旧約聖書
どなたであったか忘れたが、
世に知られた学者の方が、
「西欧の書物を読んだり、知識人と会話するとき、
聖書とシェークスピアとギリシャ神話の知識がないと付いていけなくなる」
と語って居られたような記憶がある。
とは云っても、
普通の日本人がそのすべての知識を得るのは大変だし、
ことに信仰のない日本人がキリスト教の聖典を読みこなすのは至難のワザ。
そう云うとき、こんな本はいかがだろうか。
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大空に虹がかかり、これが神と人との人との契約の印であった。
ノアは大地を耕し、葡萄を作り、
葡萄酒を醸して飲み、正体なく酔い潰れてしまう。
裸のまま寝ているノアを見て、
息子の一人ハムは、
ーー 父ちゃんはいい体してるなあーー、
欲情をかき立てられ、男色に耽ってしまう。
お父ちゃんを犯すなんて、どういう趣味なんだ。
この餓鬼は!
酔いから醒めたノアは、これを知って
「馬鹿もの、なんということをした!」
これゆえにハムの一族は呪われた者となる。
三人の息子のうち、ヤフェトは全国に広がって諸国の王となった。
大和民族も、この流れということになるのかな?
セムの系列からアブラハムが生まれ、
これがイスラエルの祖としての血筋を繋いでいく。
のろわれたハムは、南に移り住み、
肌を黒くされ、
これがアフリカに住む黒人の祖となったという説もあるのだが、
人種問題のかまびすしい昨今では、このことはあまり語られていない。
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これが聖書の話だと云うのですからチョッと驚き。
ただし著者もことわっているとおり、
「これは信仰のない者が、
信仰のない人向けに書いたエッセイ」なのであって
それでも世界の先進国の大半がキリスト教徒である以上、
「知らないよりは知っている方がずっといい」のは著者の云うとおり。
しかも旧約聖書は、ユダヤ教やイスラム教の聖典でもあるのだ。
阿刀田高氏著、
「旧約聖書を知っていますか」は、
非キリスト教者でも、
「聖書に楽しく近づける随筆の書」、なのであります。