IEEEとはアメリカの電気学界である。そのIEEEのウェブサイトにナノダイナマイトという表題の記事が載っていた。掲載されていた図は、ナノチューブに燃料を付着させておき、その右端を燃焼させ燃焼が伝搬している様子である。数センチの長さのカーボンナノチューブが得られていることを考えると、魅力的な図である。
その冒頭に「昨今のテクノロジーの最大のチャレンジはエネルギー貯蔵の改善だ」とある。エネルギー貯蔵とダイナマイトとの関連は? 研究を進めているのはアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者である。
もともとのアイディアはカーボンナノチューブの表面に燃料を付着させることによって、極めて高い燃料密度を得ることが出来ることにある。この燃料を燃焼させてカーボンナノチューブ内に電流が発生すると、燃料密度の高い蓄電池が得られるはずである。カーボンナノチューブは空気中で1000℃以上に加熱しても安定だ。したがって繰り返し使用が可能である。
問題は如何にして電圧を取り出すかである。カーボンナノチューブの一端を加熱して燃焼させると、燃焼はナノチューブの表面の燃料に沿って伝搬する。燃焼によってカーボンナノチューブが加熱されるが、加熱による温度上昇が燃焼よりも速やかに伝搬することが明らかにされている。このカーボンナノチューブの温度上昇が燃焼を誘発し、燃焼がきわめて速やかに伝搬する。このためカーボンナノチューブ内に高い温度差が生じそれによって電流が発生するという。
今のところ満足すべき結果が得られていないようだ。温度差で電流を発生するのでは、高い効率が得られるとは思われない。ナノダイナマイトの他の使い方がないものだろうか。ナノ粒子には色々な利用法がある一例として紹介しておこう。