デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/4月27日(日)~4月30日(水)

2008-05-01 12:28:56 | Weblog
■4月27日(日)~4月30日(水)
□高橋正子選

【最優秀】
★蒲公英の花せめぎあい光りあい/小西 宏
蒲公英が明るい日差しの中に、びっしりの咲いている様子。一つ一つの花は可憐でありながら、せめぎあうほどの花の力。せめぐだけでなく、また、互いに光りあっている。確かな目である。(高橋正子)

【特選/5句】
★雛罌粟の茎の長きを風が責む/宮本和美
雛罌粟のすっと細く長く伸びて、風にそよぎやすい。しなやかで折れそうな茎を風がいくらでも吹いて、雛罌粟をゆらす。風が責めているようだ。その光景に風と明るい日差しを感じる。(高橋正子)

★行く春の田圃余さず土起す/甲斐ひさこ
春が行くと初夏。田圃はどこも余さず土が起こされて、はやも田植えの準備が始まったのだろう。「余さず」に作者の驚きがあって、「行く春」をそのことで深く感じとっている。(高橋正子)

★一村を包み信濃の花りんご/大山 凉
林檎といえば、信濃が思い浮かぶ。一村を包んでしまうほどの林檎の花。その光景だけだが、その光景がすっきりと抽出されて、詩になっている。(高橋正子)

★子が描きしげんげ田山の麓まで/池田多津子
子どもが描いた絵のげんげ田は、山の麓までげんげ田。故郷の原風景となって、子どもの心に沁みてゆくことだろう。子どもの心をよく汲んだ句。(高橋正子)

★蛙鳴く水新しき峡の田に/吉田 晃
蛙の鳴く峡の田は、あたらしい水が引かれて、田植えの準備が始まったのだろう。新しい水を喜ぶ蛙の声に、季節の新鮮さが伝わってくる。「水新しき」でこの句が生きた。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★若葉風路地にあおあお生まれいづ/藤田裕子
露地は風の通り道。吹き抜ける薫風の有様を上手く読まれており、共感の一句です。(宮本和美)

★芦伸びるまっすぐという美しさ/古田けいじ
水辺にまっすぐに伸びる芦の美しさにとても感動されたお気持ちが伝わってまいります。名詞止めにされていることで、とても美しさが強調されていると思います。(藤田裕子)

★鉄橋を駆けるSL風薫る/國武光雄
昔よく見かけた風景、懐かしく感じました。風薫る春のロマン溢れる作品と存じます。(宮本和美)

★ポヒー咲く飛行機雲斜めに曳れゆく/祝恵子
咲くポヒーに目をむけ、見上げると飛行機雲が飛行機の跡に曳かれて行くように流れいいく有様が浮かび上がって参ります。ポヒーと飛行機雲との取り合わせ抜群。(宮本和美)

★新しき風の道あり若楓/小河原宏子
今日の夕方散歩に出かけ、新緑の爽やかな風の通る道を歩いてきましたので本当に実感として共感する句です。「新しき風」と「若楓」の季語が絶妙で、胸の中を爽やかな風が吹き抜けるようです。(かつらたろう)

★囲いたる水位監視所若葉かな/まえかわをとじ
琵琶湖でしょうか。晴天で水位監視所には人影もなく、周囲を明るい若葉が彩っています。無骨な監視所とそれを取り囲む若葉のやわらかさとの取り合わせの妙を感じます。(多田有花)

★浚渫船底よりさらう春の河/志賀たいじ
浚渫船によって、水底の土砂や岩石をさらい水深を増す春の河。豊かに水の満ちた、ゆったりとした明るい風景の中、すべてが活気付く新たな季節の躍動感も感じます。(藤田洋子)

★沖待ちの船も長閑に日が暮れる/高橋秀之
遠くに少し霞んでみえる「沖待ちの船」と作者のいる陸地とを大きく包んで日が暮れていきます。のどかな時間と大きな景に春らしさがあります。(池田加代子)

★植え替えて蓮鉢に水満々と/黒谷光子
蓮は春に植え替えるのですね。泥の中のすっきりと根を整理したあと、鉢を満々と満たす水の新しさにうれしさを感じます。(池田加代子)

★夏近く帰路の車の窓を開け放ち/堀佐夜子
肌寒さの残るころは車の窓を開けるなんて思いもよらぬことでした。走る車の窓から入る風が心地よく感じるころとなり、体も心も軽く感じられます。もう初夏を感じる風です。(池田多津子)

【入選Ⅱ/19句】
★野薊と昼一本のバスを待つ/甲斐ひさこ
ローカルな味わいのある句です。季語と中七に、春の長閑さを感じます。(飯島治蝶)

★重ね厚く咲きて嬉しき牡丹かな/河野啓一
八重咲きの牡丹がぽってりと美しく咲いたことでしょう。丹精の喜びが初夏を思わせる光とともに伝わってきます。(小西 宏)

★眩しさの木々に溢れて四月尽/あみもとひろこ
一気に木々には緑が溢れ、夏が近づいたような日差しとなりました。木々の新しい葉が眩しく光る、この季節の躍動を感じました。(高橋秀之)

★シャガ咲いて無傷の一日(ひとひ)始まれり/井上治代
朝に見つけたしゃがの花だと思いますが、清々しさを感じる花で「無傷の一日の始まり」に共感しました。(池田多津子)

★”採らないで下さい”もっこうばら黄の垣に/かつらたろう 
29日の日お天気が良いので須磨離宮公園へ行くと柔らかいなんとも言えない黄色のもっこうばらを見ました。句に詠まれているように手折りて持って帰りたいくらいに可愛い薔薇の花でした。(小河原 宏子)

★夕映えの日のあわあわと紫雲英かな/小口康與
薄紫色の紫雲英が夕日に映えて広がり、一枚の絵のような美しい光景だったと思います。(井上治代)

★自転車の少年口笛つつじ咲く/大給圭泉
道沿いに躑躅が美しく咲いている中を口笛を吹きながら少年は何処へいくのでしょう。爽やかな気持になれる好きな句です。(甲斐ひさこ)

★陽と風をまるごと呑める鯉幟/かわなますみ
初夏の明るい光とさわやかな若葉風を思う存分吸い込んで、生あるごとく勢いよく大空を泳ぐ鯉幟。作者も童心にかえって、この季節を楽しんでおられるようで、元気をいただきました。(柳原美知子)

★サクソフォン若葉の下に吹く人も/多田有花
木々の芽も伸び、さわやかな若葉のころとなっています。心地よくサクソフォンを吹くことができそうです。(池田多津子)

★メーデーに風船配る平和かな/竹内よよぎ
風船の季語がよく効いて、昨今の子供連れ、家族ぐるみのメーデーの雰囲気がよく表現されていると思いました。(志賀たいじ)

★日が差して柿の若葉の玻璃に透く/藤田洋子
平明な表現ながら何ともいえない柿若葉の美しさ活写された御句かと存じます。大変勉強になりました。(河野啓一)

★春検診幼児元気に泣きさけぶ/おくだみのる
花鳥風月もよいが、この様な日常俳句が大好きです。 若き母親と元気な幼児の姿がありありと表現された佳き句と存じます。(宮本和美)

★実桜の仰ぐ高さに光りおり/臼井愛代
ふと見上げると、みどり濃く茂り始めた葉桜の間に見え隠れして、さみどりの瑞々しい実が輝いている。初夏へと移りかわる季節を実感し、生命力を感じます。(柳原美知子)

★すかんぽに祭太鼓の音流れ/柳原美知子
すかんぽと祭太鼓のどちらにも通じる飾らない素朴さが、読者に、親しみと、何処か懐かしい感じを与える御句と思います。(臼井愛代)

★蟇の声宅地に残る田一反/上島笑子
一反だけ残った田んぼの蟇の声が、すっかり宅地となった地域にも、昔ながらの自然を思い起こさせて長閑です。(臼井愛代)

★一年生花のアーチを潜りゆく/飯島治蝶
入学式のひとこまでしょうか。満開の桜並木の下を新入生が歩いていきます。桜は門出にふさわしい花ですね。(多田有花)

★矢車やたつた四人の分校に/宮本和美
幟竿の先端に軽快な音を立て、日に輝いて回る矢車。その明るさも嬉しく、五月幟が四人の成長を見守っているようで、季節の爽やかな明るさのあふれる分校です。
(藤田洋子)

★存分に風と戯れ片栗の花/篠木 睦
山地や林間に群落を作る片栗の花。豊かな自然の中で、心地よい風とともにある可憐な片栗の花の姿が、実に清々しく美しく感じます。(藤田洋子)

★風に揺れ都わすれの五、六本/吉川豊子
順徳院が承久の乱に荷担したとして佐渡に流されたときに、この花を見て都への思いを忘れたところから「都わすれ」の名前がついたとか。風に揺れる紫の花は心慰めるものなのでしょう。「五、六本」ゆえにいっそう心に残ります。(池田多津子)


■互選高点句
□集計/臼井愛代

【最高点/6点】
★一村を包み信濃の花りんご/大山 凉
(光子・たいじ・治蝶・圭泉・泰與・啓一選)

りんごの花は写真で見るだけですが、信濃のひろびろと続く林檎園が薄紅に染まる光景を想像させていただきました。(黒谷光子)
信濃のりんごの咲く里の園、延々と続く薄紅色に染まる景を想像する丈で心が和みます。好きな句です。(志賀たいじ)
一読して、信濃の花咲くりんご畑の景を想起しました。白い可憐な林檎の花が咲き、よい香りに包まれた広々とした畑の広がり。一村を包みという表現がぴったりです。秋の収穫が楽しみです。(飯島治蝶)
良い香りの満ちて信濃の村を花りんごが覆ってる、想像しても気持ちよい景色ですね。(大給圭泉)
今の長野県の里山は桃の花と白い林檎の花とが咲き乱れて、心温まる風景をかもし出しておりますね。(小口泰與)
信州りんごの里、いいですね。山あいが遠く白く霞んで、陶然とした晩春の風情を想像しました。(河野啓一)

【次点/5点】
★野薊と昼一本のバスを待つ/甲斐ひさこ
(ひろこ・たろう・治蝶・佐夜子・泰與選)

■2008年5月伝言板■

2008-05-01 00:06:11 | 伝言板
本名でお書き込みください。匿名はご遠慮ください。
□「ネット上の議論、主張からは原則として匿名を排すべきです。匿名は身の上相談とか、ゲームとしての論争とかに限定する。/西垣通・東大教授/朝日新聞1月4日より」匿名は、俳号とは違って、自分の存在を知られたくない、という点を認識すべきでしょう。俳人や詩人は、社会的に自分の存在をはっきりしたものにしなければならないのです。(高橋信之 2000/1/9)

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■今日の俳句/5/31(土)
土佐路ゆく茅花流しに吹かれつつ/柳原美知子
「茅花流し」は、茅の花が穂になり、その絮が吹かれるようになる頃吹く風のこと。夏の季語。やさしく、詩情のある季語である。その風に吹かれて外光豊かな土佐路の、青い山や川そして海を見つつ行く旅の、安らかな楽しさが思える。(高橋正子)


■<今日の俳句>の過去一覧は、下記アドレスをクリックし、ご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/npo_suien03/

■5月の花/尾崎弦撮影

※左より:しゃがの花・二輪草・楓の花・若楓。画像をクリックしますと拡大します。

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