Storia‐異人列伝

歴史に名を残す人物と時間・空間を超えて―すばらしき人たちの物語

元祖シモネッタ・ドジ

2006-07-08 18:23:14 | 音楽・芸術・文学
『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』申し訳ない、これから読むね、米原さん、と書いたので有言実行。出合ったのが活字ではなくて映像であった。「世界・わが心の旅― プラハ・4つの国の同級生」追悼・米原万里さん、辛い言葉だ。

この本もいいのだけど、やっぱり「世界・わが心の旅」がよかった。元気な十年前だ。数年前ガン摘出、昨年再発今年急激に容態が悪化、週刊文春「私の読書日記」によれば癌治療分野の本も...
なにか、この時代の大事な宝物を深海に落としてしまったような...
どうして、このような大切な人の命をもっていかれるのですか?
僕らみたいなゴミブロガーばかりが残って!  Merda !
ボクと同じ年、彼女は短く太く生きていなくなってしまった。本当に無念である。

「嘘つきアーニャ...」のあとに出た小説「オリガ・モロソヴナの反語法」
この長編がスッバラシイ!巻末にあげられた膨大な参考文献。彼女は、この本にこれまでの蓄積を全てを出し切った...と言った。小手先の観念小説ではないもの。でも、この質量と題名では...ボクのもいつぞや古本で入手、読まれた形跡もなく。米原万里の一冊ならこれだ。すごい作家が誕生したというのに...ずっと一緒の時代に生きていて欲しかった。

スッバラシイ!...「言葉」と「言語」の奥にある、教養、感受性、人格、歴史、文化...
万理さんが書いていたブログ風小文。ある語学サイトの「通訳ソーウツ日記」から。
>>
「便利な言葉だね、スッバラシイって」「はあ?」
「だって、米原さんは、admirable も amazing も brave も brilliant も exllent も fine も fantastic も glorious も magnificent も marvelous もnice も remarkable も splendid も wonderful も必ずスッバラシイと転換する。いやでも覚えてしまうよ」
 辞書を引くと、ロシア語でも英語でも、「素晴らしい」と解釈できる形容詞が彼が列挙した分の十倍はある。それでも足りなくて、貶し言葉を反語的に使って褒め言葉に転用している。てことは、微妙なニュアンスがあって使い分けされているはず。彼らは、何かに感心感嘆しつつも、その感情を呼び起こした対象を誉め称えるのに、最も相応しい形容詞をこの豊富な語彙の中から、選び取る作業を大わらわでしているのだ。感動が嘘偽り無いものだと、自分と他人を納得させようと必死な感じさえする。極めて緊張した人間関係がかいま見える。
恐ろしいことに、こんなときに思わず口走る形容詞の選択肢の豊かさ、使用法の的確さに、感嘆した当人の教養、感受性がかいま見えると考えられているらしい。...

万理さんの家にいた柴系非純血種の名はゲンちゃん。猫も数え切れず、名前は米原家伝統の命名で最後に「リ」がつくが「無理」ちゃんはウチの「ハク」そっくりの顔、モスクワ生まれのペルシャ銀猫だけは例外的音韻「ターニャ」「ソーニャ」!
残されたほうは辛いだろうなあ。万理の犬猫本に暖かい反語法的解説を書いたアク友 Simonetta d'Oggi 田丸公美子さんも、今どうしているのであろうか。


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「嘘つきアーニャの真っ赤な真実 米原万里 角川文庫 ISBN4-04-375601-1」
「オリガ・モロソヴナの反語法 米原万里 集英社文庫 ISBN4-08-747875-0」
「ガセネッタ&シモネッタ 米原万里 文春文庫 ISBN4-16-767101-8」
「ヒトのオスは飼わないの?  米原万里 文春文庫 ISBN4-16-767103-4」
「旅行者の朝食 米原万里 文春文庫 ISBN4-16-767102-6」
「不実な美女か貞淑な醜女か 米原万里 新潮文庫 ISBN4-10-146521-5」

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