IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

プラシーボ効果:実践編

2006-09-08 14:57:12 | エンターテーメント・カルチャー
フィラデルフィア・フィリーズのライアン・ハワード選手。この前のブログでも少し紹介したメジャー2年目のスラッガーは、今期の年棒が35万5000ドル(ESPN調べ)で、1ドルを116円で計算しても「僅かに」4118万円ほどだ。そのハワード選手が8日夜に行われた対マーリンズ戦で第54号ホームランを放っている。これで打点を135にまでのばしたハワード選手、本塁打と打点の2部門でダントツの首位だ。今シーズン、フィリーズに残された試合数はあと22。フィリーズがプレーオフに進出する可能性もまだまだ残っているし、ハワード選手の本塁打数と打点にも注目したい。8月に14本塁打と41打点を記録したハワード選手は今月も絶好調で、すでに5本のホームランを放っている。60本を目標とせず、行ける所まで行ってほしいものです。さて、今日は10日にABCで放送されるドラマの内容をめぐって、クリントン政権のメンバー達が激怒しているというニュースを。

米ABCテレビは9月10日から2夜連続で911テロ事件をテーマにしたミニシリーズを放送するが、ドラマで描かれているるテロ事件以前のアメリカ外交に対して、クリントン政権時の閣僚達からは「事実と大きく異なっている」と批判が噴出している。『911までの道のり』と題された今回のドラマは制作費4000万ドルを投じ、主演をつとめるのがベテラン俳優のハーベイ・カイテルという話題作でもあるが、クリントン政権時の対テロ政策のずさんさが描かれてもおり、その内容がかなり脚色されたものだという指摘が少なくない。クリントン政権で国務長官をつとめたマデリン・オルブライト氏や国家安全保障担当補佐官だったサンディ・バーガー氏らは先週、ABCのロバート・アイガーCEOに対して書簡を送り、その中でドラマの内容に懸念を示していることを伝えるとともに、「問題の部分を編集するか、放送そのものを中止してほしい」と求めている。ABCは7日午後に声明を発表し、「編集作業は現在も続いており、ここで批判を行うのは無責任であり時期尚早だ」と反論している。

クリントン元大統領の広報官をつとめるジェイ・カーソン氏はMSNBCの取材に対し、「ABCとディズニーは今回のドラマが完全なフィクションだと認識しており、その内容は911委員会の調査報告書などの内容と大きく異なるものなのです」という声明を発表している。「伝統や実績のあるテレビ局が利益を追求する目的で、911事件をドラマ化するのはいかがなものでしょうか」。カーソン氏は声明の中でABCをそう批判した。10日から2夜連続で放送される『911までの道のり』だが、ABCは911委員会の報告書や関係者からのインタビューをもとにして作られたドラマだと説明している。先週、ABCのロバート・アイガーCEOに対して連名で書かれた書簡は、ドラマの中に事実とは異なる内容のエピソードが含まれていると指摘している。ドラマの中ではアフガニスタン空爆の直前にパキスタン政府に対して警告を発するオルブライト元国務長官の姿も描かれている模様で、このシーンについてオルブライト氏自身は書簡の中で、「でたらめであり、私自身の名誉を損なうものだ」と語っている。

前出のバーガー氏もドラマでは描かれており、CIA高官から出されたオサマ・ビンラディン氏攻撃のリクエストをバーガー氏が許可しなかったシーンが存在する。このシーンに対してバーガー氏は、「いくらドラマとはいえ、このような脚色が正当化される理由は存在しません」と書簡の中で語っている。オルブライト氏らとともに書簡を作成したクリントン財団のブルース・リンゼー代表は、『911までの道のり』の中でクリントン政権がテロの脅威にそれほど関心を示していなかったように描かれていると指摘し、「ドラマの製作者らによる歴史の書き直しが、何百万ものアメリカ市民に間違った情報を与える事になる」と書簡で語っている。2夜連続で放送される『911までの道のり』は合計で5時間にも及ぶ長編となっており、ABCは今回の作品をコマーシャルをはさまずに放送する予定だ。主演のハーベイ・カイテルのほかに、パトリシア・ヒートンやドニー・ウォルバーグらも出演する。

アメリカで生活したり、旅行で訪れた経験のある人なら分かると思うけど、この国ではカフェイン抜きコーヒーを飲む人が本当に多くて、「コーヒーはカフェイン抜きに限る」と世界中の珈琲愛好家が聞いたら卒倒してしまいそうな事を平気で言う人が本当にいたりするのだ。昨日の夜、僕は仕事のあとで友人とあるレストランで食事をした。そのレストランはウェイターやウェイトレスの動きが全国平均をはるかに下回るスローさで知られているんだけど(嘘だと思うなら、ここで食事をしたあとで、マンハッタンのレストランに行ってみてください。ビデオを3倍速で見ているような錯覚に陥るので!)、昨日の食事のあとでカフェイン嫌いの友人がカフェイン抜きのコーヒーを頼んだ。ところが、30分たってもコーヒーが出てこず、イライラし始める友人。それから間もなく、コーヒーは出てきたんだけど、どう見ても普通のコーヒーを水で薄めたような色だった。カップの中のコーヒーの色を見た瞬間に、僕は「絶対にカフェイン抜きのコーヒーを面倒くさがって作らなかったんだ」と確信したんだけど、友人は美味しそうにそのコーヒーを飲んでいた。「プラシーボ効果」なんて言葉があるけど、あのコーヒーは絶対にカフェイン抜きじゃなかったと僕は思っている。


写真:7日の試合で54号ホームランを放ったフィラデルフィア・フィリーズのライアン・ハワード選手 (AP通信より)