冬休みにおすすめ3

2021-12-28 18:46:00 | うんちく・小ネタ
ついでにもう一つご紹介しておきます。J.S.バッハ/2つのコラールBWV645,147/デイビッド・ラッセル編曲です。なんと言っても後者は「主よ、人の望みの喜びよ」と言うサブタイトルで有名ですが、前者の「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」の方も私は大好きです。冒頭部分だけで、初めてこの曲に出会った中学生時代の感覚が蘇ります。せっかくなのでその出会いのエピソードを。中学生時代の私は音楽の授業の音楽鑑賞で先生がかけてくださるレコードで新たな曲に出会うのがとても楽しみでした。ある日音楽の授業で確かシューベルトの「魔王」のあの有名な歌曲を聴いていたと思います。シューベルトは今では大好きな作曲家の一人となりましたが、当時はその素晴らしい歌世界を理解出来ずに少し退屈していました。すると隣の音楽教室から大音量でバッハの「トッカータとフーガ」が流れてきたのです。たまたま窓際に座っていた私はその頃は教室にエアコンなど無い時代でしたので、少し黄色い木綿のカーテンが爽やかに風に揺られているその向こうから流れて来た聴いたこともないその音色と衝撃的な曲の出だしに打ちのめされてしまいました。その授業中シューベルトと共に聞こえるバッハに聞き惚れて、すごい手に汗握ったのを覚えています。授業の終了のチャイムが鳴ると私は自分の教室を飛び出して、すぐ隣の教室に駆け込みました。隣では新井先生という女性の先生がちょうどその「トッカータとフーガ」のレコードをしまうところでした。新井先生は私がギターをやっていたのは知っていましたし、学校内の合唱コンクールなどでも私が一生懸命だったのを見ていてくれたので、私が「先生、今かけてたのって何ですか?」と慌てて聞くとニヤッとして、レコードを見せて教えてくれたのです。私はその時何と先生に言ったのか、どのくらいの時間が流れたのか、しばらくして先生が「いいわ、今日だけ特別貸してあげる。明日必ず返してね。」とおっしゃってくれたのです。学校の所蔵するレコードでしたのでその「特別」の意味は理解していました。もちろん誰にも内緒でした。その時の嬉しさを今でも覚えています。先生は確か他にもバッハのオルガン曲のレコードを2、3枚貸して下さって、私はすぐ家に帰ってその当時父親がやっとの思いで揃えたレコードプレーヤーでカセットテープにダビングさせてもらったのです。震えるような感動でした。その日は興奮して一晩中それらを聴きました。「目覚めよ〜」はその中の一枚に入っていました。最初は余り気にもしていませんでしたが、夜に一人部屋を暗くして聴くと独特な静寂感がありました。冬に大雪が降って夜が来ると本当に静かになって、なぜかこの曲の世界観に浸りたくて雪の日の夜によく聴いていたのを覚えています。
バッハの曲に触れる喜びはおそらくどなたにとっても特別なものではないでしょうか?
決して簡単では有りませんが普段弾かれるバッハのレパートリーにはない魅力に触れられる編曲だと思います。おすすめです。