イ・ムジチ合奏団といえば、とりわけヴィヴァルディ作品の演奏の代名詞として今も多くの人に認知されている。その筆頭が “ 四季 ” だが、他にも僕が強く愛着を抱いている演奏がある。
それは、
協奏曲 ホ短調 “ お気に入り ” RV.277
協奏曲 ホ長調 “ 安らぎ ” RV.270
協奏曲 ハ短調 “ 疑い ” RV.199
協奏曲 ニ長調 “ 不安 ” RV.234
協奏曲 ホ長調 “ 恋人 ” RV.271
の、副題付きのヴァイオリン協奏曲である。
これ等は、まだステレオ録音技術が産声を上げて間もない1958年1月に録音された、非常に貴重な演奏である。
現在も毎週日曜日に放送されているNHK-FMの番組《20世紀の名演奏》で初めてこの演奏を耳にした時(10年位前だったか?)、その弦の丸みを帯びた、そして一等艶やかな響きに心奪われ、運良く録音していたテープを何度も何度も繰り返し聴いたものだ。
例えば古楽器(オリジナル楽器)で鋭利に奏でられたり、もしくは疾風怒濤に捲くし立てられるものとは正反対で、まろやかで匂い立つ様な気配と一糸乱れぬ合奏能力の高さはこうして文章で評する事が無意味に思われる程だ。特に “ 疑い ” & “ 安らぎ ” & “ 恋人 ” に関しては、各々の作品世界と芳醇な香りが相俟って、ただただ素晴らしいの一言に尽きる。
番組内ではレコードを流していたので、CDでは入手しにくいのかとずっと諦めていた。そうして何年も過ぎた頃、滅多に立ち寄らない秋葉原の店で全く同じ内容のCDを見つけた時は喜び一入だった。
1952年4月、イタリアのラジオ放送用にリハーサルしているイ・ムジチを聴いたアルトゥーロ・トスカニーニが、ジャーナリストや音楽界の人々の前で彼等について熱っぽく語り、自らの写真に
「素晴らしい!絶品だ!まだ音楽は死んでいなかった!」
という言葉を寄せて彼等に贈ったという逸話や、単純に
「世界一美しい室内合奏団だ!」
と絶賛した事は有名だが、正に結成当時しばらくは、こうした賛辞に異を唱える輩はいなかったであろう。
初代コンサート・マスターのフェリックス・アーヨ以降、そこに座する者は目まぐるしく変化を遂げてきたが、《20世紀の名演奏》で司会の黒田恭一が口にしていた通り、アーヨの率いていた時代こそ間違いなくこの合奏団の一番煌めいていた時だろう。
実を言えば、イ・ムジチは1993年7月に同5曲+1曲を1枚のCDに再録音している。コンサート・マスターはマリアーナ・シルブ。しかしどの曲もフレーズが短く切られていて、作品自体が上手く呼吸できていなく、あたかも苦しげに喘いでいるようだ。イ・ムジチの音色も乾いたものになってしまっている。先に述べた1958年演奏の輝きには、到底及ばない。
更に付け加えるならば、これ等5曲は他の演奏団体も録音している(種類は少ない)が、やはり間違いなく、結成間もないイ・ムジチこそトップに位置する名演である。この合奏団のこの時期に奏でられたものを聴いて初めて、その醍醐味を存分に味わえると断言していい。
恐らくレコードの方が一層馥郁たる空気を伝えているだろうから、いつかもっと歳を経た晩秋の日にでも聴いたら、回転するレコードを見ながら若き日々を懐かしく思い出すのに一役買ってくれるのかもしれない。
とにもかくにも、この演奏がステレオで録音された奇跡に深く感謝したい。
画像は、昨年の演奏会のチラシで使われたもの。
それは、
協奏曲 ホ短調 “ お気に入り ” RV.277
協奏曲 ホ長調 “ 安らぎ ” RV.270
協奏曲 ハ短調 “ 疑い ” RV.199
協奏曲 ニ長調 “ 不安 ” RV.234
協奏曲 ホ長調 “ 恋人 ” RV.271
の、副題付きのヴァイオリン協奏曲である。
これ等は、まだステレオ録音技術が産声を上げて間もない1958年1月に録音された、非常に貴重な演奏である。
現在も毎週日曜日に放送されているNHK-FMの番組《20世紀の名演奏》で初めてこの演奏を耳にした時(10年位前だったか?)、その弦の丸みを帯びた、そして一等艶やかな響きに心奪われ、運良く録音していたテープを何度も何度も繰り返し聴いたものだ。
例えば古楽器(オリジナル楽器)で鋭利に奏でられたり、もしくは疾風怒濤に捲くし立てられるものとは正反対で、まろやかで匂い立つ様な気配と一糸乱れぬ合奏能力の高さはこうして文章で評する事が無意味に思われる程だ。特に “ 疑い ” & “ 安らぎ ” & “ 恋人 ” に関しては、各々の作品世界と芳醇な香りが相俟って、ただただ素晴らしいの一言に尽きる。
番組内ではレコードを流していたので、CDでは入手しにくいのかとずっと諦めていた。そうして何年も過ぎた頃、滅多に立ち寄らない秋葉原の店で全く同じ内容のCDを見つけた時は喜び一入だった。
1952年4月、イタリアのラジオ放送用にリハーサルしているイ・ムジチを聴いたアルトゥーロ・トスカニーニが、ジャーナリストや音楽界の人々の前で彼等について熱っぽく語り、自らの写真に
「素晴らしい!絶品だ!まだ音楽は死んでいなかった!」
という言葉を寄せて彼等に贈ったという逸話や、単純に
「世界一美しい室内合奏団だ!」
と絶賛した事は有名だが、正に結成当時しばらくは、こうした賛辞に異を唱える輩はいなかったであろう。
初代コンサート・マスターのフェリックス・アーヨ以降、そこに座する者は目まぐるしく変化を遂げてきたが、《20世紀の名演奏》で司会の黒田恭一が口にしていた通り、アーヨの率いていた時代こそ間違いなくこの合奏団の一番煌めいていた時だろう。
実を言えば、イ・ムジチは1993年7月に同5曲+1曲を1枚のCDに再録音している。コンサート・マスターはマリアーナ・シルブ。しかしどの曲もフレーズが短く切られていて、作品自体が上手く呼吸できていなく、あたかも苦しげに喘いでいるようだ。イ・ムジチの音色も乾いたものになってしまっている。先に述べた1958年演奏の輝きには、到底及ばない。
更に付け加えるならば、これ等5曲は他の演奏団体も録音している(種類は少ない)が、やはり間違いなく、結成間もないイ・ムジチこそトップに位置する名演である。この合奏団のこの時期に奏でられたものを聴いて初めて、その醍醐味を存分に味わえると断言していい。
恐らくレコードの方が一層馥郁たる空気を伝えているだろうから、いつかもっと歳を経た晩秋の日にでも聴いたら、回転するレコードを見ながら若き日々を懐かしく思い出すのに一役買ってくれるのかもしれない。
とにもかくにも、この演奏がステレオで録音された奇跡に深く感謝したい。
画像は、昨年の演奏会のチラシで使われたもの。
ただ、ミイさんが想像された喫茶店は、正に我が家近くにあるクラシック喫茶そのものです!椅子はビロードではないけれど、いつか一緒に行きましょうね♪
ところで、ヴィヴァルディ好きの人でないとこの5曲はほとんど聴く機会がないでしょうね。とても魅力に溢れた佳品ばかりです。副題は作品世界そのものですしね。これ等5曲が、僕がヴィヴァルディを好きになった決定的要因ですよ☆
>バロック時代の曲って一見風変わりなタイトルがつけられていることが多いけど、隠された意味やイメージが想像をかき立てますよね。
本当に、そうですね。だからバロック音楽は病み付きになります。
このブログのデザインにも合っていて、ちょっと贅沢で渋い大人の色を感じます。
なんというか、薄暗いクラシック喫茶で(椅子はビロード!)コーヒーを飲みながらゆったりとLPレコードを聴くような…
ところで、恥ずかしながらあげられた演奏も曲も知りませんでした。
タイトルが、とても興味をそそります。
バロック時代の曲って一見風変わりなタイトルがつけられていることが多いけど、隠された意味やイメージが想像をかき立てますよね。