limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

New Mr DB ⑱

2019年01月27日 09時50分08秒 | 日記
“泣き虫Cat”は、大慌てで身支度を整えていた。彼は、神田の雑居ビルの3階と4階をネグラにしていた。「N坊とF坊からの依頼となりゃ“情報”の出所は確かだ。キャッシュは有り金の殆どを持ってかなきゃならん!」彼はかなりの金額のキャッシュをトランクに詰め込んだ。「おっと、USBも忘れちゃいかんな!」USBメモリーをウェストバッグに慌てて押し込む。そこには“極秘プログラム”が仕込まれている。一定期間、相手PCに潜り込み“情報”を自身のPCへ送信した後に、自動的に消滅する彼特製のプログラムだ。「コイツを使いたくはねーが、事と次第によっては使わなきゃならねぇ。こっちも命がけで渡り合ってるんだ。儲けに見合わなけりゃ、やむを得んな!」”Cat”は、独り言を呟くと最寄り駅へ急いだ。帰宅ラッシュに揉まれながら”Cat”は八王子を目指した。

Kは、着実に“計画”を実行に移す算段を練っていた。「今はICUだが、経過が順調ならばやがて一般病棟へ移されるはずだ。警備は着くだろうが、ヤツらさえ振り切ってしまえばチャンスは必ずある!問題は“鍵”の入手だな!」「お加減は如何ですか?」看護師さんが点滴バックの交換に現われた。「私が着ていた服はどうなりましたかな?」「ああ、あれはちゃんと保管してありますよ。ご心配なく」「何時頃、ここを出られますかね?寝てばかりでは退屈で・・・」「まだ、絶対安静ですから我慢して下さい!経過が順調なら3~4日で出られますからね」看護師さんが笑顔で応じた。Kは内心ほくそ笑んだ。“鍵”が身近にある事が分かり、一層“計画”が現実味を帯びて来たからだ。看護師が居なくなると「上着を確保して警備さえ巻く事が出来れば、外への道は簡単に開ける。後は、横浜へ向かい“ロッカー”にたどり着けば、逃げ失せられる!当分は、院内の把握と警備の状況を見極める事だな!」Kは、冷静に状況を分析し始めた。脱獄計画は静かに進行し始めた。

「今日はいい日だったわ。ミスターJ、また機会があればお会いしましょう!“スナパー”中佐、今度は射撃の腕を見て貰いたいの!ご指導願えるかしら?」「腕が衰えているとは思えんが、指導はさせて貰うよ。だが、蜂の巣にはしないでくれ!」“スナイパ”は豪快に笑う。「そんな事はしません!久し振りに腕が見たいだけです。今度是非お願いします!」クレニック中佐も笑顔で返す。「近いうちにまた来る。じゃあまたな、中佐!」“スナイパー”はエンジンをスタートさせた。心地いい咆哮が響き渡る。「では、失礼しますよ。中佐、今晩は愉しかった。ありがとう!」ミスターJが礼を述べた。「お気をつけて。また、お会いしましょう!」3人が見送る中、車は基地の正面ゲートへ向かって走り出した。「あんな穏やかな紳士が“シャドー”を率いているとは、以外だったわ。でも、彼等の信念は見習わなくてはならないわね!」クレニック中佐が爽やかに言う。「中佐、どうでしたか?胸の閊えは取れました?」スタイナー少佐が聞く。「ええ!やっとスッキリしたわ。これでまた心おきなく戦える!私も負けては居られない!」「そうですね。彼らの様に胸を張って行きましょう!」オブライエン少佐も言う。「さあ、明日からまた忙しくなるわよ!」クレニック中佐は気を引き締めた。彼女の心残りは払拭された。これ以上ないくらい清らかに。「ミスターJ、中佐に何を貰いました?」“スナイパー”が聞く。「うん?小切手じゃ。Sのベンツを買い取ってくれた。500万円程潤ったぞ!」「彼女らしい対応ですな。仮はキッチリと返す。私が教えた事です。優秀な士官になりましたよ!」「そうだな。どうだ“スナイパー”、建設的ないい会談に終っただろう?」「正直、拍子抜けしましたよ。でも、これで米軍の意図はハッキリしましたね」「ああ、向うの意向は読めた。5日後にSだけが裸で放り出される。残り3名は亡命するだろう。司法取引は成立している!」「筋書き通りってヤツですな。Sを根絶すれば後腐れは無い。M女史も安心して事務所の再建に励めますな」「ここまでは予定通りだ。後は、ベンツ2台の捌きと“情報”の捌きだけだ。合わせて最低でも3000万円は手渡したい!“車屋”と“司令部”の結果次第だが、何とか手当したいものだ」ミスターJは算盤を弾く。「ベンツはそれなりに行けるでしょうが、“情報”については、相場判断が難しいですからね。幾らで行けるかは未知数ですよ!」「それは仕方が無いのは承知している。800~1000万円の当たりで落ちれば御の字だろう。1番難しい捌きだからな!」ミスターJもそれは認めた。「さて、今晩は早めに休もう。明日は“前線基地”を撤収して八王子へ合流する。いよいよ、最後の仕上げの段階だ!」「承知しました。午後には八王子へ向かいましょう」“スナイパー”の車は、みなとみらい地区へと滑り込んで行った。

“泣き虫Cat”は、宣言通りに八王子“司令部”にやって来た。「N坊、F坊久し振りだな!」玄関に迎えに出た2人に“Cat”は軽く挨拶をした。「“Cat”悪いな。夜遅くに呼び出して」N坊が気遣うと「心配はいらねぇ。早速、ブツを拝ませてくれ!」と“Cat”は要求した。「そう言うと思ったぜ。2階に準備してある。上がってくれ」とF坊が答えた。「差し支えなきゃ“情報”の出先を聞いていいかい?」“Cat”は確認をする。「AD法律事務所のSの所だ。サイバー部隊が集めたものだ」「へー、あそこか!Sが絡んでるとなると興味深いな!半年前から正体不明の集団が、組織的にハッキングをしてるってのは掴んでいたが、Sがやらせていたってのは初耳だ!となると、“情報”の確度は確かだな!」“Cat”は手荷物を置くと、端末の前に陣取った。「さて、中身を見せてくれ!」「了解、サーバーをそこの端末に繋ぐ」“シリウス”がキーボードを叩いてアクセス回路を繋いだ。「ちょっと待て!サーバーって、そんなもんどうやって分捕って来たんだ?」“Cat”が驚きの声をあげる。「M女史のご好意でね。無償で手に入れたのさ!」N坊がさりげなく言う。「相変らず恐ろしい事をやってるな!お前さん達の組織は!」“Cat”がN坊とF坊を交互に見て唸る。「さあ、早いとこ始めろよ!膨大なデーターがお待ちかねだぜ!」F坊が顎をしゃくる。「じゃあ、見せてもらいますか・・・」“Cat”は画面に見入ると、マウスを動かして中身を検分して行く。静かな時間が流れた。だが、“Cat”の顔色はどんどん青くなって行った。「コイツは・・・、想像以上だぜ・・・」 “Cat”は俄然真剣になり、画面に釘付けになって行った。「コイツを誰かに見せたか?」“Cat”は画面から眼を離さずに聞いた。「外部の人間で見たのは、弁護士以外には居ないぜ!」N坊が言うと「折り紙付きって訳か。弁護士は漏れたらマズイ“情報”は、削除してるんだな?」“Cat”は、ようやく画面から眼を放してN坊とF坊に向き直った。「ああ、その通り。それでどうだ?“Cat”?」F坊が誰何する。「俺に声を掛けてくれた事を感謝しなきゃならんな!下手な“情報屋”の手に余る凄いヤツだよ!特に裏の“情報”は、一歩間違えば命を狙われかねない代物だ。ちょっと待ってくれ!」“Cat”は持って来たトランクを開けると現金を数え出した。確認を終えると「手持ちのキャッシュで、7500万円ある!俺の有り金全部だ!これを丸ごと置いて行くから、売ってくれないか?」“Cat”は真剣な目付きで切り出した。「“Cat”!マジか?!」「有り金全部つぎ込んで大丈夫か?」N坊とF坊は腰を抜かしそうになった。だが、“Cat”は真剣そのものだった。「カネは、これから幾らでも入って来る!これだけの“情報”を前にして尻込みするようじゃ“情報屋”失格だぜ!惜しくは無いね!これだけの金鉱脈を生かせば、数年は安定して暮らせる。今、決断しなきゃ大魚を逃す事になる!決めたぜ!俺が買い取る!」N坊とF坊は顔を見合わせると、ニヤリと笑った。「“Cat”!取引成立だ!」「これから直ぐにデーターを転送してやる!」N坊とF坊は“Cat”の申し出を了承した。「“シリウス”、データーを転送する準備にかかってくれ!HDDは、渡してあるヤツだ!」「了解!15分くれ!」F坊がすかさず指示を出す。「俺もUSBは持ってるぜ!?」“Cat”が言うと「925GBの容量はあるのか?相手は化け物クラスだぜ!」N坊が切り返す。「そんなに容量があるのか?!全部見るのにどのくらいかかった?」“Cat”が聞く。「3人で分担して7時間はかかってる!後は、お前の商才次第だ!」F坊が笑いながら言う。「転送を待つ間に、他の“情報”も見ておけ!」N坊も尻を叩く。“Cat”は再び画面にかじりついた。だが、その時密かにUSBメモリーをポートに差し込んだ。プログラムを送り込んで、そ知らぬ風を装う。しかし、“Cat”の企みは“シリウス”に察知されてプロテクトされてしまう。“Cat”は気づいていない。夢中で“情報”を追っていた。「“Cat”、コーヒー飲むか?缶だけど」「すまねぇな!だけど、俺に話を持って来てくれて嬉しいぜ!持つべき者は友だな!」「何言ってんだ?!施設の方にもちゃんと顔を出せ!」N坊とF坊が軽く頭を叩く。「ああ、すまねぇ。先生達は元気かい?」「みんな、お前の事を心配してる。商売も大事だが、“ホーム”を忘れるなよ!」「チビ共が気にしてるぞ!」N坊とF坊が左右から囁く。そうこうしているうちに、転送が完了した。「N坊とF坊!終ったよ。確認してくれ!」“シリウス”が要請した。「“Cat”、HDDだ。中身を確認してくれ!その後、サーバーの中身を見てもらう」「分かったぜ!ほう、ほぼ一杯だな。データーも問題ない!サーバーの中身は?」“シリウス”がサーバーの中身を表示する。「空っぽか!全データーを移動したって訳だな。よし!いいだろう!」“Cat”は確認を終えると、HDDをウエストポーチに慎重に終い込み、トランクを開けて現金を見せた。「7500万円だ!確認してくれ!」“シリウス”も加わり3人で現金を数える。「確かに!“Cat”ありがとうよ!」F坊とN坊が頭を下げる。「こっちこそ!礼を言わせて貰うぜ!サンキュー!じゃあ、これから商売の算段をするんで、戻るぜ!携帯の番号、登録しておいてくれ!」「相変らず忙しいヤツだな!気を着けて帰れよ!」「たまには、帰って来いよ!」N坊とF坊が交互に言う。「今度は、施設の同窓会ででも会おう!じゃあな!」身を翻すと“泣き虫Cat”は、瞬く間に夜の街へ消えていった。「N坊、F坊、ヤツの置き土産を見るかい?」“シリウス”が微笑みながら言う。「何だ?」「置き土産?」N坊とF坊は、“シリウス”の席の後ろに回る。「閉じ込めてあるが、コイツだよ!自己解凍型の特殊プログラムだ!」「一定期間に渡ってデーターを飛ばすヤツだな」「時間の経過と共に自己消滅する様になってやがる!」「“泣き虫Cat”、抜け目の無いヤツだな」“シリウス”はそう言うと、プロテクトしてあったプログラムを削除した。「したたかな所は昔から変わらねぇ!」「あの手この手で必ず儲けるのがアイツの強みでもあり、弱みでもある!」N坊とF坊はため息交じりに言った。「どうだった?」リーダーが昇って来た。「7500万円で売り捌きました!」F坊が言うと「なっ、7500だと?!」リーダーの声が裏返る。N坊がキャッシュの入ったトランクを見せると、言葉を失った。「これだったら競争入札にでもするべきだったかな?」「まだ出来るぞ!データーは残ってるからな!」“シリウス”が平然と言った。「えっ!じゃあ“泣き虫Cat”に渡したのはガセか?!」N坊が色をなして問い詰める。「いや、オリジナルだよ。コピーを同時に作ってあるだけさ!」“シリウス”が答える。「じゃあ、別の“情報屋”に手を回せば・・・」F坊が言いかけると「まだ売り捌ける余地はある!」“シリウス”が後半を引き取った。「これ以上の稼ぎは無いと思うが、別の“情報屋”に当たりを付けるか?」ショックから回復したリーダーが聞く。「やって見る価値はありそうですね。“情報屋”さえ見つかれば」“シリウス”はあくまで冷静だった。「いずれにしても、今日はここまでだ。もう遅いから“当直”を残して休んでくれ!」リーダーが命じた。「明日には、ミスターJが“前線基地”を撤収して合流される。片付けやら寝床の確保もある。早めに切り上げだ。所で“当直”は誰だ?」「俺とN坊ですよ。“車屋”からの連絡待ちとシステムの監視ですよね?」「システムは回線から切り離してくれ。さっきのプログラムは削除したが、まだ安心は出来ない。今、スキャンを掛けてるから結果を確認してから、シャットダウンしてくれ!」“シリウス”が注文を付ける。「あいよ。N坊、午前2時半に交代だ。目覚ましを忘れるな」「分かってるって!夜食残して置けよ!」「じゃあ頼んだぞ」「おやすみ!」F坊を残して3人は寝床へ引き揚げた。静かに時は進んでいった。

“Cat”は、自分の事務所に戻ると、PCを立ち上げて受信状況を確めた。「クソ!プログラムは阻止されたか!“シリウス”とか言うヤツは、只者じゃねぇな!」HDDを繋いで、中身を確認すると「こっちは大丈夫だな!2億、いや3億近い価値があるぜ!」“Cat”は興奮して全身の震えが止まらなかった。「明日から早速、商売だ。まずは、裏から攻めるとするか!」“Cat”は、プランの組立てに余念が無かった。現金は当面の家賃と食費を賄うぐらいしか残ってはいない。だが、手に入れた“情報”は、とてつもない価値のある代物だ。“Cat”は舌なめずりをしながら、画面を食入る様に見つめた。「3年、いや4年は安泰で居られるぜ!」“Cat”は、誰も居ない部屋でガッツポーズを決めていた。

「あー、もう何日経ったんだ?」Sは投げやりになりながら、ベッドに引っくり返った。食事は満足のいくメニューが出ていたが、外部からの情報が完全に遮断されているため、何が起こっているのかが、皆目見当が付かないのだ。部下達がどんな尋問を受けて、答えているのか?自分はいつ取調べを受けるのか?Sの心中は穏かではなかった。そんなSの姿を監視カメラで見入っている人物が居た。クレニック中佐であった。「相当、フラストレーションが溜まっているわね。軍曹、率直に答えてくれるかしら?彼は何を考えているの?」「はい、ジレンマに陥っています。正直出たい気持ちと、このまま拘束され続けた方が安全だと言う気持ちで揺れ動いて居ると言えます」「確かに、ここから放り出されれば国内法によって裁かれる。治外法権下の基地に居座れば安泰。究極の2択って訳ね!」「そうです。日によってコロコロと態度が変化しています。かなり揺れていますね」「難しい相手なのは仕方ないわ。後5日間は滞在させなくてはならないの。軍曹、TVを差し入れてあげなさい。娯楽で気分を和ませるのも手ではあるわ。下手に暴れられるのは避けなくてはならないから」「随分と寛容なお考えですが、逆効果になりはしませんか?」軍曹は懸念を示した。「彼に関する報道は、今のところ無いわ。関係している事件についても、公式な発表や報道は抑えてあるの。見せた所で何も分かりはしないわ!暇潰しになれば、彼も大人しく言う事を聞くでしょう?」「分かりました。明日にでも手配します」「そうしてあげなさい。ここの滞在者である以上は、我々の規律に従ってもらう必要があるわ!」中佐は凛として言い放った。勿論、この会話はSには聞えては居ない。しかも、彼は大イビキをかいて既に爆睡していた。そうする以外にする事がなかったからだ。“素敵なホテル”に滞在する事既に9日!Sは自ら自堕落な生活に堕ちていた。

3軸車を運転してる“機動部隊”の隊員達は、八王子に接近しつつあった。「後少しでゴールだ。“司令部”に着いたらとにかく眠りたいよ」「ああ、流石疲れたな。免許は持ってるが、こんなデカブツを転がしたのは初めてだからな!」彼らは“公平なるあみだクジ”によって選出されたのだった。本来なら専任の運転手がいるのだが、“夜の作戦”に従事したために候補から外れてしまい、急遽彼らが“基地”との往復に駆り出されたのだ。無論、免許は保有しており、何の問題も無いのだが“経験”が少なかったのだ。長距離ドライブは初走行と言う“無謀”とも取れる作戦だったが、成功させるのは流石と言わざるを得ない。「けど、以外に転がすの愉しいな。見晴らしはいいし、運転してるって実感が凄くあるぜ!」「普段は8tクラスだからな。フル積載した日には、エンコしたニワトリになっちまう。それと比べたらダメだ。パワーも段違いだし」「ようやく本領発揮だが、本業でも大型の運転手に鞍替えしたいな!」「俺もそう思ってたとこだ。今回の作戦が終了したら、会社に掛け合うか?」「それに限る!長距離やらないか?って話はあるぜ!人手不足でローテがキツイって話はあちこちから漏れ聞いてるしな」「ちょうどいい教習だったと思えば、今回の往復はいい経験になった。自信を持っていっちょやらかすかい?」「いいねー」2人は掛け合い漫才をするかの様に盛り上っていた。八王子まで残り2kmの看板が見え始めている。ゴールは目前に迫った。

F坊は、“当直”に飽き始めていた。「後2時間か。いい加減眠くなったぜ!暇なのは何よりだが、退屈なのは勘弁して欲しいぜ!」あくびを堪えてPCをチェックして見るが異常は無い。「そう言えば“基地”との回線は、繋がったままだな。“極秘文書”として隔離したヤツでも覗いて見るか!」F坊はオンラインで“基地”のサーバーにアクセスすると、“極秘文書”を閲覧し始めた。「“旧AD法律事務所”から行くか」と言うと、片っ端からフォルダをクリックして行った。しばらくすると、かなり深い階層に妙なフォルダを発見した。「クリックしても開かねぇ。何じゃこりゃ?」時間が経過するとパスワードの入力を要求するウィンドーが出てきた。「隠しフォルダか?何だか、きな臭い匂いがするな」F坊は“シリウス”が作成した“パスワード解析プログラム”のDVDをドライブに入れると、こじ開けにかかった。待つ事数分、こじ開けに成功するとフォルダを開いて見た。「画像にエクセルファイルが数点か・・・」何気にエクセルファイルを開くと、帳簿らしきモノが現われた。「何の帳簿じゃ?」数字に目を走らせて読み解き始めるが、どうにも分からない。「送金記録と残高の集計の様だが、妙だな!円じゃなくてドル単位になってやがる!」謎は深まるばかりだった。「F坊、交替しようぜ」N坊がフラリと現われた。「どうした?」「これを見てくれ!俺には謎々だ。サッパリ分からねぇ」「どれどれ・・・」N坊席を交替して画面に見入る。「ドルの入出金記録らしいが、これはどこで見つけた?」「“極秘文書”として隔離したヤツだよ。“基地”のサーバーを見てるんだ。“旧AD法律事務所”のフォルダの最も奥まった階層に隠してあった!」「怪しいな!こっちは分析もしてないデーターだ。ちんぷんかんぷんだな。ただ、カネの出入りが相当昔から定期的にあるのは確かだ!“シリウス”に見てもらおう!悪いが叩き起こしてくるよ」N坊は寝床から半寝ボケ状態の“シリウス”を引きずって来た。「朝まで待てないのか?」案の定“シリウス”は、ご機嫌斜めだった。眠い目を擦りながら画面を見ると、彼の表情が強張った。数字を追う顔つきが見る見るうちに真剣に変わった。「コイツは・・・、おい!リーダーも叩き起せ!緊急事態だ!」“シリウス”の声が裏返る。N坊はリーダーも叩き起した。「何なんだ?」リーダーのご機嫌も麗しくない。だが、“シリウス”の発した言葉が全員の心に爆弾を投げ込んだ。「これは裏の裏帳簿ですよ!しかも、ペーパーカンパニーに送金して脱税を図っていた証拠に間違いありません!」「何だってー!」3人の声が見事に重なった。「Sがまだ資産を隠し持ってるって事か?!」リーダーが愕然として言う。「ええ、香港にあるペーパーカンパニーを通してスイス銀行の口座にカネがある様です。詳しい分析はこれからですが、まず間違いありません!」「だが、M女史からの通報では、そんな口座があるとは聞いて無いぞ!」リーダーが色をなして言う。「F坊が深い階層の隠しフォルダから見つけた代物です。パスワードでプロテクトしていた事を考えると、S以外に知り得ていた人はいないでしょう。肝心なブツは、Sが肌身離さず持っていると考えればどうです?」「有り得ない線じゃありませんね!」N坊が同意する。「それで、金額はどれくらいになる?」リーダーが身を乗り出す。「これから至急精査してみますが、ザックリ見た感じでは5000万円はあるかと・・・」「何て事だ!Sを丸裸にするどころか、大手を振って闊歩させるハメになるじゃないか!残り4日でどうやって防ぐ?」4人はしばし無言だった。このままでは、Sは生き延びて復活して来る怖れもある。深夜に発覚した大問題。残された時間はもう少なかった。「ミスターJは、明日の午後にこちらへ合流される。それまでに全貌を掴むしかあるまい!」リーダーは空いている端末の席に腰を下ろす。N坊とF坊もそれに倣った。4人は深夜の追跡に取り掛かった。

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