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放送 1995年1月15日~12月17日(計33話)
監督:楠葉宏三
脚本:島田満
音楽:若草恵
キャラクターデザイン:佐藤好春
原作:リザ・テツナー( “ 黒い兄弟~ジョルジョの長い旅 ” )
全23作品ある第1期世界名作劇場の中で今でも非常に多くのファンを持つ人気作で、つい先日初めて鑑賞し終えたばかり。まだ当分、この感銘は鮮明に続きそうである。
何と言ってもまず、オープニングの主題歌 “ 空へ… ” が素晴らしい。明日への希望を歌っているのにも拘らず、哀調を帯びた旋律が実に見事に調和しているため、聴く者の心を強く捉えて放さない。歌手の声質がこの曲に良く合っているし、主人公ロミオをはじめ、登場する様々な子供達の心情を表しているからこれほどまでに魅力を感じるのだろう。
エンディングの歌は一転して可愛らしいものになっていて、何度聴いても微笑ましく感じる程度のものだったが、最終話に近づくにつれてこの曲もしみじみとした味わいが出てくるから不思議である。
佐藤好春氏のキャラクターデザインも言う事はない。スタジオ・ジブリで仕事をした事もあるから、宮崎駿やジブリの絵柄に似た感じを受ける人も多くいるだろう。この人の描く絵は、とにかく好きだ。
物語自体についてだが、そんな素手でロウソクを持ったらロウが垂れてきて火傷をするではないかとか、逃亡生活などせずに初めからアルフレドは国王か弁護士の下へでも馳せ参じていれば良かったのではないかとか、突っ込みたくなる細かい箇所は幾らかあるのだが、そうしたものを一切打っ棄ってストーリーは観る者を引き込む。
ロミオの双子の弟の健気さ、家族の絆、人身売買の卑賤さ、そうしたものが前面に出てくる序盤からテーマは友情へと流れ込んで、それがクライマックスまでずっと通される。
アルフレドとロミオの誓いに、幾度胸を打たれたろう。これ程までに固い契りを観て、心を動かされない人は果たしているのかと思ってしまうぐらいだ。
またアンジェレッタの様な気持ちを持った子供(人間)は今や世界のどこを探してもいないのかもしれないが、そうと感じていても彼女のひたむきな他者への想いには、ただただ心が打たれる。
もしもこの物語がもっと多くの話数を重ねていたら、例えば黒い兄弟11人の、それぞれの人物のエピソードに展開させられ(その人物像を深く描き出せて)、更に彼等の友情の結束を目の当たりにする事ができただろう。また、第2代黒い兄弟のリーダーとしてのロミオの奮闘振りがもっと存分に味わえた事だろう。もしくは、アンジェレッタのその後の様子も窺い知れたかもしれない。そう思うと、この物語がそれまでの世界名作劇場と比べて少ない33話で終わってしまった事が少し残念ではある。
アルフレド亡き後のニキータの台詞、
「どこかが、何かが間違っている!」
には、大切な人を失った者がいたく共感するだろう。
“ ロミオの青い空 ” には人を魅了し、牽引する力が強く漲っている。それでいて押し付けがましさがない。
このブログの最初に記したジョルジュ・サンドの以下の言葉、
人間が誤解し合い憎み合う事から世の不幸が生じている様な時代においては、芸術家の使命は、柔和や信頼や友情を顕揚して、清浄な風習や、優しい感情や、昔ながらの心の正しさなどが、まだこの世のものであり、もしくはあり得るという事を、或いは心を荒ませ或いは力を落としている人々に思い出させてやる事である。
これが、“ ロミオの青い空 ” では快い風の様に結実しているからだ。
仮に子供時代にこのアニメに触れていたら、どんなに僕の心が強く広がり、今現在に至るまでどれだけ逞しく生きて来られた事だろう。少なくとも、放送当時に観ていれば良かったと悔やまれる。
とはいえ、今この作品に触れた事は僕にとって大きな意味があり、大きな財産となった。僕にとって宮崎駿作品と肩を並べるぐらいのものと言っても、過言ではない。
こうした友情に憧れる。芯から憧れる。--そして誰でも、きっと憧れるはずだ。
一生涯心に残る作品である。
この作品を観る事なく生涯を終えずに済んで、本当に良かったと思う。