
既存会員の方もたくさんいらっしゃった上、今回は見学者の方も参加ということで、いつになく大所帯な感じの例会となりました。
この本を課題本に推薦した私自身この本の作者を知ったのは、去年の秋、函館に旅して、函館文学館での展示を見たからです。今回の読書会でも、この佐藤泰志という作家を初めて知ったという方々がほとんどでした。映画化を機に絶版となっていた本が文庫本として出版され手に入りやすくなったため、課題本に推薦しました。
全体的には好評。ただし、各短編の出来不出来にバラつきがという意見や、もっと楽しい本が読みたい!という意見もありました。
★『まだ若い廃墟』の印象がとても強い。悲劇の印象がそこはかとなく残ったまま読んで全体が少し悲しく感じた。
★いい短編集を読んだという感じ。文章が静謐。冬を描くに適した文章ではないか。
★先に映画を観たが、小説もよい。静かで、淡々としていて、どこか苦みを感じるけれど、読みおわっても嫌な感じはしない。
★明るい話ではないけれど、どのエピソードの中にもぼんやりとした光があるので、後味はよい。初めは寒かったけれど、だんだん温かさを感じた。
★出だしのフレーズから引き込まれた。集中力のない私が集中して読めた。
★1章目は繋がりが感じられたが、2章目はバラバラの短編に思えた。「ここはとりのこされた街」という感じは、現在の日本の街はどこでも感じているのでは?首都さえも・・・
★短いけれど、奥行きを感じ、全部読むと街と人が浮かび上がってくる。抑制が利いていて感傷的なものを排除した文体がよい。
★静かながら、いろいろな思いが伝わる無駄のない文体がよい。
★90年代の小説にしては古く感じる。ある意味正統派。あたらしい文体の小説が出現していた90年代の他の作家の作品に比べるとオーソドックスに感じる。
★バブルの時代にこんな小説があったんだ。今、読んでも古さは感じない。ビール3~5本飲める人が出てきたが、すごい!と思った。
★映画のほうがより暗い感じだと思った。『海炭市叙景』という題名がいい。
『まだ若い廃墟』がいい。
★悪くはないけど、私にとっては微妙。そこはかとなく暗い。ただ、『週末』のような市電の明るい風景の話は読んでいて気持ちがよかった。
★存在感がある。この後どうなるんだろうという話が多いが、普通の日常もこんなものなのでは。
★20年前の時代にこのような暗さでは、今の時代をこの作者が書いたら、どれほど暗くなってしまうのだろう。
★読みやすかった。いやな予感がする割にはそれほど悪いことが起きず、誰にでもあるようなことに思える。世の中に不満があっても折り合いをつけて生きていく日常が描かれている。
★課題本にならなかったら、読まなかった本。だって暗そうだから。かなしさはあるが、どうしようもない暗さはない。きれいな文章ですっと読めた。
★『叙景』ということで、スケッチの積み重ねのよう。絵画的な感じがした。
★文体うまい。暗いが重くない。淡々と書いても心にうったえるものがある。映画も地元の人々の愛を感じるので、お薦め。
★踏み込みすぎない作者と登場人物の距離感が好き。静かな小説。ファベーゼの小説を夏に読むのは非常に共感できる。
★外国語を翻訳したようなこういう文体が好き。わからないことを残して一話一話が終わっていく感じも好き。アノラックって何?北海道のお墓は長方形を横に寝かせた形?
★暗い本を読みたくないときに読んだので、非常にしんどかった。『猫を抱いたばあさん』はおばあさんが満たされているようだったので良かった。
★こんなにつまらない小説はない。自分が体験できないことを読みたいのに、こんなに暗くては。読みたいのはエンタテインメントであり、カタルシスがないこんな話はいやだ。
★前半のほうがよかった。淡々としていたが、人の力強さを感じた。
★一話一話が短すぎて、いろいろ物足りない。
★よかった。やりきれなさをどこか受容していく様。
★はじめは良かったが、読み終わって残らなかった。暗さの原因をあまり書かずに突きはなされる感じがちょっと嫌。
★映画はすごくよかった。普通はやっぱり原作のほうがいいなと思うが、この原作は出来不出来にバラつきがありすぎる。映画は構成がよく無理なく話ができていた。
★丁寧に書かれているが、心に響くものがなかった。
★初めの3編から心をえぐられる感じ。
★かなり平板。情景描写が多い。
★読書会でもないと読まなかった。暗そうなので。簡単な言葉で心理描写がなされている。
★つらさ、寂しさ、苦しさ、痛みを感じた。
★冬の暗さにひかれる。一章だけでも充分。女性の力強さが印象的。
★人間のものの見方の多様性を感じた。ひとつの街に舞台は固定されているが、山ひとつとっても人によって見方がちがうんだなと思った。
★小説を読む喜びを感じた。
★読みやすい。水彩画をみているよう。人を含めての街を描いている。2章のほうがユーモアがあり温かく感じた。
講師からは、「それなりにいい」という作品ではないか。中途半端な作家なのでは。若い時に賞をとってしまった作家にありがちな足りなさを感じる。
この作品に関しては細かい計算がうまくいっていないかもしれない。一編一編がバラつきがあり、作者の意図が明確になっていない。
ただ、あくまでも途中で、夏と秋がまだ書かれていない段階での評価は酷かもしれない。全体が読めなかったのは残念である。成熟してきたらもっと良くなってきたのでは。
とのことでした。
『まだ若い廃墟』という題名がとても印象的(内容もですが)難しくない言葉で、静かに、淡々と描かれた物語が私はよかったです。作品集に入っている他の作品(夏の話もあり)も好きでした。
映画のほうもなかなかうまくお話を組み合わせていて、現代の物語にしています。
役者さんたち(素人さんも何人か出演)もいい。加瀬亮さんも初めての父親役(いつものようにいい人ではない)を熱演(といっても暑苦しくはない)していました。
北海道の人は傷を手当する絆創膏を「サビオ」っていうんですね。原作ではバンドエイドって書いてあったけど。
この作品のモデルとなっている函館はいいところでした。作品にも通じる寂しさはやはり感じられたけど。また行ってみたいものです。
レポート 舞浜嵐子
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