春秋 日本経済新聞

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　欧州の社会が中世からルネサンスへと移っていく様子は極めてゆったりしていた。オランダの歴史家ホイジンガが「中世の秋」の締めくくりの章に書いている。あるとき突然、人々が何か悟ったかのように、ギリシャ・ローマの古典古代に回帰したわけではないのだと。
　登場したころの人文主義は博学を重んじる中世の伝統と見分けがつきにくかった。儀礼を重視する貴族社会にもときおり、敬虔（けいけん）な文言を描いた帯をつけずにいる者が現れるが、不興を買って目立たない。一つ一つが近代の幕開けにつながる動きだった。だが中世の空気の中で、当時の人たちが変化を感じるのは難しかった。
　じつは大きな変化が起きているのだが、はっきりとは、とらえにくい。時代を超え、今も往々にしてみられることだ。産業界では例えばシャープ。業績悪化の原因の一つは新興国企業の技術革新をつかめなかったことだろう。スマートフォン向けなど中小型液晶の好調は続かず、屋台骨の液晶部門は荒療治を迫られている。
　ドイツでは工場、取引先、顧客などを通信技術で結んで、生産効率を大幅に高める改革が進む。蒸気機関、大量生産、コンピューターによる自動化に続く「第４次産業革命」ともいわれる。が、何が進行中なのか把握し切れていない日本企業は多い。ぜひ注視したい。欧州はルネサンスなど大変革を起こしてきたのだから。