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1945年8月14日は大日本帝国の通夜のあった日・・・東宝映画「日本のいちばん長い日」

2021年08月14日 08時17分43秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

1945年8月14日は「日本のいちばん長い日」であった。

隠密裏に終戦工作に奔走する鈴木貫太総理を笠智衆、徹底抗戦を主張して暴発寸前の陸軍を抑える任務を負わされた、阿南陸軍大臣を三船敏郎が好演して、異様な緊張感に満ちている。
笠智衆演じる鈴木貫太郎は、日清日露で勇猛を馳せて「鬼の貫太郎」と異名をとった海軍軍人、のちの連合艦隊司令長官。軍人は政治介入すべきでないを信条とした無私の忠君であったので、天皇の覚えめでたく侍従長に抜擢。この時代には「燕尾服を着た西郷さん」と呼ばれ、政治経験もブレーンもなく、終戦にむけて軟着陸させるのはあなたしかいないと乞われて総理に就任。
三船敏郎演じる阿南陸軍大臣も、軍人は政治介入すべきでないと公言していた軍人。鈴木侍従長時代には同じく天皇からの信任あつく侍従武官も務めた。鈴木内閣は終戦工作を成功させる最重要人事として、真っ先に陸軍大臣に阿南を使命した。自身が軍人として徹底抗戦を主張しつつ、天皇の無条件降伏の受諾意向を重んじる板挟みの役どころを、三船さんは淡々と自然体で演じている。鈴木総理と阿南陸軍大臣は、東映の人気シリーズ「昭和残侠伝」の健さんと池部良さんの関係を彷彿とさせる。立場は違えども肝胆相照らす男たち。
 
原作者の半藤一利は、この無条件降伏のご聖断を仰ぐ不眠不休の御前会議の夜が、「明治以降続いた大日本帝国の通夜であった」と書いている。
 
のちに「仮面ライダー」の死神博士役で人気者になる天本英世は奇人・怪人役が多かったが、この映画では一億玉砕・徹底抗戦を主張して、「君側の奸」の鈴木内閣要人を襲撃する横浜警備隊隊長大尉を鬼気迫る演技で見せ、彼のキャリアの中で最高の死神役となった。
実際の天本英世も「貴様!背が高すぎる!生意気だ!」という理由で殴られ続けた学徒兵であり、戦後は徹底したアナーキスト・平和主義者となったが、モデルにした狂信的な軍人がいたに違いない。2・26事件の青年将校が憑依しているのか?大丈夫か?と心配になるくらいの死神振り。
 
横浜警備隊の隊員たちは、学生服に草鞋履きの学徒兵。
 
尻ポケットに丸めてねじ込まれた岩波文庫の「出家とその弟子」・・・首相官邸に突撃の際にその本が泥濘に落ち、踏みにじられる場面に学徒兵の悲愁が端的に表現されている・・・岡本喜八監督はセリフで世相や人物像を説明せず、すべて絵で描き切る名監督。
大正時代にベストセラー本「出家とその弟子」は親鸞上人と弟子を描いた戯曲。学業なかばで学徒動員された若者たちは、思想書や哲学書を読んで死地に赴いていったのだろう・・・太平洋戦争のリアリティ。
 
リメイク版もあるが、1967年の岡本監督作品に比べたら饒舌なセリフ、誰でもわかりやすい演出が過剰であり、また反乱将校役の若手俳優陣が初年兵にしかみえない貫禄の無さもあって、まるで村芝居か学芸会のようだ。
 
この映画を観ると、無謀な戦争をしてしまった時代の空気感がよく理解できる。
 
日本がアメリカと戦争をしていたことを知らない大学生が増えているそうだし、「大東亜戦争はアジア解放の聖戦」というネット情報を無批判に信じ込む人々も多い。
 
中学校の歴史の時間にでも観せてやって欲しい名画。
 


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