表現28)We will see what we can do.(まあ、なんとかやってみるけど。)
みなさん、お久しぶりです。長いこと新作をアップせずにすみませんでした。いろいろありまして…。そのことについてはまた次回(かな?)書きたいと思います。とりあえず今回は冒頭の表現を取り上げました。読んでくださいね。よろしく!では、スタ~ト!
だいぶ昔の話しですが、日米の貿易摩擦が顕著になった時にその原因を探った結果、両国の交渉における言語の壁が大きく取り上げられたことがあります。何か相手との話しがややこしくなった時に使う日本的言い回し、「前向きに善処します」という表現が問題になったのです。みなさん、使った事あります?「ないけど、国会中継で聞いたような…。」たしかに。かなり「政治的」な表現ですね。つまり、「わかった、わかった。じゃあ、無視せずに、それなりにいろいろ考えてみるから」っていうのが本音のような表現ですね。もちろん、結果としてしっかりやる場合もあるでしょうが、それを言う時点では、「考えてみる」「結果は約束できない」というのが趣旨でしょう。
では、なぜその表現が問題になったのか?日本側はその表現を使うことで、「とにかくこの場でははっきりした答えは言えないので、とりあえず返事を曖昧にしておこう」というつもりでその表現を使い、答えを丁重に曖昧にしたわけです。少なくとも日本語的には、ネ。でも、それを聞いたアメリカ側は、「よし、なんとかするわけだな。」と期待感を持ち、結果何もしなかった日本側に、また、その対応に大きな不満を持ち、信頼関係が大きく損なわれた、というのが当時の状況だったようです。
何が言いたいか、わかりますよね?そう、問題はその英語訳にあったということです。当時その表現が実際にどう訳されたかについては定かではありませんが、頭にすぐ浮かぶのは、「前向きに」は「in a forward-looking manner」「positively」「in a positive manner」などが考えられ、「善処する」は、「handle(deal with) ~properly」「deal with(handle)~ in an appropriate manner」 あるいは、「take care of ~」なども使えますよね。では、それらを一緒にしていくらか代表的な文を作ってみると、以下のようになります。
1)We will deal with the matter in a forward-looking
manner.
2)We will deal with the matter in an appropriate manner.
3)We will deal with the matter in a positive manner.
4)We will take care of the matter in a positive manner.
さて、これらの表現は、「前向きに善処します」の持つ曖昧さ、不確実さを表現しているのか?う~ん。日本人ではわからない!ですよね。そこで、何人かのネイティブスピーカーに聞いてみました。すると!そう、僕の予想通り、特に3)と4)については、相手側にかなり期待を持たせる、肯定的意味合いが強いということがわかりました。つまり、「約束はできない」よりも「なんとかする」のニュアンスが強いということです。そして、その意味を出しているのが「positive」という単語。実は「positive」は、一語で「わかった/イエス」という意味に使われることもあります。例えば、「Are you sure about that?(ほんとにそれは間違いないの?)」に対して、「Positive.(もちろん。)」といった具合です。
さらに興味深いお話。実は数名のネィティブスピーカーにこの話をして上の文章について聞くと、1)から4)の文章、もちろん、文法的に間違いはないのですが、使わない、というのです(おや!)。じゃあ、どんな言い方をするのかというと…。答えが肯定的な場合は、「take positive action」(前向きの行動を取る)という表現を使い、「I will take positive action regarding the matter.」といったような言い方をするとのこと。そのため、「positive」(「in a positive manner」にあるような)という語を聞くと、「positive action」が想起され、人によっては完全に肯定的表現と理解してしまうだろうと言うのです。「じゃあ、当時の外務省の通訳者が使った表現は、ひょっとしたら、3か4?」そう、少なくとも「positive」なる単語を使った可能性が大のような気がしますね。もし、1)、2)に類する表現なら、日本的(?)なため、その意味がはっきりわからないので、さらに突っ込んで聞いてきたはずですから。「なぁるほど~、それで、約束したのに履行しなかったって騒いだわけね。」そんな感じだったのではないでしょうかね~。もちろん、あくまで僕の推測の域を出ませんが…。
前置きが長くなりました。では、英語では日本語の「前向きに善処する」にあたる表現はないのか?お待たせしました!その日本語にあたると思われる表現が、冒頭の「(We) will see what (we) can do.」なのです。直訳すると以下のようになります。
「We will see」→「私たちはそのうちわかるだろう」
「what we can do」→「私たちができることを」
「We will see what we can do.」→「私たちは、私たちが出来ることをそのうち知ることになるだろう」→「ま、そのうち何ができるかわかるだろう」→「やってはみるけど、結果はあとになってみなければわからないね」→「まあ、なんとかやってみるけど(保証はできないよ)」
どうですか、「前向きに善処する」にかなり近いでしょ?この表現は、話し相手に配慮して「ヘルプはしてあげるけど、結果は保証できないよ」という気持ちを表す、かなり、社交的な(?)表現と言えます。その言葉を聞いた人は、「ま、とにかく何かしてくれるみたいだから、期待せずに待っておこう」という気持ちになり、その場はとにかく落ち着くことに。そして、結果は後になってみないとわからない、あるいは、どちらかというと否定的と理解するわけです。もし、前述の外交交渉でこの表現を使っていたら、あんな摩擦は起こらなかったかも知れませんね。でも、この表現はかなり英語的なので、あの頃の通訳にそれを求めるのはちょっと酷かも知れませんが…。これを読んでいる皆さんはもう大丈夫ですよね。「わかった、わかった。じゃあ、何ができるかわからないけど、何かやってみるよ。だけど、期待しないでね。」って気持ちになったらどう言うのか?そう、「I will see what I can do」ですよね。では、会話でその使い方を確認してください。
おっと!字数の関係で、今回はこれ以上書けないみたいです。会話は明日アップしますので、お楽しみにね。面白いですよ。では!nao(N.N.)(C)2007
みなさん、お久しぶりです。長いこと新作をアップせずにすみませんでした。いろいろありまして…。そのことについてはまた次回(かな?)書きたいと思います。とりあえず今回は冒頭の表現を取り上げました。読んでくださいね。よろしく!では、スタ~ト!
だいぶ昔の話しですが、日米の貿易摩擦が顕著になった時にその原因を探った結果、両国の交渉における言語の壁が大きく取り上げられたことがあります。何か相手との話しがややこしくなった時に使う日本的言い回し、「前向きに善処します」という表現が問題になったのです。みなさん、使った事あります?「ないけど、国会中継で聞いたような…。」たしかに。かなり「政治的」な表現ですね。つまり、「わかった、わかった。じゃあ、無視せずに、それなりにいろいろ考えてみるから」っていうのが本音のような表現ですね。もちろん、結果としてしっかりやる場合もあるでしょうが、それを言う時点では、「考えてみる」「結果は約束できない」というのが趣旨でしょう。
では、なぜその表現が問題になったのか?日本側はその表現を使うことで、「とにかくこの場でははっきりした答えは言えないので、とりあえず返事を曖昧にしておこう」というつもりでその表現を使い、答えを丁重に曖昧にしたわけです。少なくとも日本語的には、ネ。でも、それを聞いたアメリカ側は、「よし、なんとかするわけだな。」と期待感を持ち、結果何もしなかった日本側に、また、その対応に大きな不満を持ち、信頼関係が大きく損なわれた、というのが当時の状況だったようです。
何が言いたいか、わかりますよね?そう、問題はその英語訳にあったということです。当時その表現が実際にどう訳されたかについては定かではありませんが、頭にすぐ浮かぶのは、「前向きに」は「in a forward-looking manner」「positively」「in a positive manner」などが考えられ、「善処する」は、「handle(deal with) ~properly」「deal with(handle)~ in an appropriate manner」 あるいは、「take care of ~」なども使えますよね。では、それらを一緒にしていくらか代表的な文を作ってみると、以下のようになります。
1)We will deal with the matter in a forward-looking
manner.
2)We will deal with the matter in an appropriate manner.
3)We will deal with the matter in a positive manner.
4)We will take care of the matter in a positive manner.
さて、これらの表現は、「前向きに善処します」の持つ曖昧さ、不確実さを表現しているのか?う~ん。日本人ではわからない!ですよね。そこで、何人かのネイティブスピーカーに聞いてみました。すると!そう、僕の予想通り、特に3)と4)については、相手側にかなり期待を持たせる、肯定的意味合いが強いということがわかりました。つまり、「約束はできない」よりも「なんとかする」のニュアンスが強いということです。そして、その意味を出しているのが「positive」という単語。実は「positive」は、一語で「わかった/イエス」という意味に使われることもあります。例えば、「Are you sure about that?(ほんとにそれは間違いないの?)」に対して、「Positive.(もちろん。)」といった具合です。
さらに興味深いお話。実は数名のネィティブスピーカーにこの話をして上の文章について聞くと、1)から4)の文章、もちろん、文法的に間違いはないのですが、使わない、というのです(おや!)。じゃあ、どんな言い方をするのかというと…。答えが肯定的な場合は、「take positive action」(前向きの行動を取る)という表現を使い、「I will take positive action regarding the matter.」といったような言い方をするとのこと。そのため、「positive」(「in a positive manner」にあるような)という語を聞くと、「positive action」が想起され、人によっては完全に肯定的表現と理解してしまうだろうと言うのです。「じゃあ、当時の外務省の通訳者が使った表現は、ひょっとしたら、3か4?」そう、少なくとも「positive」なる単語を使った可能性が大のような気がしますね。もし、1)、2)に類する表現なら、日本的(?)なため、その意味がはっきりわからないので、さらに突っ込んで聞いてきたはずですから。「なぁるほど~、それで、約束したのに履行しなかったって騒いだわけね。」そんな感じだったのではないでしょうかね~。もちろん、あくまで僕の推測の域を出ませんが…。
前置きが長くなりました。では、英語では日本語の「前向きに善処する」にあたる表現はないのか?お待たせしました!その日本語にあたると思われる表現が、冒頭の「(We) will see what (we) can do.」なのです。直訳すると以下のようになります。
「We will see」→「私たちはそのうちわかるだろう」
「what we can do」→「私たちができることを」
「We will see what we can do.」→「私たちは、私たちが出来ることをそのうち知ることになるだろう」→「ま、そのうち何ができるかわかるだろう」→「やってはみるけど、結果はあとになってみなければわからないね」→「まあ、なんとかやってみるけど(保証はできないよ)」
どうですか、「前向きに善処する」にかなり近いでしょ?この表現は、話し相手に配慮して「ヘルプはしてあげるけど、結果は保証できないよ」という気持ちを表す、かなり、社交的な(?)表現と言えます。その言葉を聞いた人は、「ま、とにかく何かしてくれるみたいだから、期待せずに待っておこう」という気持ちになり、その場はとにかく落ち着くことに。そして、結果は後になってみないとわからない、あるいは、どちらかというと否定的と理解するわけです。もし、前述の外交交渉でこの表現を使っていたら、あんな摩擦は起こらなかったかも知れませんね。でも、この表現はかなり英語的なので、あの頃の通訳にそれを求めるのはちょっと酷かも知れませんが…。これを読んでいる皆さんはもう大丈夫ですよね。「わかった、わかった。じゃあ、何ができるかわからないけど、何かやってみるよ。だけど、期待しないでね。」って気持ちになったらどう言うのか?そう、「I will see what I can do」ですよね。では、会話でその使い方を確認してください。
おっと!字数の関係で、今回はこれ以上書けないみたいです。会話は明日アップしますので、お楽しみにね。面白いですよ。では!nao(N.N.)(C)2007