国立博物館で、ウサギの耳を兜に飾ったこの甲冑をみると、旧友に会った気分になる。
明智光春(秀満・左馬之助)所用と伝わる、「当世具足」の逸品である。
外国の甲冑なら獅子や龍など、いかにも強そうな図像で飾るのだが、ウサギの耳を兜飾りにする戦国武将の、とりわけ豪傑の誉れ高い光春の趣向というカブキぶりが、いかにもバサラ大名らしく、甲冑好きらしい外国人男性が嬉しそうに奥さんに説明していた。
どこの博物館も同じだが、モノからヒトが浮かびあがるヒントになる説明書きが簡潔過ぎることが非常に残念で、所用者の情報や由来などは説明されていないのだ。
すこし離れた場所に、柄を絹糸ではなく革紐で巻いた実用的な「明智拵え」の太刀も展示されているが、光春所用とまでは説明されておらず、一緒に展示すりゃいいのに、といつも思う。
所用者の人物像を伺い知るには意匠は重要なのだが、とくに甲冑は重量を知りたい。重厚な甲冑を好んだ伊井直政のように防御力重視なのか、軽量な甲冑を好んだ本多忠勝のように動きやすさ重視の武将なのかがわかろうというもの。
感心するのは甲冑の飾り方で、県立博物館レベルだと学芸員さんが飾るからなのか、籠手を立体的に見せるための中につめた新聞紙などがモコモコして不格好だったり、鎧と兜の軸線がズレていたりするが、国立博物館は甲冑師が飾っているのかお見事な飾り方。
たとえば千利休所用と伝わる甲冑など、推定身長180㎝と大柄な人物であり、意匠は詫び寂びとは無縁の、最前線の大将が着用するような実用的な甲冑だから、戦陣で茶会をひらくのみならず、本陣で参謀のような役割を担っていたことも伺い知れる訳だ。
その旨を監視役の女性(?)に伝えたら、「面白い観方ですねぇ、上に伝えておきます」としきりに感心してたけど、実現しないだろうナw