映画『いつか読書する日』
女優・田中裕子さんの哀愁漂う佇まいに引き込まれてしまいました。
どこか儚げでありながらも芯が強く凛としているところがあって素敵です。
それは内に秘める思いの強さからくるものなのでしょうか。
学生時代に事故で親を亡くしたのを境に、恋人とも疎遠となりながらもその人を思い続け、毎朝牛乳配達を、日中はスーパーのレジ打ちという仕事をする日々を繰り返す50歳独身の女性の物語です。
まるで傍から見たら自身に足枷でもしているかのような人生。
淡々と仕事している日々の中で、周囲から「一人で寂しいと思わなの?」などと散々お節介な台詞を浴びせられても、「全然。一度も寂しいなんて思ったことないし」とか「寂しいと思うなら、くたくたになるまで働けばいいだけのことよ」って、あっけらかんと返している件が悟りの境地というか格好いいです。
ちょっと、今の自分には励みになるような生き方です。
幸福の基準って、人それぞれなんだなって、改めて考えさせられました。
結末はあまりにも悲しく、人生の無常を唱えているような感じもありますが、
田中さん演じる主人公のこれまで読み上げてきたであろう本の数々が、所狭しと部屋の書棚に行儀よく並んでいる光景を見て、妙に穏やかな心地になりました。
読書とは、彼女の生活の一部であり、生きてきた証なんだな…と、思いました。
読書が人にもたらすものって、きっと想像以上に大きくて深いものなのかもしれません。
僕も読書が好きで本に囲まれた生活に幸せを感じたりしていますが、いよいよ書棚を置くスペースがなくなり整理する時期に差し掛かっています…。