今日は看護のことを書く。書きたいとずっと思っていたことである。
私は通勤時間にpodcastを聴いている。その中にThe Lancet podcastが入っている。2月の末に突然、インタビューにLinda Aiken(リンダ・エイケン)が出てきた。びっくりした。現在進めている看護労働の国際共同研究についての論文がLancet掲載されており、それに関してのインタビューであった。やや高めの声で理路整然と、速いスピードで話していた。
Aikenと共同研究者は、毎年ぐらい、Lancetに論文を出している。今年のものは下記からダウンロードできる。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(13)62631-8/fulltext#article_upsell
Linda Aikenはペンシルべニア大学の看護学の教授で看護労働の研究では世界の先頭を走っている学者である。2010年のIOMの看護の未来レポートにも、Aikenが書いた看護教育に関する政策提言の論文が付属資料として掲載されている。自身では、1990年と2000年と10年ごとにアメリカの看護の未来を展望した本を出している。人口変化、経済・政治状況から、社会の保健医療ニーズを詳細に分析し、社会の保健医療のニーズを充足するために看護の実践の範囲(役割のこと)、それに伴う職員配置の充実や労働量、賃金の向上、そして教育の改善と、それに即した規制(資格認定、継続教育や免許更新)の整備に記述は及んでいる。
ペンシルべニア大学は、1970年代に「ナースのケアはGPよりも質が高い」という世界の看護に影響を与えた大規模研究を行った大学である。詳しくは渡部富栄(2012):「IOMレポート『看護の未来:変化をリードし医療を強化する』がアメリカの看護にもたらすもの」『インターナショナル・ナーシング・レビュー』日本看護協会(81-88)を参照頂きたい。俗にペン大の研究と言われている。
Aikenの研究で有名なのは2002年のJAMA(アメリカ医学会雑誌)に掲載された論文である。インターネットからダウンロードできる。
Aiken et al (2002). Hospital Nurse Staffing, Patient Mortality. Nurse Burnout, and Job Satisfaction. Journal of the American Medical Association, 288(16), 1087-1993. http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=195438
内容は、ペンシルベニア州168病院のナース1万人と退院患者23.2万人から導き出したナースの職員配置と患者へのリスクとの関係である。1人のナースが受け持つ患者が4人を超えると1人増えるごとに患者の死亡率が7%、ナースのバーンアウト率が23%、ナースの職務不満足度が15%上昇する、というものである。
Aikenは、何年か前から、RN4CAST(アールエヌ・フォーキャスト)という国際共同研究を押し進めている。欧州委委員会から研究費を受けている。看護労働に関するパラメターと患者のアウトカムとの関係を考察して、保健医療政策への提言ためのエビデンスを出している。毎回のICNの大会でもセッションが設けられているし、地域ごとの看護労働関連の会議でも、当該地域の共同研究者が発表している。今年Lancetに発表された対象の国はベルギー、イギリス、フィンランド、アイルランド、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイスである。
インタビューでのAikenの発言で、とても印象に残ったことがあった。それを以下に記しておく。
「各国間の医療水準の格差はあるのだが、実はそれ以上に大きかったのは国内格差である。最新テクノロジーを駆使した機材を整備した病院とそうでない病院の差は歴然としたものだ。医療財政を抑えるためにナースの配置数をカットして労働量を含めた職場環境が悪化し、それが入院患者の死亡率を引き上げることになっている。国内の施設間の技術格差は埋めることができなくても、ナースの配置を増やして働きやすい、やりがいのある職場を整備する政策を展開することで、その国の医療の質は確実に上がる。近代病院の使命は、入院患者の状態を在宅でケアできる状態までに改善することだ。患者が入院するのは、そうした状態にまで回復できるような良い看護を受けるという目的のためである。一国の医療レベル全体を引き上げる一番効果的な方法は、看護とナースに手厚い配慮をすることであり、そのための政策の実現が求められる」
私は通勤時間にpodcastを聴いている。その中にThe Lancet podcastが入っている。2月の末に突然、インタビューにLinda Aiken(リンダ・エイケン)が出てきた。びっくりした。現在進めている看護労働の国際共同研究についての論文がLancet掲載されており、それに関してのインタビューであった。やや高めの声で理路整然と、速いスピードで話していた。
Aikenと共同研究者は、毎年ぐらい、Lancetに論文を出している。今年のものは下記からダウンロードできる。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(13)62631-8/fulltext#article_upsell
Linda Aikenはペンシルべニア大学の看護学の教授で看護労働の研究では世界の先頭を走っている学者である。2010年のIOMの看護の未来レポートにも、Aikenが書いた看護教育に関する政策提言の論文が付属資料として掲載されている。自身では、1990年と2000年と10年ごとにアメリカの看護の未来を展望した本を出している。人口変化、経済・政治状況から、社会の保健医療ニーズを詳細に分析し、社会の保健医療のニーズを充足するために看護の実践の範囲(役割のこと)、それに伴う職員配置の充実や労働量、賃金の向上、そして教育の改善と、それに即した規制(資格認定、継続教育や免許更新)の整備に記述は及んでいる。
ペンシルべニア大学は、1970年代に「ナースのケアはGPよりも質が高い」という世界の看護に影響を与えた大規模研究を行った大学である。詳しくは渡部富栄(2012):「IOMレポート『看護の未来:変化をリードし医療を強化する』がアメリカの看護にもたらすもの」『インターナショナル・ナーシング・レビュー』日本看護協会(81-88)を参照頂きたい。俗にペン大の研究と言われている。
Aikenの研究で有名なのは2002年のJAMA(アメリカ医学会雑誌)に掲載された論文である。インターネットからダウンロードできる。
Aiken et al (2002). Hospital Nurse Staffing, Patient Mortality. Nurse Burnout, and Job Satisfaction. Journal of the American Medical Association, 288(16), 1087-1993. http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=195438
内容は、ペンシルベニア州168病院のナース1万人と退院患者23.2万人から導き出したナースの職員配置と患者へのリスクとの関係である。1人のナースが受け持つ患者が4人を超えると1人増えるごとに患者の死亡率が7%、ナースのバーンアウト率が23%、ナースの職務不満足度が15%上昇する、というものである。
Aikenは、何年か前から、RN4CAST(アールエヌ・フォーキャスト)という国際共同研究を押し進めている。欧州委委員会から研究費を受けている。看護労働に関するパラメターと患者のアウトカムとの関係を考察して、保健医療政策への提言ためのエビデンスを出している。毎回のICNの大会でもセッションが設けられているし、地域ごとの看護労働関連の会議でも、当該地域の共同研究者が発表している。今年Lancetに発表された対象の国はベルギー、イギリス、フィンランド、アイルランド、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイスである。
インタビューでのAikenの発言で、とても印象に残ったことがあった。それを以下に記しておく。
「各国間の医療水準の格差はあるのだが、実はそれ以上に大きかったのは国内格差である。最新テクノロジーを駆使した機材を整備した病院とそうでない病院の差は歴然としたものだ。医療財政を抑えるためにナースの配置数をカットして労働量を含めた職場環境が悪化し、それが入院患者の死亡率を引き上げることになっている。国内の施設間の技術格差は埋めることができなくても、ナースの配置を増やして働きやすい、やりがいのある職場を整備する政策を展開することで、その国の医療の質は確実に上がる。近代病院の使命は、入院患者の状態を在宅でケアできる状態までに改善することだ。患者が入院するのは、そうした状態にまで回復できるような良い看護を受けるという目的のためである。一国の医療レベル全体を引き上げる一番効果的な方法は、看護とナースに手厚い配慮をすることであり、そのための政策の実現が求められる」