゴリラ裁判の日』須藤古都離
カメルーンで生まれたニシローランドゴリラ、名前はローズ。メス、というよりも女性といった方がいいだろう。ローズは人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解し「会話」もできる。彼女は運命に導かれ、アメリカの動物園で暮らすようになる。そこで出会ったゴリラと愛を育み、夫婦の関係となった。だが ―― 。その夫ゴリラが、人間の子どもを助けるためにという理由で、銃で殺されてしまう。どうしても許せない。 ローズは、夫のために、自分のために、人間に対して、裁判で闘いを挑む! 正義とは何か? 人間とは何か? アメリカで激しい議論をまきお こした「ハランベ事件」をモチーフとして生み出された感動巨編。(講談社サイトより)
【例会レポート】
満場一致のメフィスト賞受賞作。文庫化されたので、推薦してみました。
出席者 11名
・読みやすい
・ジャングルの自然描写が瑞々しく、とても美しかった
・ストーリー展開が面白く、一気に読めた
・人間にとって害のある(都合の悪い)存在は悪なのか?など、無意識のうちに行われているであろう差別意識について考えさせらせた
・面白かったものの、SF、リーガル、ロマンスなどの要素があり、感想を述べるのは難しい
・ローズが良い子すぎる。
ただし、そんな彼女が好きだという方もあり
・キャラクターをもっと掘下げても良かったのではないか? 例えば、陪審員の一人であるゴリゴリのキリスト教原理主義のピーターが、ローズの一言であっさり考えを変えたりするので、そういった心情の変化も描いてほしかった
・とても読みやすい。わかりやすすぎるというのはこの作品が、主にラノベなどに親しんでいるような世代に向けて書かれているのではないかとも思える。言いたいことを、キャラクターに直接言わせてしまうあた りに物足りなさを感じたが、「時代に合わせる」という読み方を考える良いきっかけになった
【講師のお話】
・これが「メフィスト賞」であり、「デビュー作」であるということ。
特に「デビュー作」ということに着目すべき。
越えなければならない壁があり、目立つものを書く必要があった。
何年かあたためていた内容で、また「書く」ことを繰り返していないと困難だったはずである。
・設定を調べながら、出てきたものを繋ぎ合わせて書いているから、相当とっちらかった作品ではある。
・小説は、最初と最後がもっとも大事。この着地点しか考えられなかっただろう。とても上手い小説である。
また、ジャンル分けをしたがるのは、本をよく読む人にありがちで、何故かというと「分けないとモヤモヤする」からだそう。
本と距離をおくのも大切、との言になるほど!と思いました。
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