誰にでも苦い思い出はある。
僕にもその苦い思い出と共に、心にずっと引っかかっている曲がある。
スペインはバルセロナの作曲家、フェデリコ・モンポウ作曲の
「コンポステラ組曲」だ。
闇雲にコンクールに挑戦していた20代の後半に
コンクールの自由曲として、何回も、何年にも渡って取り組んだ曲だ。
当時はまだ、今とは別の仕事をしながらの修業時代で
今よりもずっと景気の良かった頃だから、仕事も
それなりに忙しく、自由曲と課題曲に取り組むと
その他に手を出す時間もない。
また、当時の自分はまだ技術的にも未熟で、
今ほど譜読みも早くはなかった。
結果、毎回同じ曲を自由曲としての挑戦となった。
僕は焦っていたのだと思う。
プロを名乗る為に何か確かな結果が欲しかったのだと思う。
一年中コンクールの事だけを考えて暮らす生活を繰り返すうちに
いつしか自分を消耗して行った。
ヘトヘトになって仕事から帰ってきてから
2時、3時まで練習する事が何か、
駄目な自分への復讐のような気がしてきた。
僕は目的をすっかり見失っていた。
コンクールへの挑戦からは、多くを学んだが、
結局結果を出せずにその時期は過ぎていった。
それと同時に僕はこの曲から“解放”されたのだ。
もう、しばらくこの曲を弾く事はないと思った。
すっかり古ぼけた焦げ茶色の楽譜の表紙を見るのも嫌になっていたからだ。
それ以来、僕はこの曲にカギをかけてしまった。
ながい時間が過ぎた。(つづく)
写真は、先日家族で訪れた秩父の宝登山(ほとさん)のろう梅。
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