新しい年が明けて、毎日が採れたてのような二週間でした。くっきり澄んだ青空の広がる朝も、雪の舞う灰色の午後も、東の端に橙のような月が昇る宵も。外気はしんしんと冷えていても、陽射しは春に向かって、日に日に透明のベールをはがしていっているのを感じます。
今年は、明けてすぐ、岐阜県のおちょぼ稲荷さんに初詣。
その次の三連休に、「再び詣で」に出かけたなごやの神社は、駐車場が大行列していたため、ふと思いついて、馴じみの五平餅屋さんのある、「再び岐阜」にハンドルを向けました。
JR駅前のその小さなお店から、車で30分ほど渓流沿いに上ると、棚田の美しい祖母のふるさとがあります。
子供の頃、ある時は車で、ある時は電車で、祖母とふたりだったり、母や父とみんなでだったり、山の上の小川の脇の、そのふるさとを訪ねる時には、いつもここに立ち寄りました。
ところが、いつしか、わたしを廻る景色が外に開かれていき、足が遠いてから、かれこれ15年あまり経ちました。そんな3年前のお正月、しばらくぶりに実家で年越しをすることになり、やっぱり今年と同じようにふと思い立って「まだあるかなぁ。。」と再訪してみたのです。
駅前には、三階建ての駐車場ができていて、「立派になったねぇ。」と感心しながら、そこに車を止めました。駅舎のひさしに並んだ巣の中で、ヒナたちが一心に親を呼んでいた燕の世帯はなくなって、待合室のオレンジと青のプラスチックの席が、クリーム色に変わっていたりはしたものの、駅の風情はそのまま。昔読んだ、お話の世界に入り込んだようでした。
道路を渡って、「たしかこの辺だった。。」と、記憶をたよりに路地を折れると、くるみだれの香ばしい香りが漂ってきます!
あぁ。そこには、あの見知った素朴な店構えが。のれんをくぐり、やわらかな方言の「いらっしゃいませぇ~」を耳に、そうそう。子供の頃座った、見覚えのある椅子を引き、一皿に五平餅串6本と、お味噌汁、おしんことオレンジ二切れのついた「五平餅定食」を頼みました。
家具の配置も食器棚も、当時のまま。隅っこでオレンジジュースとコーラの瓶を並べたガラスの冷蔵庫からは、あの頃、ジュースが「ギンギン」冷えていく音まで聞こえそうな気がしていました。白いかっぽう着の女のひとが、中から一本取り出して、コップにオレンジジュースを注いでくれると、それはもう、目のくらむ王様の食卓のように見えたものです。
今回、冬季限定、味噌おでん串のこんにゃくを一本いただきながら、いつもの定食が運ばれるのを待っていると、紺やグレーの和柄の手提げを3つ下げたおばあちゃんが、入口の扉を「がららっー」と開けました。とたんに、「ああ~、知ってる~」とハッとさせられた、そのなじみ深い雰囲気は、9年前に亡くなった祖母と、なんともそっくりなのでした。
つづく
かうんせりんぐ かふぇ さやん http://さやん.com/
今年は、明けてすぐ、岐阜県のおちょぼ稲荷さんに初詣。
その次の三連休に、「再び詣で」に出かけたなごやの神社は、駐車場が大行列していたため、ふと思いついて、馴じみの五平餅屋さんのある、「再び岐阜」にハンドルを向けました。
JR駅前のその小さなお店から、車で30分ほど渓流沿いに上ると、棚田の美しい祖母のふるさとがあります。
子供の頃、ある時は車で、ある時は電車で、祖母とふたりだったり、母や父とみんなでだったり、山の上の小川の脇の、そのふるさとを訪ねる時には、いつもここに立ち寄りました。
ところが、いつしか、わたしを廻る景色が外に開かれていき、足が遠いてから、かれこれ15年あまり経ちました。そんな3年前のお正月、しばらくぶりに実家で年越しをすることになり、やっぱり今年と同じようにふと思い立って「まだあるかなぁ。。」と再訪してみたのです。
駅前には、三階建ての駐車場ができていて、「立派になったねぇ。」と感心しながら、そこに車を止めました。駅舎のひさしに並んだ巣の中で、ヒナたちが一心に親を呼んでいた燕の世帯はなくなって、待合室のオレンジと青のプラスチックの席が、クリーム色に変わっていたりはしたものの、駅の風情はそのまま。昔読んだ、お話の世界に入り込んだようでした。
道路を渡って、「たしかこの辺だった。。」と、記憶をたよりに路地を折れると、くるみだれの香ばしい香りが漂ってきます!
あぁ。そこには、あの見知った素朴な店構えが。のれんをくぐり、やわらかな方言の「いらっしゃいませぇ~」を耳に、そうそう。子供の頃座った、見覚えのある椅子を引き、一皿に五平餅串6本と、お味噌汁、おしんことオレンジ二切れのついた「五平餅定食」を頼みました。
家具の配置も食器棚も、当時のまま。隅っこでオレンジジュースとコーラの瓶を並べたガラスの冷蔵庫からは、あの頃、ジュースが「ギンギン」冷えていく音まで聞こえそうな気がしていました。白いかっぽう着の女のひとが、中から一本取り出して、コップにオレンジジュースを注いでくれると、それはもう、目のくらむ王様の食卓のように見えたものです。
今回、冬季限定、味噌おでん串のこんにゃくを一本いただきながら、いつもの定食が運ばれるのを待っていると、紺やグレーの和柄の手提げを3つ下げたおばあちゃんが、入口の扉を「がららっー」と開けました。とたんに、「ああ~、知ってる~」とハッとさせられた、そのなじみ深い雰囲気は、9年前に亡くなった祖母と、なんともそっくりなのでした。
つづく
かうんせりんぐ かふぇ さやん http://さやん.com/