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縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

八尺瓊勾玉はメノウ説に物申す!・・・赤メノウでつくった「赤まない」

2025年05月11日 06時13分45秒 | ぬなかわヒスイ工房
赤メノウでつくった眞名井遺跡出土のヒスイ勾玉の実物大を「赤まない」と銘打った。
三種の神器の八尺瓊勾玉はメノウ製とする説が一部で流布しているようだが、漢字の瓊(ニ・ヌ)は「美しい玉」の他に「赤い玉」という意味もあることからの説ではなかろうか。
 
脱線するが、わが産土の神の奴奈川姫様は本来なら「瓊奈川姫」という漢字表記がふさわしいのだが、「囚われた女奴隷」を原義とする奴という漢字をあてたのは「出雲國風土記」の記述からだ。
イズモはヌナカワを隷属化においてヌナカワ姫は囚われ、逃亡の末に殺されたと受け取れる伝説を裏付けるような奴奈川姫という表記から、氏子としてはカタカナ表記するか、「瓊奈川姫」と漢字表記しようではないかキャンペーン実施中w
 
「美しい」を「赤い」とする東北方言もあり、かっては赤は美しいの代名詞でもあったようだ。
知ったかぶりしたくない勾玉探偵は、考古学だけではなく語源や方言まで調べているのだぞw
しかし首飾り状で出土した遺物の中央にはヒスイを置き、他の石材は引き立て役になっていることから、ヒスイを最上とする序列があったことが伺え、学術的には八尺瓊勾玉の主役はヒスイと推定されているのですナ。
 
流通している赤メノウ勾玉は染めたブラジル産か、インドあたりで産出する均質な深紅色をしたカーネリアンばかりのようだが、こちらは出土品とおなじ国産の染めていない赤メノウ(アゲート)。
赤メノウは原石の表面から数㎝のみに赤い層があり、内部は白っぽいから、大きな原石であっても使える部分はごく僅かで、均質な赤い部分は希少なのだ。
カーネリアンのように均質な深紅ではなく、天然赤メノウは色ムラがあるところが妙味であり、いかにも奥ゆかしい日本的な美人勾玉と、わたしは思う。
 
 
 

八尺瓊勾玉の勾玉は首飾りのミスマル?ではその繋げた素材は?・・・勾玉探偵、八尺瓊勾玉を考える

2025年04月27日 07時13分41秒 | ぬなかわヒスイ工房
三種の神器のひとつ、八尺瓊勾玉は連珠(レンシュ・首飾りのこと)であったと推測する専門家は多い。縄文晩期~古墳時代までの勾玉は、つなげた紐が腐朽して痕跡はないものの、首飾りであったことがわかる状態で出土することも多いようだ。
 
文献史学的にも日本書紀に「八尺瓊の五百箇御統」(ヤサカニノイオツのミスマル)と記述があったりするので連珠説だ。ミスマルは漢字だと御統・美須磨婁とも表記される首飾りの古語であるらしい。
 
となると、どんな素材で繋げたのかと気になるのが、つくる立場のヒスイ職人というもので、考古学者に聞いても「そこまで考えてなかった」と言われたりする。
わたしがレガリア(王権継承の象徴物)や神社の御神宝として、数千年の使用に耐えるヒスイ勾玉の首飾りを注文されたら、どんな素材で繋げるだろう?
 
絹紐や麻紐では耐用年数が低いから、金やプラチナなどの錆びない貴金属ワイヤーで繋げるしか選択肢はない。
 
ところが江戸期以降の考古家・好事家たちのコレクションに、金や銀のワイヤーで意匠を凝らした遺物はあっても、報告書のある出土例となるとなかなか見つからない。
写真は江戸時代に福岡県の周船寺古墳群から見つかったと伝わる、金線を勾玉に通して金鎖で繋げた古墳時代の遺物とされる唯一の例?かな。現在は重要文化財に指定されて神戸の白鶴美術館の収蔵されている。
*写真は雑誌「目の眼」からお借りした
 
ただし詳細な出土状況を調べてもわからず、もしかしたら江戸時代に見つかった後に金鎖でつなげた可能性もある訳だから、わたしはこの状態で出土したという点については留保している。
 
スピリチュアルおたくのような野次馬根性で知りたい訳ではなく、勾玉探偵としての学術的な探求だし、注文されたならどうする?という仮定で考えているのですネ。
 
天皇家に代々つたわった神器に敬意をもつことは重要だし、神秘的なモノは神秘のまま残したいという想いも強い。
 
嗚呼、遥かなり八尺瓊勾玉・・・これでいいのだ。
 
 
 

出雲型勾玉と山陰系勾玉のちがい・・・勾玉探偵の解説

2025年04月25日 07時08分18秒 | ぬなかわヒスイ工房
「出雲型の勾玉」をつくってほしいと依頼。
しかしながら「出雲型の勾玉」とは、出雲市の業者さんがつくっている現代の勾玉のことで、考古学的な勾玉の系譜にはないタイプ。
出雲市の業者さんからお借りした赤と緑のメノウの「出雲型勾玉」・・・勾玉の形は職人の美意識を反映した看板のようなものだから、わたしが真似してつくる訳にはいかず、出雲の業者さんに相談したほうがいい。
 
 
依頼者が出雲付近の遺跡から出土した勾玉のことを「出雲型勾玉」と誤認しているなら、考古学的には弥生時代後期~古墳時代中期くらいの幅の「山陰系の勾玉」のことになる。
 
たまに同じような依頼があり紛らわしいのだが、「出雲型」と「山陰系」は全然ちがうのですネ。
 
どちらなのか確認したら、出雲大社境内出土の古墳時代前期らしき赤メノウ勾玉と、弥生時代後期らしき眞名井遺跡出土のヒスイ勾玉の写真が送られてきたので、「山陰系」ということで注文を受けることになった。
現代は流通している赤メノウの大半は染めたブラジル産なのだが、色を染めてない生の赤メノウがスバラシイ。ちなみに「ぬなかわヒスイ工房」の赤メノウ勾玉は染めてない国産の生の赤メノウ製。
 
古墳時代中期の「山陰系勾玉」は、コの字形の勾玉が粗製乱造されるようになり、複製する意欲が湧かないのだが、前期までは丁寧にいい形に仕上げている。
ごぞんじ勾玉の歴史の中で最高傑作のひとつ眞名井遺跡出土のヒスイ勾玉。ただし出雲ではヒスイ加工遺跡の出土例がなく、どこでつくられたかは不明。
 
別のお客さんから「ネット検索したら、最新の研究では三種の神器の八尺瓊勾玉は、赤のメノウの勾玉と判明したんですよね!」と言われたこともあるが、知らん知らん。
 
八尺瓊勾玉の瓊という漢字は赤いという意味もあることから誕生した説だろうが、玉という意味もあるので学術的には「おおきいヒスイの勾玉」と解釈されている。
 
出土例をみても連珠(れんしゅ・首飾りのこと)の中央はヒスイ勾玉で、その他の石材は添え物的な扱いをうけているから、八尺瓊勾玉赤メノウ説の蓋然性は低い。
 
勾玉のことを調べたかったら、考古学の専門書を読みましょうねぇ。
 
 
 

お茶人の素質がある人が買ってくれる「ひょうげも」・・・即興的につくる斜めってる石笛

2025年04月04日 06時54分40秒 | ぬなかわヒスイ工房
非対称な原石の姿を活かした「斜めってる石笛」は、自分でも最後までどうなるかわからないので、つくっていてたのしい。
いちど光沢を出して線刻して、そのまま完成することもあれば、納得できずに艶消しすることもある。
完成予想図がないから、曲面をどう整合していくかは即興的。
即興とは石との対話だから、最初から設計図があるより時間がかかる。
粗製乱造されたヒスイ製石笛の何倍も手間暇をかけ、プロ演奏家が納得してくれる楽器として機能する石笛をつくってもいるから、蛇紋岩であっても安くは売れないのヨ。吹けばピー!と音がするだけの石笛なら鉛筆キャップと同じ( ´艸`)
最近は蛇紋岩なのに高いではないか!と同業者から言われることはなくなり、なんで平面研磨機でウネウネする形をつくれるの?と驚かれるが、石と対話しているうちに自然とそうなったのですネ。
 
いってみれば織部の「ひょうげもの」の石笛バージョンだから、買ってくれる人はお茶人の素質があるということになるw。
 
 

「こだわり」からの脱皮・・・蛇紋岩線刻勾玉

2025年03月31日 06時23分56秒 | ぬなかわヒスイ工房
勾玉の研究書で、幾何学模様を線刻した古墳時代の勾玉をみつけたので、ワラビ手文を線刻してみた。
素材に蛇紋岩を選んだのは線刻が目立つからと、ヒスイの流通量が激減しているので、他の素材の商品開発だ。
 
鏡面仕上げした弥生時代モデルの勾玉に線刻したら満足できず、光沢仕上げ、半艶仕上げ、艶消し仕上げと段階的に艶をおとしていったら、表面が荒れるまで艶消ししたら、自然な感じがして手触りも優しく、掘り出した遺物みたいな感じで合格。
 
しかし自然な感じって何が基準なんだろう???
 
鏡面仕上げは基本だが、鏡面仕上げこそが最上と「こだわり」になると成長は止まる。勾玉のカタチや研磨は二の次にして、ヒスイだから買ってもらえるという考え方も「こだわり」ではないか。
 
素材の価値を売りにせず、スピリチュアルな宣伝文句抜きで、作品の魅力で買ってもらえなければ、職人として未熟ということだ。
 
 
 

「ブックスサカイ」の売上に貢献して有終の美を・・・・河村好光著「ヒスイと碧玉の考古学」

2025年03月26日 07時15分44秒 | ぬなかわヒスイ工房
弥生時代のヒスイ勾玉の実態を研究した「ヒスイと碧玉の考古学」を図書館で借りて読んだら面白く、4,400円するので古本を探していた矢先に、「ブックスサカイ」の閉店を知り、長年のお礼と餞別かわりに注文したら二日で届く。
縄文中期のヒスイ大珠は単独の首飾りであったようだが、縄文晩期にはヒスイ勾玉とヒスイのナツメ玉を連ねた連珠が登場して、弥生時代にはヒスイ勾玉を中心にして青碧玉の管玉を連ねた連珠が登場するようになるから、一概に「勾玉とは!」なんていえない。
 
選書コーナーにあった「日本神話の考古学」も、三種の神器のひとつ、八尺瓊勾玉に言及しているので参考文献として購入して、しめて5,000円ちょっとの売上貢献。
 
名前は知っていても誰でも見たことがない八尺瓊勾玉は、果たして単独の勾玉なのか?それとも連珠(れんしゅ・首飾り)なのか?
 
考古学の専門家は連珠説をとる人が多いのだが、「勾玉探偵」を自称するヒスイ職人からすると、絹糸や麻紐だと1,000年もすれば腐朽しているハズで、数千年の伝承に耐える連珠なら金鎖で繋いでいるのではないか?という疑問を持っている。
 
金鎖で連ねた有名な勾玉もあるにはあるが、出土状況がつまびらかでない江戸期の連珠で、類似品は朝鮮半島では沢山あるようでも国内では1点くらいであるらしく、この辺りも調べているところ。
 
単独の勾玉である可能性も、天皇家のレガリア(皇位継承の証しの宝物)として、勾玉を身につけなくなった飛鳥時代以降に制定されたのであれば、捨てがたいので保留。
 
勾玉は時代と地域により多少はちがうにしても、基本は呪具の側面をもつお守り、権威の象徴、そして皇位継承のレガリアと変遷していったのではないか。
閉店までにはスタッフお薦めの選書コーナーだけでも完売してほしい・・・。
「ブックスサカイ」の雑誌コーナーは心なしか寂しくなっていた。
 
 
 

縄文ウズマキの転写・・・「土版を石でつくる」その2 

2025年03月15日 09時29分16秒 | ぬなかわヒスイ工房
「土版を石でつくる」その2
アウトラインの次は文様の転写だが、真上から撮影しても写真では歪みがでるし、湿式の拓本だと土版を汚すので、乾式の拓本をやってみたが、紙や鉛筆の濃さをかえてもイマイチ。
試行錯誤してたどり着いたのが、画仙紙を水張りしてクレオンでなぞる方式で、そのまま護符になりそうな出来栄え。
実物大を石でつくると重いし、研磨機に当てるにはでかすぎるので、注文主に断って80%にスケールダウンして製作。
次にプラバンでつくったテンプレートに、二つの小穴を基準点にしたグリッドを描き、石材に転写してマジックで下描き。
こういったことは美術部に在籍した高校時代に身につけた。
 
体育祭や学園祭となると、美術部員が中心になって下絵を拡大して巨大看板を描いていたので、今度はその逆に縮小した訳だ。
 
こういう仕事をしていると、高校時代の愉しい日々を思い出してヨロシイ。
 
当時も面白いことばかりでなく、高校生なりの苦労もあったハズだが、いまだに後輩たちから「あの頃は毎日お祭りみたいに愉しかったですねぇ。」と言われる。
 
当時はそうは思わなかったが、時間と共に美化されて輝きを増すのが青春というもの。嗚呼、我が青春の「スタンド・バイ・ミー」
 
 
 

ヘンな仕事ばかりくるヒスイ職人・・・ドキュメント「土版を石でつくる」その1

2025年03月14日 07時22分38秒 | ぬなかわヒスイ工房

ドキュメント「土版を石でつくる」その1


実用品ではない「第二の道具」の土製品で、土版(どばん)という縄文晩期の遺物があり、石でつくってほしいと昨年11月の依頼に取り組む。4ヶ月も前に頼まれていたのだが、体力が回復するまで待ってもらっていたのだ。

 

土版は東北を中心に関東や中部日本の遺跡から出土する亀ヶ岡文化圏の遺物で、土偶を抽象化したものと推測されている。


呪術や護符と推測された遺物で、ふたつある小穴が目のようにみえるのは、「睨みかえし」の意味があるのか、紐で吊るす用途なのか、あるいは両方の意味があるのだろうか?と観察。

観察の次は学芸員の友人知人たちから教わった勾玉の実測図形とり方法に準じて、直角定規をあてて鉛筆でプロットして、線でつないでアウトラインを写し取る。

腹部のエグリ部分に直角定規を当てにくい勾玉の実測図などは、本職の仕事でも実物とは似ても似つかないものもあるw。立体物を二次元表現するのは難しく、わたしはさらに二次元から立体物にもどす仕事をしているので、実測図と写真を見比べて補正した実測図をつくらないとダメなのですわ。

ふたつある小穴の位置は、模様の基準点にするため正確に写す。

こういった仕事を頼まれるのも、請け負うのヒスイ職人はわたしくらいだろうな・・・たのしいデスw

 


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遺物の実物大モデルで勾玉探偵ゴッコ・・・「勾玉なるもの」を臨作で学ぶ

2025年03月09日 07時15分13秒 | ぬなかわヒスイ工房
時代ごとの勾玉の典型例の実物大モデルの改訂版が完成して、やっと作品つくりに専念できるようになった。
最古級の勾玉をはじめとした有名な勾玉が、10例のうち3例も糸魚川の出土品が含まれていることを、郷土の誇りにしたい。
最初の細長い勾玉は、糸魚川市青海区の「大角地遺跡」出土の縄文早期末(6,000年くらい前)の勾玉だが、胎児形というより獣の犬歯を石でつくった牙玉(きばだま)と解釈しておきたい。
左側のちいさいのが青森市の「朝日山遺跡」出土品で、額部に段差がある典型的な縄文勾玉。右側のでかいのが糸魚川市青海区の「寺地遺跡」出土品で、額部に3本の刻みが弥生時代に丁子頭勾玉へと移行していく過程を物語っている。スリキズが残っていのは実物に似せているからで、手抜きした訳ではないw
 
 
現在つくられている勾玉は、作者の主観で「勾玉ってなんとなくこんなカタチ」といった認識でつくられているものがほとんど。
 
しかし縄文から古墳時代までの勾玉は、カタチに文化的な必然性(内実)があるので、現在の勾玉とは存在感が比べ物にならない、とわたしは思う。
 
現代人の恣意的なデザインは、わたしにはいやったらしく感じて仕方ないから、古典に学ぶことで、個性的であることへの強迫観念から脱却したいのだ。
 
この考え方は書道の臨書からヒントを得て、遺物を忠実につくる「臨作」するようになったことから生まれた。
工房ギャラリーに展示して来客に勾玉の系譜を説明している。勾玉とは!といった独善的なことは言いたくないから、「なにを連想します?」と質問しては楽しんでいる。個人の感想には正解も間違いもないから、十人十色の「勾玉なるもの」の解釈があっていい。
 
勾玉の個性は石に聴けば自ずから滲みでると、現在のわたしは考えている。
 
 
 
 

3ケ月ぶりの仕事再開で初心者になりましたゾ・・・ヲシテ文字線刻石笛

2025年03月04日 07時40分11秒 | ぬなかわヒスイ工房
謎の神代文字(?)のヲシテ文字を線刻した石笛を大至急ほしいと注文されたが、まだ大きなものをつくる体力まで回復していので、螺旋文を線刻した在庫品に線刻して納品。
二重反転螺旋を線刻した在庫品の石笛の素材は姫川薬石だ。
三文字でなんと読むのかも意味も不明w
 
個人的には神代文字に興味はないが、人を呪詛するような意味でなく、意匠として食指がうごけば、なんでもつくるから注文ちょうだいw
 
納品後に気に入ってもらえるか戦々恐々としていたら、後から喜びのメッセージを添えた菓子折りが贈られてきたので、合格したようだ。
長時間の立つ姿勢はまだ無理なので、アイフォン14proで商品撮影したら、ミラーレス一眼より姫川薬石の色が実物に近く写っているではないか!Olympus-OM1は青味が強調されるので、茶色系のブツ撮りは苦手かな。
 
もう少しボケ味が出す工夫ができたら、今後はお手軽にアイフォンで撮影するのもアリですねぇ。
 
確定申告がおわり、諸々の問題もひと段落したので3ケ月ぶりにヒスイ加工再開。作業机周辺のレイアウトを変えたらなれるまで時間がかかりそうだが、新しいステージの初心者としてがんばりマス。