Storia‐異人列伝

歴史に名を残す人物と時間・空間を超えて―すばらしき人たちの物語

中世の秋

2007-10-28 20:18:35 | 西洋のひと/ギリシャ・ローマ
台風去って好天、秋色深し。わが町内、大きな森の公園もあって広葉樹木は華やか。
中世後期というのは秋なのか、このところ『中世の秋』という書物を眺めていた。よもやまばなしに入り込んでみると、そのなかから浮き上ってくるあの時代の雰囲気、時代の「調子」!などが、おぼろげに...

中世とは、西ローマ帝国崩壊が476年ここからとすれば、1400年代(Quatrocent)のイタリアまで千年も続いた重苦しい時代。この中世の後期には、千二百年代あたりからすでにルネサンスの萌芽が見られていた。
ルネサンスRenaissance「再生」。ヴァザーリの「美術家列伝」で、十四世紀初めから16世紀末までの時代が、初めて「ルネサンス」rinascitaという名で呼ばれた。ヴァザーリがルネサンスすなわち「再生」といったのは、古典文化の復活という意味である。ゴート、ロンゴバルド、フランクなど蛮族のもとに雌伏した中世千年ののち、ようやくラテン文化がよみがえった、というのが彼ヴァザーリの考え。
まずは、近代になりここに光を当てたブルクハルトJacob Burckhardt「イタリア・ルネサンスの文化」を先にちゃんと読むべきなのであろう。

でもひっかからずに読んだのは、藤沢先生訳 Indro Montanelliの「ルネサンスの歴史」、これは列伝のかたち。歴史記述の本道ではないなどといわれるらしいが、読み物としての面白さでは抜群。古典復興は人文主義・ヒューマニズムの一側面、この側面の代表者がペトラルカ。この本では、ダンテ、ボッカチオ、ヴィスコンティとスフォルツァ、ロレンツォとジロラモ、イル・モーロとシャルル8世、ボルジア家の人々、フス、カルヴァン、マキャベリ....

さて、「中世の秋」のことであった。
ホイジンガが日本語の文章を書くのだ、日本語ならこの言い回しを使うだろう、この意気で書かれた堀越孝一教授の素晴らしい日本語訳。先生の「解説」から、この本とオランダの歴史学者ヨーハン・ホイジンガ Johan Huizinga の「歴史」への姿勢についての部分を引用させていただく。

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中世後期という時代がどういう時代であったか、ホイジンガはそれを一般の読者に紹介しようとした。それが狙いであった。どうして中世後期という時代を選んだかは『緒言』がじゅうぶん語っている。画家ファン・アイク
Jan van Eyckヘの関心からである。つまるところ、歴史家の対象の選択は、まったく個人的な問題なのである。ファン・アイクの時代をよい形において知りたいという気持ちがかれにあり、かれはその気持ちを読者と共有したいと思った。
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後期中世という時代をよく知るには、その時代に身をおくにしくはない。ホイジンガの思考の手続の第一歩である。さて、どう身をおいたものか。その時代は、どういうかたちでわたしたちに現象するか。すでにしてファン・アイクの絵画という形でかれの眼前にあった。幼い頃の記憶に、時代風俗の仮想行列があった。貨幣や、メダルのコレクションがあった。これは、半生の記になつかしさをこめて回想しているところである。そういうイメージやものの形で、時代は現象する。

 絵の解説、これが『中世の秋』のひとつのテーマである。第二十章と二十一章の章題が、この辺の事情をあっさりと示している、いわく「言葉と絵」「絵と言葉」、言葉?、これがもう一つのテーマであり、当初の関心の枠はここに越えられた。
ファン・アイクの時代に身をおきたいという願いが、その時代の人々の言葉の蓄積にホイジンガをもぐりこませる。かれにとって、時代の現実とは、歴史空間をおおいつつむイメージと言葉の皮膜である。歴史空間は、それ自体求めて見出されるものではなく、記録のみが私たちの獲物である。これが、『中世の秋』の作業準則の第一項である。

人とその振る舞いは、その時代のもつ調子において見なければならない。これが『中世の秋』の作業準則の第二項である。その時代の調子は、その時代の記録のなかにしみとおっている。記録は時代特有の調子を帯びているのである。「生活の調子が変るとき、はじめてルネサンスはくる」(最終章の結語)後期中世の調子はまだ変っていないのである。
時代の調子に鈍感に、記録を読むにあたって、近代の思考のくせをもってすること、これを時代錯誤(アナクロニズム)という。「時代錯誤を避けること、これが歴史科学の半ばである」、ホイジンガは1930年にフランスのソルボンヌ大学で行った公開講義で語った。....

...ホイジンガは覚書を読みながら考える。わたしたち自身の常識になじむ、つじつまあわせをしているのではないか。この言葉は、今わたしたちが使う場合と同じ意味だろうか。この文脈には、わたしたちの知らない理解の規則がからんではいないか。そう自問自答するホイジンガは、いやおうなしにかれ自身に生得の思考の作法についての自覚を深めていった。『中世の秋』の作業は、『中世の秋』以後の、つまりは近代人の考えかた感じかたを認知する訓練ともなったのである。

近代以前を他者として対象化する作業が近代それ自身を対象化し、近代とは何かを知る機会ともなる。一九一九年以前の歴史学は、まだこのダイナミズムを知らなかった。
....
真正の歴史家にはついに私はなれなかった。この言をどう読むか。誇り高い近代の歴史主義に対して一歩しりぞいて構える真正のディレッタントの言と読みたい。歴史に遊ぶ精神の表白とききたい。これこそ、『ホモ・ルーデンス』homo ludensのテーマである。なぜならば、歴史における理解とは、他者性における世界の認識であって、歴史家は、仮装することによって、つまりは、自分自身を他者として対象化することによって、歴史の世界のなかで遊ぶ(ホモ・ルーデンス)ものなのである。....


Johan Huizinga (December 7, 1872 - February 1, 1945), a Dutch historian, was one of the founders of modern cultural history.



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「中世の秋(上・下) ホイジンガ著/堀越孝一訳 中央公論新社(中公文庫)ISBN4-12-200372-5, 200382-2」
「ルネサンスの歴史(上・下)I.モンタネッリ、Rジェルヴァーゾ著/藤沢道郎訳 中央公論新社 ISBN4-12-201192-2, 201193-0」
「イタリア・ルネサンスの文化(上・下)ブルクハルト著/柴田治三郎訳 中央公論新社(中公文庫)ISBN4-12-200101-3, 200110-2」
「The Lives of the Artists / Giorgio Vasari OXFORD university press ISBN978-0-19283410-2」

中世の秋〈1〉 (中公クラシックス)
ホイジンガ
中央公論新社

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みちのくYOSAKOI第10回

2007-10-06 20:17:19 | ローカルな話題
杜の都・仙台の街中で「みちのくYOSAKOIまつり」は、今日10月6日(土)、明日7日(日)。今年で第10回という、メデタシ。去年は雨にたたられたが本日は快晴、ムスコは、6年も出てるので、たまにはどれ観てやっかと。

手に「鳴子」を持って踊る、曲には「東北(地元)の民謡の一節」を盛り込む、この2つだけがルール。しかし衣装も凝って踊りのキレもすばらしいチームばかり。舞台の上でミテミテと、まあ、アッケラカンといいのではないだろか。ことしは250チーム8500人も出場ということだ、一億総踊り子の時代も、もうすぐだ!?

先月の定禅寺JAZZーFESも、そうであったが、ボランティア中心の運営、手作りで、出ている人たちも支える人たちも一生懸命、気楽に楽しんでいるところがよい。前日のゴミ拾いや街中の落書き消しなどもやったが、最近は、とんと...

今年のスペシャルゲストは、<YOSAKOIソーラン祭>大賞4連覇の札幌・「新琴似天舞龍神チーム」、秋田大館出身の民謡ROCKのカリスマ!「今Marikoシンドローム進行中」という佐藤真理子さんと、「杜の都が育んだ津軽三味線の天才」全国大会A級優勝者の仙台一高3年浅野祥君。今年メジャーデビューし、アルバム「祥風」もリリースだって。そして来年こそAクラス?、東北楽天応援団のMr,カラスコ&カラスコJAPANと東北ゴールデンエンジェルスの踊りは...

さて、わがムスコといえば、最近ずっと夜中に出てって練習なのかなんなのか朝帰り、どこのチームだっけオマエは?ケータイメールは、「FAI ALL STARS」と出演時間つきで返ってきて、なんだこりゃ?、これじゃ宮城野高校ではないか。
錦町公園に出かけてみれば、なんと80人もいて現役を上回るOB・OGの群れ、差入れの団子やお茶は「足んねェな!」。う~ん、もってきた団子の串の数と舞台の上の子をアタマのなかで数えていたら、演舞はあっという間におわってしまった。パフォーマンスは大体5分、みなさん、あちこちの会場を駆け回るのだ。
こういうのは、ちゃんとした動画像と音質で撮ってyoutube投稿、全世界でみてもらうべきなのだろうなあ...



(ケータイからはこちらで映像と音 「みちのく FOMA タウン」)
 


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「第10回みちのくYOSAKOIまつり 公式ガイドブック 2007.10 みちのくYOSAKOIまつり実行委員会」
「東北祭りイベントガイド ’07⇒’08 NTT東北電話帳 協賛:東北観光推進機構」

コメント (2)
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