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一夜で村が消える。数家族が集団で蒸発する。田畑の耕作をやめ、家屋敷を捨てる。都会に出て、雇われ仕事に就く。あとには、荒れた土地が残る。中世から江戸末期まで、農村で見られた逃散(ちょうさん)の光景だ。重税に苦しみ、凶作や飢饉(ききん)などで追い詰められての行動だった。
最近の研究によると、年貢が軽いなどの好条件や豊かな生活を求めての移住「走り」も多かったらしい。大事な労働力が減ると、収入も減る。藩主や領主は、来る者を年貢軽減などで積極的に迎え入れ、去った者はどこまでも追いかけた。返すように他の領主とも交渉したという(宮崎克則著「逃げる百姓、追う大名」)。
いまは民主主義の世の中だ。自分たちの手で知事や市長を選べる。政策も変えられる。住民は逃散や走りなどの行動にでなくてもすむ。だが、町や村はゆっくりと消えていく。少子化などで人口が減少しているからだ。将来は、日本の市区町村の半数が消滅する可能性があるとの試算もある。地方経済の疲弊も進んでいる。
事態を変えるはずの政治が劣化している。知事、市長は多選が多く議員はなり手が少ない。統一地方選は好機だが、最近の投票率は5割前後と関心が薄い。1947年4月の第1回は7割を超えていた。占領下、自治への期待が大きかったのだろう。自ら地域に活力を取り戻す。その思いを込めた一票を今日こそ投じたい。
一夜で村が消える。数家族が集団で蒸発する。田畑の耕作をやめ、家屋敷を捨てる。都会に出て、雇われ仕事に就く。あとには、荒れた土地が残る。中世から江戸末期まで、農村で見られた逃散(ちょうさん)の光景だ。重税に苦しみ、凶作や飢饉(ききん)などで追い詰められての行動だった。
最近の研究によると、年貢が軽いなどの好条件や豊かな生活を求めての移住「走り」も多かったらしい。大事な労働力が減ると、収入も減る。藩主や領主は、来る者を年貢軽減などで積極的に迎え入れ、去った者はどこまでも追いかけた。返すように他の領主とも交渉したという(宮崎克則著「逃げる百姓、追う大名」)。
いまは民主主義の世の中だ。自分たちの手で知事や市長を選べる。政策も変えられる。住民は逃散や走りなどの行動にでなくてもすむ。だが、町や村はゆっくりと消えていく。少子化などで人口が減少しているからだ。将来は、日本の市区町村の半数が消滅する可能性があるとの試算もある。地方経済の疲弊も進んでいる。
事態を変えるはずの政治が劣化している。知事、市長は多選が多く議員はなり手が少ない。統一地方選は好機だが、最近の投票率は5割前後と関心が薄い。1947年4月の第1回は7割を超えていた。占領下、自治への期待が大きかったのだろう。自ら地域に活力を取り戻す。その思いを込めた一票を今日こそ投じたい。