漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

【走れ!、走れ!、おむすびコロリン 】 その後半

2010年03月24日 | Weblog
きのうの続き。
   
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 【走れ!、走れ!、おむすびコロリン 】


冷やかし半分、冗談のつもりで買ったおにぎりは、
男の言った通りの呪文(じゅもん)、

「走れ!、走れ!、おむすびコロリン」と唱え、

ボーリングの玉でもころがすかのように、
足元からそっと投げると、

たちまち、勢い良くころがり出し、
続いて私の足も軽やかに動いて、その後を追いかけ出したのだ。

しかし、このスピードはどうしたことだ。

いつもの私の何倍も早い、
これなら、マラソンのフルコースでも二時間ちょっとで走れるのではなかろうか。

もし、私がマラソン大会に出て、
入賞でもしたら、
大会の関係者は勿論、マスコミだって大騒ぎするだろうな。

なにしろ見たことも聞いたこともない選手、

白髪の老人ランナーが、
オリンピックでメダルだって狙えそうなタイムを出すのだから。

ああ、大騒ぎとなって、取材攻勢にあう自分の姿が見えるようだ。

もし、そうなれば、
「年寄りの冷や水もいいかげんにしなさいよ」と言ってた妻や、
「脳溢血でぶっ倒れるなよ」と冷やかしていた息子だって私を見直すはず、

ウフフ、そうなれば気持ちいいだろうなァ。

しかし、それにしてもこのスピードはどうしたことだ、

道行く人も、立ち止まってこっちを見、
呆れた顔で指さしながら、なにかを話し合っているようすだし、

さっきだって、交番の警官が、
獲物を見つけたような目でこっちを見ながら、どこかへ連絡していたじゃないか。

とっくに、いつもの公園は通り過ぎている。

そろそろ戻らなければならないが、
あの前をころがって、今、自転車を追い抜いたおにぎりは、

ハテ、どうすればUターンするのだろう。

なにしろ私は、
自分の足が自分でコントロールできなくなってしまっているのだ。

「オイ、止まれヨ、おにぎり!」と声を掛けてみたが止まらない、

それならばと、
つかまえてやろうとしたが、おにぎりは尚もスピードを上げて先へころがる。

だんだん、あせってきた。

しまった、こんなことなら、
アノ、ねずみ男に、おにぎりの止め方を聞いておくべきだった、

そう気付いた時は、すでに手遅れだったのだ、
足も止まらず、おにぎりは尚も速度を上げてころがり続ける、

オイオイ、このままでは心臓が破裂して死んじゃうじゃないか。!!!

そう気が付いて、
思わず腹の底から「ギャッ」と悲鳴を上げたような気がした処で、目が覚めた。


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