アルミの表面処理の一つである“アルマイト処理”.
身近なところで有名なのがアルミ製のヤカンとか鍋,家のアルミサッシなど.
ピカッとしていて,それでもって透明感有る美しい表面がその処理によるものです.
アルマイト処理を行うには薬品を使ったり電気分解させたりと設備や材料など,何だか難しそうな感じだったのでこれまで個人では
無理と思って深く調べもしませんでした.
ところが有るきっかけで工作仲間の“溶接工Aさん(wakitaさん)”が既にやっておられることを知り,うちでその作業をやって
くれるということになり,先週末近所の工作仲間のkagayakiさんを交えて実際にアルマイト処理を行ってみました.
wakitaさんとkagayakiさんは初対面.
割と物静かなwakitaさんと,対してツッコミ好きなkagayakiさん.
その間で両者を取り持つのは相当なエネルギーを要すると判断したので,少し雑談をした後,我家の程良く朽ちてきた台所で
昼ご飯を食べて懇親会.
うつむいて視線を合わせなかった友和子に対してwakitaさんになじむ寅次郎.
一方kagayakiさんは
ネスカフェのバリスタに入れるコーヒーは風味を逃がさないように極力空気に触れないようなパッケージになっていて・・・
なんて話しをしたらマジマジ見ていた.
古いブラウン管テレビや30年位使っている古い黒電話を見つけ 『こんなんブログにのせなあきませんやん』 と速攻ツッコミを
入れられました.
探究心旺盛の人は観察力もすごい・・ですけど,そのツッコミは要りません.
実際のアルマイト処理ですが,全く知識がなかったのでネットでその原理と方法を調べてみました.
希硫酸などの電解液中に処理を施したいアルミ(部品)を陽極側にして電気を流すと電気分解が起きて陽極側に酸素が発生します.
これによりアルミ表面が酸化して酸化皮膜(酸化アルミニウム Al2O3)が形成されます.
この酸化膜を更に高温の水蒸気で水和処理(封孔処理)すると非常に硬質で耐久性のある膜になります.
希硫酸など入手がやや困難なためホウ酸など薬局で簡単に手に入るもので電解しようと思っても電解液が中性な場合はアルミが
溶解しないため酸化皮膜も薄くしか成長しない(ようです.これが『バリヤー型酸化皮膜』)
ということから強酸性の希硫酸がもちいられるのだと思います.
ちなみに希硫酸を用いたアルマイトを硫酸法と言うそうです.
今回電解液はwakitaさんがキットとして購入された物を持ってきて下さいましたが,開放式の自動車のバッテリー液を
希釈して使っている人が多いようです.
電圧は12V程度.電流1cm2当たり0.03mA流すという情報がありますが,真偽のほどは不明です.
今回は12Vが掛けられる電流をそのまま流しました.
アルミ部品との電気的な接続ですが,電線は普通の銅線などではなくアルミ線を使用します.
理由のほどは分りませんが銅線などは不純物となったりするからかもしれません.
(イオン化傾向から銅は希硫酸に反応しないとありますので,よくわかりません)
引用:Chembase http://www.geocities.jp/chemacid/chembase/physical/tendency.htm
アルマイトを掛けたいアルミの部品はプラス(陽極)の線と接続します.
ここで注意しなければならないこととしてアルマイト処理によって出来た皮膜は絶縁性なので,引っかける程度だとその部分にまで
アルマイトが掛かってしまい絶縁されるため途中で電流が流れなくなります.
なので割り箸などをかち込んで接触を良くしておく必要があります.(これが失敗する最たる事らしいです)
希硫酸の中にアルミ部品を放り込んで電気を流し始めると小さな泡が立ち始めます.
底に帯状に見えるのが陰極である鉛板です.
先述のとおりアルミ(陽極)側からの泡は酸素で,陰極(鉛板)から出てくる泡は水素になります.
しばらくすると反応も激しくなってきて泡で見えない位になります.
電気を流し出すと電解液の温度が上がってきます.
温度は20℃が良いとされているため温度計で時折温度を確認して必要なら冷却します.今回は凍らせたペットボトルを
放り込みました.
何故20℃でないといけないのか少し調べてみました.
酸化されたアルミは表面を棒のように真っ直ぐに成長します.
地面から無数の杭が飛び出しているようなものです.
それは緻密に飛び出していますが一本一本の間には隙間があります.
引用:日本アルミニウム協会 「アルミの基礎知識より」http://www.aluminum.or.jp/basic/index.html
液温は低い方がこの杭が太く(厚壁が厚く)なり隙間が小さく(孔数が減る)なるため著しく耐摩耗性が上がり,硬質な膜となります.
なので硬質アルマイトは0~5℃で処理を行うそうです.
ただし皮膜が灰~黒色化したり,そのあとの染色の吸着性が悪くなったり色ムラがでることから15~20℃が良いという理由みたいです.
酸化したアルミには無数の孔(図中の“細孔”)があいていて,非常に活性な状態です.
硫酸アルマイトはそのままでは透明なので意匠のために金属材料や染料などで着色します.今回wakitaさんが赤色の専用の着色剤を
持ってきてくれました.
30分ほど電解させ,希硫酸槽から取り出したアルミ部品をササッと工業用精製水(純水)で水洗し,すばやく着色槽につけ込みます.
希硫酸の希釈もこの着色剤の希釈も水道水や台所の浄水器のフィルターを通した水を使ってはダメです.
化学反応の過程で活性な状態なので不純物は極力取り込ませないようにしないとダメです.
5分ほど着色させます.
吸い込まれるようにアルミ部品が赤く染まっていきます.
私もkagayakiさんも揃って『おお~』ってうなってしまうほどドラスティックな染色でした.
そのあと沸騰したお湯に漬け込み孔の空いた所を膨らませて密封させます.(封孔処理)
発色を良くするために“酢酸ニッケル”という薬品を入れるそうですが,これもキットに入っていて臭うとスッカイ匂いが
して気持ち悪くなりました.
手短に入手出来ないかネットで調べましたがキットとして販売されているのを購入するのが早いようです.
封孔処理の時間は約15分間.
途中でメモできないのでこんな風にして画像で処理時間を残しました.
(当然,kagayakiさんからは 『それやったら6分ですやん』と,ツッコミがあったのは言うまでもありません)
『自宅でアルマイト』
その出来映えがコチラ
kagayakiさんが持ってきたアルミ部品の左が未処理.右がアルマイト処理品です.
市販品のような雰囲気になって一同『やっぱり良いねえ』
急遽用意したアングル材もアルマイト処理を行いましたが,こちらは使い古した材料でおまけに磨くなどの下地処理が出来ていないため
着色具合もムラになってしまっています.
時折カメラを向けるとおかしな反応を示すkagayakiさん
こちらも下地処理が必要なのかもしれません.
ネットで着色剤にタマネギの皮やお茶が使えるというのが割と出てきます.
実際にやっている人はあまりいないようで見たことがありません.
ネットの情報の半分は信用出来ないと思っているので,一発やってみることにしました.
先ずはタマネギの皮.
水に入れてグツグツ煮ます.
ほのかに漂う美味しそうなにおい.
さながらオニオンスープといった感じ.
色はこんな感じ.赤褐色というのでしょうか.麦茶色? 紅茶色?
電解処理を終えたアルミ部品をタマネギの皮のエキスに漬け込みます.
すると・・・
なんと金色に着色されました.
一同『う~ん,すごい.こんな色になるんや~』
時折,ニコチンが切れると行動が読めなくなるkagayakiさん.
だいぶお疲れさんのご様子.
次にお茶(緑茶)でやってみました.
パックを三袋.煮立てると,そこにはお茶の香りが・・・・
ステンレスパンに入れてこんな風に実験していると危険な薬品に見えますが,これはそのまま飲んでも無害.でもなんか
飲める物には見えないのが不思議です.
着色時間は5分です.
薄い緑色になりました.
今回のアルマイト実演講習会で処理したアルマイト品です.
なんと言ってもタマネギの皮で美しい金色になったのにはびっくり.
着色で問題になるのが色褪せ.
屋外で使用した場合,紫外線で退色してしまうのが着色アルマイトの一番の問題.
『タマネギは自然のものなので色褪せしにくい』 とか 『自然のものなので退色してしまう』 なんて,冗談まじりな話しで
盛り上がりました.
でもこの色には魅了させられます.
wakitaさんがお気に入りだった緑茶での着色.
落ち着いた色合いがいいとのこと.
夕方,kagayakiさんは納品があるというので帰られ,wakitaさんは夕ご飯をご一緒することになりました.
今回色々おせわになったのでいつもの薩摩の焼き肉.
来た当初,友和子はうつむいて目を反らしていたのに・・・.
ちょっとうれしそう・・・.
『乾杯しておいで』っていうと自分から近寄っていくようになりました.
“ハイタッチ”
アルマイトした部品のいくつかは以前製作したツールカートのハンドル部分でした.
それまでの何てこと無いアルミ部品に花が添えられたという感じがします.
wakitaさん,お世話になりました.楽しいひとときと知見が広がりました.またお越し下さい.
kagayakiさん,お疲れ様でした.お昼にと差し入れしてくれたコロッケ,むっちゃおいしかったです.
次はkagayakiさんも焼き肉ご招待します.
アルマイトは比較的入手しやすい材料で処理出来ることがわかりました.
色ムラが出たり,液温を冷やすのに凍らせたペットボトルでなくもっと安定させたりしなければならないなど,やるべき事が
少し見えてきました.
アルマイト実演講習会の会場整備のために前日は朝4時まで片付けしたので日曜日はマッタリ.
とりあえずいつものランニングだけ行ってきました.
10.6キロ 63分11秒 平均速度10.06キロ ペース5分57秒/km
【Run&Walk】2014/06/29 17:29, 10.60km, Time 63:11, 667kcal
水曜日もいつものランニング
蒸し暑くて汗だく.今日は終始しんどくて折れそうになりました.
このタイムを維持するのがつらくなってきたなんて,弱音を吐いたりしてます.
めげそうやけど、でも止めない.
10.55キロ 62分57秒 平均速度10.06キロ ペース5分57秒/km
【Run&Walk】2014/07/02 18:56, 10.55km, Time 62:57, 652kcal
長いブログにお付合い下さりありがとうございました.
追伸
またミカンを買いました.清見タンゴールです.
小さいサイズは美味しいです.
ではまた
あなたの心はそれほど美しいと言うことです.
なんだかこの記事にDIYアルマイトのアクセスが集中しそうな予感がするので、写真にモザイクお願いします^^;
僕は赤が好きでしたよ、派手な金色もよかったですけど、
使う場所に困る気が・・・ お茶は京都色ですね(笑)
玉ねぎが金色になるのは色素成分の粒のサイズの問題ってことですかね・・・
放射能とか吸着できるシステムとか作れれば大発明ですけど無理ですかね^^;
忘れ物早めに取りに行きます。すみません・・・
写真いいですか? ちゃんと写真担当に言っておきますね.このコメント読んできっと喜んでいると思います.
アルマイトで検索に引っかかるほどメジャーなサイトでないから,大丈夫ですよ.
でもどうしてもモザイク掛けろと言うならしますが,どの写真にするか教えてください.
多分,あの赤くアルマイトしたカウンターの部品が実は企業秘密なので
あれがモザイクでしょ.了解しました.
タマネギが金色になる・・・・・・
どうして“色素成分の粒”になるか,そのロジックがわかりません.次回その説明をして下さい.
(マジで顔をモザイクするなら言ってくださいね)
>アルミ部品との電気的な接続ですが,電線は普通の銅線などではなくアルミ線を使用します.
>理由のほどは分りませんが銅線などは不純物となったりするからかもしれません.
これは、
「+極側に銅を使うと、酸素が発生するかわりに銅が溶け出して硫酸銅になるから」
です。
「電気分解 銅 陽極」
とかで調べていただくと、分かると思います。
銅は溶け出して硫酸銅となって溶液?となるのでしょうか.
陽極と陰極では反応が違って陽極では酸素と銅がくっついて酸化銅となり,
陰極では電子をもらってCuとして析出するのでしょうか.
化学というのはとりわけ苦手でさっぱりです.
ブログの内容も稚拙で恥ずかしいくらいです.
間違いがあればまたご指摘ご指導宜しくお願いいたします.
こんにちは
意外ときれいに染まってDIYなら十分な気がしました。
重要なのは液温の上昇を抑えることで、上がりがちな液温を冷却出来る手段ができれば
もっと強いアルマイトができると思います。