音楽の森とタイニーハウス

茨城県山間部のログハウス&音楽研修施設

森林整備用品-その1

2011-10-30 | 山林の道具と打ち刃物
ログ裏の森林整備に使っている道具類。
今回は鉈(ナタ)類の紹介。

上の横置きのモノは「鉈鎌=なたがま」文字通りナタとカマの
ハイブリッドで、ツル類を切るのが得意。しかしけっこう危険な
道具で、長さが中途半端なので加速して振り下ろすと先端の刃が
自分のひざ頭に当たる。昔の農民は武器にも使用していたらしく、
ほとんど殺人ウエポン。滑ると怖いので自転車用のゴムチューブを
細く切って巻きつけている。

縦置き左から「泊鉈=とまりなた」先日紹介済み。森林作業では
不可欠なもので、最強かつ最適な道具。長い間に進化しこのような
形状に至っていると思う。重量と刃のアールが微妙にマッチング
して、かなりの太さの灌木が一振りでズバッと切れる。振りかざすと
やる気満々となるわけだが、先端の形状もあって不安は少ない。

2番目は両刃の「腰鉈」よくある形状だがまだテスト中。ヒノキの
枝打ちで使用してみたいが、ちょっと馴染めないかも。

その右は「うなぎ鉈」これも鉈鎌の仲間だが、携行に便利なので
後述の手鋸(のこぎり)とペアにして鞘=ケースに差し、腰に下げて
山を歩いている。山林関係の方々は「二丁差し」と呼んでいる形態。
先端の曲がり刃がツル切りにたいへん便利。

次は片刃の古い鉈。岩間の栗の家骨董市で購入。トップヘビーで
刃渡りも短め。バランスがよい鉈です。切り倒した木の枝払いに
使ってますが、鋼が硬く俗に言う「蛤刃」なので、思ったように
研げないことが難点。地元の打刃物店に研いでもらう予定。

一番右は「手鋸」ようするに携帯用の鋸で柄の部分が曲がっている
ことが特徴。特に高価なものではないが良く切れる。

※このような伝統的打刃物でも不用意に車に積んでおくと
銃刀法違反になるらしい。よって山小屋常設です。

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■刃物考

そういえば子供の頃は薪風呂だった。ナタで薪を割っていた。
刃が長方形の関東ナタ(東型)だった。当時はいたって日常的なことで
気軽に木片を割いていた。いま都会でナタを振り回したら即逮捕になる
わけで、子供たちも危険だという理由からほとんど刃物を持ったことが
無いという。なにか大切な感覚が失われているような気がしてならない。

山中で刃物を使っていると程よい緊張感があって野生の血が騒ぐ。
と同時に不思議な冷静さが自分を包みこんでいく。山林は常に危険と
隣り合わせなので、刃物を持つとますます感覚がますます鋭敏になってくる。
よく切れる刃物を手にすることは、オルタードステイツ(変性意識)への
入り口であり、生命力を鼓舞するある種の媒体とも考えられる。

都会のナイフマニアも日本刀フリークもそのような感覚を得るため
刃物を収集し愛でる。それで何かを切る必要はない。夜中にナイフを
手にし自分の意識を高揚させる。おのれの命を再確認しているわけだ。

普通の人が唐突に刃物を手にした際、こういった感覚に加えて攻撃性が
目覚めてしまうこともある。例の連続無差別事件も幼少期に刃物を十分に
扱った経験がないため、いったん刃物を持たせると意識コントロールが
制御不能となり、生活用品としてのそれが凶器となってしまう。

そういった意味でも日常的に刃物を使う生活を取り戻す必要があるのでは
ないだろうか。料理の包丁よりもう少しワイルドな刃物使いができる場所
が欲しい。もちろん大人にも子供にも必要だ。キッザニアにも「林業」や
「森林ボランティア」があっても良いだろう。

以前通っていた大学の授業で、鹿島神流の武道実技を取っていた。ある日先生
が学生たちの前で日本刀の抜刀を演武するという。学生たちは興味本位で
すこしざわついていた。やがてその刀身がぬらりと腰から抜かれた刹那、まったく
無言になった。至近距離で抜かれた日本刀を前に、みな一瞬にして「死」
を意識した。生まれて初めてのことで隙をつかれたように息をのんだ。
それを感じ取った先生は、その微妙な静寂のなかで押し殺したようにこう言った。

“みなさん… これが 『真剣にやる』 ということです”