「久しぶりの製品製作」の続きです・・・・という日記を書いて何日も経ちますが,未だ続行中です.
今回製作しているものは二枚の薄い円盤状のものをズレなく貼り合わせるための治具です.
円盤状のワークがキッチリと収まるポケットの加工が重要で旋盤で切削しています.

フッ素樹脂(PTFE)は柔らかくて切削しやすいくて良いのですが,熱膨張が非常に大きいのが厄介な所.
線膨張係数が10E-5/℃.鉄が11.8E-6/℃なので桁が一つ違うほど大きいです.
気温15℃ほどのガレージで,冷たいアルミ板に取り付けられた樹脂を旋盤切削しても,チャックを外して
翌日にはめてみるときつくてはまりません.
試しにストーブの前に置いて10℃ほど温度差を作ってやって計測したところφ200mmの外形で0.3mm違ってきます.
実使用温度でクリアランスを0.2mmを持たすためには加工時の温度で+αの切削が必要になります.
このあたりは経験値がものを言う世界.
初品からバッチリなモノができることは少なく,二三度の再作成で形になっていく場合が多く,単品モノのコストが
高く付く理由の一つでもあります.
一旦旋盤のチャックから外したモノを再び旋盤にチャッキングさせてもすんなりセンターは出ません.
ダイヤルゲージで振れを取ってやる必要があります.
取り付けネジを少し緩めてゴムハンマーで“あっち叩き,こっち叩き”して振れをとります.
切削は数十秒ほどですが,このセンター出しはその何十倍も時間が掛かります.
イィ~ってなります.

旋盤の手前のハンドルの目盛りの1目盛りが0.05φmmの切削です.
これは刃物を動かして切り込む量が直径で0.05mm削れると言うことです.
実際には半径分しか動かさないので0.025mm=25ミクロン刃物を動かしているということになります.

さらに言えば25ミクロン刃物を切り込んでも刃先ではスリップして切れなかったり,それ以上食い込んで
削り過ぎたりしていて,マクロメーターなどで測ってみると目盛り量と削れ量に差がでることに気付かされます.
職人はこれを経験で加減してしまいます.
経験の無い私は,サボらず削っては時間をおいてはまり具合をみて,またチャッキングして削ってを繰り返すしか
ありません.
プラスαで旋盤加工が終わり次はフライス加工です.
ただマキノのKVJP-55は搬入したときのまま.
準備が整ってい無い状況でしたがとりあえず使用するみることにしました.
先ずは手元だけでもきれいにしてあげます.
自動車用のワックスを掛けてあげました.
“世界の牧野”
マキノの顔である「MAKINO」のエンブレムが誇らしげに思えます.

牧野純正のデジタルスケール.
最小読み取りは5ミクロン.
実際のテーブルの移動量を直読してくれます.古いタイプですがあるのと無いのでは大違いです.
30年あまりの長年の油汚れや手垢を取ってあげました.

津田駒の油圧バイス.
台形ネジでの締め付けだけで無く油圧でも締め付けられるので,より確実,強固に固定できる優秀なバイスです.
普通のミーリングバイスよりも高価ですが,これを使っていた元の所有者はきっと工具にもこだわりがあったのでは
ないかと思います.
丁寧に使われていたのがそれを物語っている気がします.

手始めは失敗してもやり直しがく小物の加工です.

初めての切削.
操作を間違ってバイスに傷を付けないようにと必要以上に慎重になってしまいます.

長方形の形に外形を切削するのですが,ノギスで測定したときの“挟み感”がちょっと変.
直角が出ていないみたい.
搬入時に頭を90度倒して搬入したのを思い出しました.

目分量で直立させただけだったので直角が狂っていました.
当たり前な話ですが,段取りが全く出来ていないのがこういったことに現れてきます.
円筒スコヤがないのでテーブルを上下させて直角を見ます.
テーブルを上下させてもダイヤルゲージの針が全く動かなくなるまで主軸頭を調整します.

油圧バイスも底面にキーが入っているものとばかり思っていましたがキー無し.
なので単に置いただけの状態だったので見た目平行でもデタラメ.
(バイスの“平行キー”についてはコチラを参照ください)
ダイヤルゲージで振れがでなくなるまでゴムハンマー優しく叩いて微調整です.

こんな事をしながらフライス盤と戯れています.
初めてのフライス盤作業,むっちゃ楽しい!!
削るのはすごく嬉しいです.
まだ段取りや勝手が身についていませんが少しずつ馴染んでいきたいと思います.