揺れるロウソクの向こうに
ピアノを弾くあなたの影が見える
二時を過ぎても眠れぬ私のために
あなたは俯いたまま
バッハを奏でてくれる
吐息は月を隠し
群青やら青紫色に縁どられたメロディーが
静けさを嘆くように
仄かに香る
旋律は幾重ものカーテンとなって
あなたと私とを遠ざけては
また透かしてみせる
揺らめく炎はあなたの影を刻み
その心臓に
音を失ったメトロノームを植え付ける
バッハだけがこの部屋の看守なのだ
古の旋律の行方は泉の中でも
月の昇った丘の上でもない
楽譜と共に
作曲した主の森へと帰るだけだ
バッハを弾き終えたあなたは楽譜を開いたまま
ピアノもそのままに立ち去った
何かの焦げる気配だけが鍵盤を滑る
馬車が迎えに来たのだ
彷徨い人を乗せた馬車が
森を燃やしながら迎えに来たのだ
風に楽譜がはためいて
ロウソクの炎が移っていた
私の瞳に
あなたの影法師が写っていた
ピアノを弾くあなたの影が見える
二時を過ぎても眠れぬ私のために
あなたは俯いたまま
バッハを奏でてくれる
吐息は月を隠し
群青やら青紫色に縁どられたメロディーが
静けさを嘆くように
仄かに香る
旋律は幾重ものカーテンとなって
あなたと私とを遠ざけては
また透かしてみせる
揺らめく炎はあなたの影を刻み
その心臓に
音を失ったメトロノームを植え付ける
バッハだけがこの部屋の看守なのだ
古の旋律の行方は泉の中でも
月の昇った丘の上でもない
楽譜と共に
作曲した主の森へと帰るだけだ
バッハを弾き終えたあなたは楽譜を開いたまま
ピアノもそのままに立ち去った
何かの焦げる気配だけが鍵盤を滑る
馬車が迎えに来たのだ
彷徨い人を乗せた馬車が
森を燃やしながら迎えに来たのだ
風に楽譜がはためいて
ロウソクの炎が移っていた
私の瞳に
あなたの影法師が写っていた