limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

life 人生雑記帳 - 45

2019年08月31日 13時12分09秒 | 日記
3日目の朝、緊急の教職員、生徒会の合同ミーティングがセッティングされた。昨日の“一般公開延長騒ぎ”の余波は、今日の一般公開にも及んでいる事が明らかになったからだ。ポスターのミスプリントは、本日の公開時間も1時間延長となっており、関係各所からは非難轟轟。教職員からも厳しい視線が原田に浴びせられた。「原稿は間違っていなかった。刷り上がって来たポスターのチェックを原田1人でやったのが間違いだったんだ!俺はあの時“複数で確認すべきだ!”と言ったはずだが、原田はそれを退けた。“俺の眼に狂いはない”とか言ってな!その結果がこれじゃあ、余りにもお粗末過ぎないか?」益田は舌鋒鋭く“原田批判”を展開した。「それは俺もずっと感じていた!原田は“独断専行”が過ぎる嫌いがある!現に、この場に居なくてもいいヤツも何故かいるしな!」佐久先生も同調して4期生の男子を睨みつけた。“皇太子”に指名されるはずのヤツだ。「彼は、本校の未来を背負って立つ人物です。居なくてもいいとは・・・」と原田が弁解すると「生徒会長選挙を無視するつもりか!それこそ“職権乱用”と言うんだ!今回の事で一番苦労したのはY達だぞ!労いの言葉も詫びも無しか?2年続けて重荷を背負わせるとは言語道断!」机を叩いて佐久先生は原田を睨む。その言い知れぬ迫力に原田は言葉を失った。「信夫、その辺で引け!責任追及は反省会の席でいいだろう。Y君、何か言って置く事はあるかね?」校長が一喝すると佐久先生は沈黙した。僕への下問に対しては「2つあります。1つは模擬店や展示スペースで物品が足りなくなり、カンパで調達を余儀なくされている事です。生徒会の予算も底を付いているはずですので、財政支援をお願いします。2つ目は、“ファイナルステージ”の時間延長を要請します」と答えた。「お前らしい言い分だな。他人の家を心配して自分を顧みないとは。校長、私からもお願います!」中島先生が援護してくれた。「ふふふ、君らしい要請だな。2つとも要請には答えよう。他の先生方もいいかな?」校長が言い出すと誰も反対しない。僕の要請はすんなりと通った。原田は俯いて顔も上げられずに沈黙したままだった。原田の求心力は失われつつある様だ。校長が佐久先生に目で合図をすると「本日の一般公開は、1時間延長。それに伴って“ファイナルステージ”も1時間繰り下げて実施とします。生徒会は、各クラスから実費を清算して、教頭に報告を出せ!生徒の自腹と言う訳には行かない。午前10時を目安に取りまとめを急げ!生徒会長は総本部で謹慎とするため、伊東・小川の両副会長が本日の総本部の指揮を執れ!学校側の指示は以上だ。生徒会からの指示は?」と淀みなく言った。「総合案内兼駐車場係と警備係は、Yが指揮を執ってくれ。“ファイナルステージ”の準備と進行は、益田、小池の2閣僚で対応を宜しく頼む。その他は変更ありません。残り半日の一般公開の成功を目指して各自職務を全うして欲しい。以上です」急遽お鉢が回って来た伊東は、やや緊張気味に言った。「それでは、解散!」佐久先生が宣言して合同ミーティングは終わった。原田は、ガックリと崩れ落ちていた。「Y、ちょっと待っててくれ」佐久先生が僕を呼び止めた。廊下で待つ事数分、先生は小走りに駆け寄ってくると「原田は“謹慎”にするしか無かったが、伊東と小川で今日を乗り切れると思うか?」と聞いて来た。僕は廊下を歩きだしながら「問題はありませんよ。あの2人の方が上手くやるでしょう。益田や小池も不満は漏らしてませんし、僕としても願ったりなんです」と答えた。「ふむ、お前がそう言うなら間違いはあるまい。だが、原田に対する風当たりは相当に強いぞ!今までの“専横”が祟ったな。教職員の間でも評価は急落しているから狙い通りなんだが、このままヤツを封じ込められるか?」「多分ですが、原田の手足は完全にもぎ取られました。復活して来る力は残っていないでしょう。形勢を有利にする材料が無いんですから!」「Y、ひょうたんから駒ではあるが、これで“悪しき者達”が残ることは無いな。後は任せる!必ず正しい道へ後輩達を導け!これはお前達の最後の仕事だ。頼んだぞ!」佐久先生はバシバシと僕の背を叩いた。「お任せください。“太祖の世”に復して見せますから!」僕と先生は薄っすらと笑って職員室の前で別れた。

昇降口の奥。僕等の本部には誰もいなかった。「今日で最後か」僕は無意識に“責任者”の椅子に座ると眼を閉じて見た。走馬灯のように思いが溢れ出した。「2年間も良くやったもんだ」そう呟いていると、シャター音が2度聞こえた。「参謀長、おはようございます!」加奈がふらりと現れた。「何の写真だ?」「参謀長が“責任者”の椅子に座っておられる姿ですよ。忘れない様に、迷ったら問いかけられる様に映像を残したかったの。だって・・・、もう・・・、2度と見られないんですよ!悲し過ぎます!」加奈の頬に一筋の涙が伝う。「イヤでも時間は止められん。だが、記憶の中には残る事は出来る。私は、残された時間であらゆるモノを消し去らなくてはならない。原田の治世を抹消して、あらゆる記録類も破棄して行く。全ては“太祖の世”に復するためだ。記録類は残さないが、記憶はその人の心に残るだろう?私はそれで良いと思う。我々の世代は“記録類に残ってはならない”宿命なんだよ」僕は、ハンカチで加奈の頬をそっと拭きながら静かに言った。「あたし達を救い、今まで導いてくれた事すら消し去るの?そんな事は余りに酷すぎます!」加奈は、僕の胸元を叩いて泣きじゃくる。「遠藤、水野、加藤、隠れてないで出て来るんだ」僕は東校舎入口付近に向かって声をかけた。3人がやはり泣きながら出て来た。「参謀長・・・」言葉が続かずに涙が頬を伝っている。1人づつハンカチでそっと涙を拭いてやりながら「まだ、全てが終わった訳じゃないぞ!夏期講習に、秋の“大統領選挙”もあるんだ!乗り越えなくてはならない課題は山積している!私が本当に肩の荷を降ろせるのは、卒業式当日だ。4人共しっかりと前を向け!“向陽祭”は通過点に過ぎない。真のゴールはまだまだ先だ。今日も長い道のりが待ってる。しっかりしろ!」僕は4人の肩を叩いて回った。「でも・・・、参謀長が・・・“責任者”の椅子に座っておられるのは・・・、今日までじゃないですか・・・!お願いです!留年して下さい!」泣き声と共に遠藤が無茶を振って来る。「おいおい、それは勘弁してくれ。私は新たな地に足を踏み入れなくてはならないんだ。それも、1兵士としてな。君達は、自らの力で這い上がって来た勇者だろう?誰もが出来る事では無い事をやってのけたんだ!己を信じて前を見据えて進んでいけ!君達なら出来るはずだ!私達の後を継いで、学校を背負ってくれ!“太祖の世”に復するためにもな!そのためにも、教え込んで置く事はまだ数多ある!だから、私の背を追って来い!全力でサポートしてやるからな!」僕は優しく4人の肩を叩いて言った。すすり泣きは、しばらく続いたが4人は少し落ち着いた様だった。「さあ、化粧直しをして来い!そんな顔だと笑われるぞ!」僕はそう言うと4人と肩を組んだ。「さあ!残すところ半日だ!全力で駆け抜けるぞ!」「はい!」上田、遠藤、水野、加藤、僕達が精魂を込めて“育て直した”4人は何とか息を吹き返した。そして、化粧を直すべく教室へ戻って行った。「頼んだぞ。未来を切り開け!」そう、呟くと僕は改めて“責任者”の椅子に座り直した。「行きましたか?まだまだ“親離れ”とは言えないようですね?」西岡がやって来た。「やれやれ、Yは4人のお兄さんと言うより“父親”なのね・・・。あの子達に“かっさらわれない”様に見張らなきゃ!」大魔神の様に、さちが僕の目の前に立った。「全く、手のかかる子供達だよ。だが、手をかけた分、安心して引き継げる。“太祖の世”に復するためにも大きく育ってもらわなくては困る!」僕はさちの顔を見て言った。「育っているのは恋心じゃないの?」さちが不敵な笑みを浮かべる。まるで加奈との関係を知っているかのようだった。「恋心など云々している暇があるか?過密日程をこなして、自分の身の振り方も決めなくてはならない。息つく間もないぐらい課題は山積みになってる。それぞれに手分けをして当たってもらっているが、それでもギリギリだ!よそ見をしていられる余裕は無いよ!」僕は背中に冷や汗を滴らせながら返した。顔色は変えず、声音も平常心を装うのに必死だった。「ならば、宜しい。Y、今日も頑張って行こう!」さちはそう言ったが、眼は笑っていなかった。女の直感は恐ろしいとつくづく思った。

午前8時15分になると、指揮下の係員達が本部前に整列を終えた。「参謀長、総員整列を完了しました!」山本が報告を入れて来る。上田達も、表情を引き締めて列に加わっている。「よし、ミーティングを開始しよう!」僕はゆっくりと椅子から立ち上がった。「諸君、おはよう。いよいよ最終日を迎えたな。今年も色々とあったが、みんなの協力のおかげで無事切り抜けることが出来た!残り半日、無事に各自が職責を全うしてくれる事を切に願う。本日もポスターの“ミスプリント”の余波で、公開時間が1時間延長される。山本、各指揮者へ本日のシフト表を配布してくれ」山本が手際よくプリントを指揮者へ手渡して行く。「各員のシフトは、本日の発表と重ならない様に組んだつもりだが、もし都合の悪い者が居たら、前後の担当者と個別に交渉して調整してくれ!では、しばらく確認の時間を設ける。確認開始!」各要員は、指揮者の元に群がってシフトを確認して行った。「脇坂、通信回線を開け。それと、内線を復活させろ!」「了解、内線ジャック接続。通信回線オープン。双方共に異常ありません!」「よし、さち、西岡、冷えたボトルを袋に詰めてくれ。山本、各隊の状況を報告!」僕は立て続けに指示を送る。「参謀長、各隊シフトに問題は無い様です!」「分かった。坂野、宮崎、後は宜しく!」「はいよ、みんな!気合入れて行くぜ!」坂野が言うと宮崎がラジカセの再生ボタンを押す。“WE WILL ROCK YOU ”が流れ出す。「勝つぜ!俺達は無敵だ!最後まで走り抜くぜ!」「Yes!」「俺達の働きで一般公開の成否が決まる!気合入れて行くぜ!」「Yes!」「今日も宜しく!」「Yes!」“WE WILL WE WILL ROCK YOU ”を連呼してみんながノリノリになった。曲が終わっても合唱は続いていた。今日もみんなの体調に問題は無さそうだ。「先遣隊並びに第一陣、出発準備に入れ!脇坂、チャンネルは“総合案内兼駐車場係”を19、“警備係”を15にセット!準備が整ったらコールを開始しろ!」「了解!」「参謀長、あたし達がシフトから外れてますが何故ですか?」遠藤が色をなして詰め寄って来た。「今日は、本部で総合的な視点から、私が指揮を執る姿を良く見て置け。細々とした用事はいくらでもある。君達4人は基本、本部で待機とする。いいな?」僕が諭す様に言い渡すと、遠藤、水野、加藤の表情が明るくなった。「加奈、3人の椅子を私の後ろに並べてやれ」「はい!」「参謀長、先遣隊及び第一陣の出発準備が完了しました!」「無線機に異常ありません!」山本と脇坂から報告が来た。「坂野、小松、宜しくな!」2人に声をかけると「Y、ちょっと行って来るぜ!」と言って炎天下へと飛び出して言った。「警備係、出発だ。規制ロープを忘れるな!」と言うと「はい、では行ってきます!」と涼しい顔をして配置に向かった。「ようやく育ったな。私の理想が2年かけて育った!来年は、彼らが率先して働いてくれるだろう。加奈、彼らとの信頼関係を構築して置けよ!」「はい、参謀長の切り拓かれた道を確実に整備して備えます!」加奈はノートにペンを走らせていた。遠藤達も同じようにノートを取っている。“こうした姿勢こそが来年に必ず生きる”僕は彼女達を見つめてそっと呟いた。

入場者は、順調に増えて行った。開校3年目にして、ようやく“認知”されたのだろう。他校の生徒も多数混じっていた。特段の問題も起こっておらず、公開そのものは順調に進んでいた。「Y、ボトルが足りなくなりそうだよ!どうするの?」さちが冷蔵庫を調べて言って来る。「伊東に言って手に入れるしかないな。脇坂、総本部を呼び出せ!」「はい、少々お待ち下さい」脇坂は受話器を片手に内線番号をプッシュした。「参謀長、どうぞ」僕はオープンマイクに切り替えると、伊東と話し始める。「伊東、総本部で余ってるボトルをこっちへ回せないか?」「ああ、いいよ!何ケース必要だ?」「4~5ケースは欲しい。出せるか?」「原田のヤツ、何でこんなに発注したんだろう?かなりの在庫があるぜ!」伊東も困惑気味に言う。「自分たちだけは潤沢にしたかったんだろう?何しろこの暑さだ。誰だって渇きには耐えられん!取りに行かせるから、ありったけの在庫を回してくれないか?」「了解だ!6ケースは持って行っても問題ない。4人ばかり寄越してくれればいいぞ!」「直ぐに行かせるよ。それと、例の“作戦”は進んでるか?」「ああ、長官が片っ端からコピーを取ってるよ!廃棄の手筈も決まった。問題は、原田の“実弾”の入った金庫だな!ガサ入れをやってるんだが、鍵と暗証番号が不明なんだよ。どこにあるんだ?」「多分だが、原田の持ち物の中だろう。“スパイ大作戦”で手に入れるしかあるまいよ!坂野が戻ったら教室のガサ入に行かせる。ラテックスの手袋を用意して待っててくれ!」「了解だ。4期生の“皇太子”にいくら持たせたかを知りたいからな。女の方はどうする?」「既に“靖国神社”が水面下で動いてるよ。不安を煽ってるはずさ!そうすりゃあ、原田陣営は四分五裂。益田と小池の“離反”も決定的だから、証拠さえ押さえれば事前に叩ける要素はいくらでもある!ともかく、金庫こじ開けて帳簿を手に入れてくれ!」「分かった。何とかやって見よう!一般公開の方に格段の問題は無いだろうな?」「あれば、こんなに呑気に話してないさ!今のところ問題は無い。安心しろ!じゃあ、任せるぞ。後で坂野を行かせるからな。宜しく頼むよ」僕は薄笑いを浮かべて受話器を置いた。「水野、加藤、予備隊から男子4名を連れて、総本部からボトルのカートンを運び出せ!台車を忘れるなよ」「はい」「直ぐに急行します」2人が立ち上がって動き出す。「さち、冷蔵庫のスペースは足りるか?」「新たに6ケース来るの?中を整理しとくね!」さちは冷蔵庫の中をひっくり返し始める。「遠藤、手を貸してくれ!押し込めるだけ押し込まなくちゃならない」「分かりました」遠藤は、さちのお手子に付く。「相変わらずお見事ですね。電話1本で全て済ませるとは」加奈が感心したかの様に言う。「これくらい簡単な事さ。普段から意思疎通が取れていれば、多くは言わなくても分かってくれる。こうした関係も手を抜くなよ!」僕はあえて加奈に釘を刺した。「大舞台では、こうした事を順序よく片付けて行くのも大事なんだ!何気にやっている様に見えるだろうが、全ては計算の内なんだ。指揮を執る上では、あらゆる視点から物事を見て、考えて、備えて置け!そうすれば、いざと言う時慌てずに済む」加奈は必死にペンを走らせていた。“彼女ならやれるだろう”加奈のひたむきな姿勢を見て、僕は間違っていないと確信を得た。

午前11時50分になると、いよいよ“最後のクローズ作業”の準備が開始された。「脇坂、総員を戦闘配置に着かせろ!山本、ありったけの兵力を投入する!予備班も動員しろ!最後の1人、1台を見送るまで気を抜くな!警備係は、規制線を張り巡らせて誘導に当たらせろ!さあ、最後の勝負に打って出るぞ!加奈、遠藤、水野、加藤は、情報収集と連絡に当たれ!」僕は矢継ぎ早に指示を送る。「了解!」6人の声が重なる。時計を見て各要員は三々五々に集まって来る。集合を終えた隊から、順次配置に着かせて行く。正門前の最重要ポジションは、今野と宮崎の隊を貼り付けた。「午後0時半を持って“バリケード”を設置。入場を止めてくれ。退場には、それなりの時間を食うだろうが、最後の1台が出たら正門を閉ざしてくれ。今日は“完全閉鎖”だから、南京錠をかけるのを忘れるな!」今更ながらにも指示を出すと「Y、いよいよだな!」「俺達の集大成を見せ付けて来てやる!後は任せな!」と言って笑顔で正門前へ出て行く。これまでと何も変わらないかの様に。彼等が居たからこそ、ここまで来れたと言っても過言ではない。「坂野、今野や宮崎、飯田に小松に吉川。誰も文句を言う事無く、黙々と職責を全うしてくれている理由は何だ?」と問うて見た。すると坂野は「お前さんこそ2年続けて“責任者”を引き受けた理由は何だよ?」と問い返される。「一言で言うなら“伝言”になるかな?“悪しきモノ”は残せない!出て行くなら、気持ち良く去りたいだろう?最後の“使命”を果たしたかっただけだよ」と返すと「俺達は、そんなYと共に戦いたかった!だから、志願して出て来た。それだけさ!」と笑って答えた。「物好きだな!」と言うと「ああ、ここまで来ると理屈じゃ無いんだ!戦友にしか分からない事さ!同じ時代を生きた者にしか分からない“血が騒ぐ”のさ!原田は、やり過ぎた!それを正して、“太祖の世”に復する事こそ俺達が取り組まなくてはならない最後の“大仕事”だろう?」坂野が事も無げに言う。僕達は互いに眼を見てから笑い合った。「じゃあ、坂野、校内巡視の指揮を執ってくれ。間もなく出発だ」「了解だ!予備班集合してくれ!」坂野は予備班を招集し始めた。校内に流れていたBGMの曲調が変わった。いつの間にか午後0時15分を過ぎている。間もなく“グランドフィナーレー”だ。「加奈、いよいよ“グランドフィナーレー”を迎える。女子班を配置に着かせて指揮を執れ!」「はい、みんな、集まって!」加奈も女子達を整列させ始めた。「本橋、石川、爆竹をセッティングしろ!」「はい!」2人の声が重なる。「脇坂、無線で伝達。“残り45分でグランドフィナーレーを迎える。最後まで気を抜くな!”と申し伝えろ!」「はい、各隊応答願います・・・」「山本、忘れ物や落とし物の集積は?」「余りありません。貴重品などは、事務室で保管してもらってますが、少ないです」山本は箱を開けて中を見せた。「よし、閉場後に事務室へ引き継げ!これからまだ増えるぞ。覚悟して置け!」と言ってから僕は“責任者”の椅子へ戻り、内線で総本部を呼んだ。「千秋、ああ、こちらは順調だよ。特段、問題も出ていない。予定通りに進行するよ。悪いが伊東に伝えてくれ。ああ、任せて置け。では、後でな」僕は受話器を置くと息を継いで背筋を伸ばした。「もう一息だ!気を抜くな!」本部に居る要員に一声をかける。皆が頷くか手を挙げた。時計の針は刻々と進む。最後の来場者が校外へ出たのが、午後0時50分。「警備係と坂野隊に伝達、“最終確認と拾得物の確認を開始せよ!”」「了解、警備係及び坂野先輩・・・」脇坂が無線で指示を伝える。「加奈、扉を閉めろ!掃除開始!」「了解」残るは校庭だった。午後1時過ぎ、警備係と坂野達が引き上げて来た。「確認完了!拾得物はこれだけあったよ」坂野が安堵して言って来た。「今野より本部」「こちら本部」「最後の車両が正門を出た!施錠をしてから引き上げる!」「了解です!お疲れさまでした!」脇坂が返信を終えると、自然に拍手が広がった。「Y、見事な完投勝利だ!お疲れ!」坂野が握手を求めに来た。さちや西岡も続く。そして、炎天下から今野、宮崎両隊が引き上げて来ると、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。「ご苦労!」冷えたボトルを手渡しながら固く握手を交わす。「Y、俺達はやり遂げたんだな?」宮崎が言うので「ああ、完ぺきだったよ!」と言って笑い合う。遠藤達が整列すると、ラジカセの再生ボタンを押した。“WE ARE THE CHAMPIONS ”が流れて加奈を筆頭に合唱が始まる。歌声は直ぐに広まり肩を組んでの合唱も始まった。テープはエンドレスらしく、リピートが繰り返される。「偉大なるチャンプ、2期生の先輩方に大きな拍手を!」遠藤が言うと拍手が鳴り響く。水野と加藤が僕等の制服の左胸に「CHAMPION」と書かれた缶バッジを着けてくれた。「参謀長、一言お願いします!」加奈が僕を指名した。「今、1つの荷を降ろすことが出来た。来年は君達の出番だ!来年も事故の無い様に努めて欲しい。辛い事も命じなければならなかったが、みんなの努力はこうして報われた。ここに居る全員がチャンピオンだ!加奈!曲をかけろ!もう一度歌おうじゃないか!みんな肩を組め!坂野、宮崎、後は宜しく!」「血と汗と涙の末に俺達は勝った!みんな、ありがとうよ!」「Yes!」「辛いときは今日を思い出せ!3期生、4期生、後は任せたぞ!」「Yes!」「さあ、歌え!叫べ!」「俺達はチャンピオンだ!」坂野と宮崎が気合を入れてから曲は再スタートした。“WE ARE THE CHAMPIONS ”のフレーズに合わせて歌い、叫び、肩を抱き合う。“総合案内兼駐車場係”と“警備係”の打ち上げは、しばらく熱を帯びて続いた。

僕等が遅い昼食を終えた頃には、片づけも8割ほど終わっていた。3期生と4期生が図面にプロットしながら片づけに精を出している。来年は彼らが先頭に立って行かなくてはならない。“責任者”の椅子は、まだ片隅に置かれていたので、僕は改めて座って見た。「この景色は忘れない」と呟くと「あたしにも座らせてよ!」と言って、さちが僕の膝の上に座り込む。「お疲れ様。保健室ガラ空きだよ!久しぶりに抱っこしない?」さちが耳元で囁く。「確かに、ご無沙汰だからな。2回戦までか?」「だーめ、3回戦まで!Y、早くしようよ!あたし我慢の限界なの!」さちが珍しく積極的だ。「はいはい、姫のご要望とあればやむを得ませんな!」僕とさちは、保健室の個室へ潜り込むとキスをしてから互いに制服を剥ぎ取っていく。スキャンティとトランクス1枚になると、ベッドにさちを押し倒した。「お願い、中に出してね!妊娠なんて怖くないんだから!」さちはそう言うと最後の1枚を脱ぎ捨てた。湿り気を帯びている下を掻きまわすと、さちは嬉しそうに体をくねらせた。突きを始めると声が自然に大きくなる。「もっと、もっと・・・、突いて・・・」久しぶりのさちの体は気持ちがよかった。体位を入れ替えて、さちが上に乗って腰を激しく使うと絡みつく感触に病みつきになりそうになる。「ああ・・・、イク・・・、あたし、いっちゃう!」白い液体は余す事無く、さちが吸い上げた。覆いかぶさると唇が重なる。「まだ、元気だね」と言うと、さちは背後から突く様にせがむ。僕が思いっきり突いてやると、喘ぎ声が一段と高まった。乳房を鷲掴みにしつつ、腰を激しく使い液体を放出すると、さちはベッドに横になり、しばらく余韻に浸った。「赤ちゃん出来るかな?」と言うので「それは、さちの側の準備もあるから、分からないな」と言うと「あたしは、今すぐ欲しいの。出来れば双子で!」と欲張りを言う。3回戦は、僕が上になり突きをお見舞いして行った。「Y、ちょ、ちょっと待って。ヤバイかも・・・」さちが慌ててティシュで下をあてがうと、見る間に赤くなった。「あちゃー、来ちゃったよー!」さちに生理が来てしまい、3回戦はコールドゲームとなった。何とか始末を付けて、制服を着ると僕等は保健室を抜け出した。太陽は傾いて“ファイナルステージ”の準備が佳境を迎えていた。「今年は倒れないでよね!最初で最後なんだからさ」さちが手を繋いで言う。「“最初で最後”か。思いっきり愉しむしか無いだろう?」僕達は校庭に向かって歩き出した。巨大なキャンプファイヤーがセッティングされている。天をも焦がす巨大な火柱が立つだろう。最後の夏は、全力で駆け抜ける事になるが、これで終わってしまう訳ではない。山積する課題と1つ1つ向き合って階段を1歩づつ登る事になるのだった。