「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和2年(2020)11月20日(金曜日)
通巻第6706号
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日米共同開発の迎撃ミサイル、北挑戦のICBMを迎撃に成功
北朝鮮の核の脅威に対抗というが、中国のICBMが究極の狙い
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11月17日に発表されたICBM迎撃成功というニュースを北京はどう受け止めたか?
米国軍は、イージス艦搭載型の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」がICBM(大陸間弾頭ミサイル)を迎撃した。地上配備迎撃ミサイルはGBIと呼ばれ、カリフォルニア州とアラスカ州にすでに配備されているが、艦船から発射された迎撃ミサイルの成功は初めてだった。
このSMブロック2Aが実戦配備されると、地上配備型との二段構えとなり、安全は一層確保される。メディアはこれを北朝鮮のICBMの脅威を抑制し、牽制するとしているが、米国に真の狙いは中国のICBMである。
実験はマーシャル群島のクエゼリン環礁から発射されたICBMを、ハワイ沖に展開させたイージス駆逐艦「ジョン・フィン」が衛星情報によって飛翔速度、落下予測地点などで捕らえ、迎撃したもので、横須賀の第七艦隊に配備されるという。
SMブロック2Aは米国レイセオンと三菱重工が開発してきたもので、当初はIRBM(中距離弾頭ミサイル)迎撃用だったのだ。つまり北朝鮮のノドン、スカッドの迎撃のためで、2008年頃から共同研究が進み、2017年から量産されているという。日米共同開発で唯一量産に成功した例となった。
米軍が脅威視してきたのは北朝鮮のミサイルではない。
あくまで中国であり、とくに中国が空母キラーミサイルを保有し、実験に成功したことから、ICBM迎撃能力の向上を優先課題としてきたのである。
これを承けて管首相は翌日18日、官邸で米海兵隊総司令官のバーガーと会談した。管首相は「中国が強化している一方的な現状変更の試みに深刻な懸念と強い反対の意を表す」として、自由なインド太平洋の実現に向けて日米間で継続的な連携を重ねる」と発言した。
バーガー司令官も「地域の安全が厳しさを増す状況にあり、日米の抑止力維持に向けてチームとして取り組む」と述べた。
この会談でも明らかなように北朝鮮の核の脅威より、中国の中距離弾頭ミサイルへの懸念が強いことを窺わせる。
まして中国は、この迎撃システムを突破するための新型ミサイルを開発中とされ、マッハ5以上というスーパーソニックミサイルが開発されると、これを打ち下ろせる技術がないため、日米共同の開発は新分野に突入することになる。
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