比企の丘

彩の国・・・比企丘陵・・・鳩山の里びと。
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70年前の「あの戦争」・・・非命に斃れたるものの・・・きけ わだつみのこえ

2015-08-17 | 語り継ぐ責任 あの戦争
                                  なげけるか いかれるか                 
                           はたもだせるか
                           きけ はてしなき わだつみのこえ



日本戦没学生記念会編 「きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記―」 
東京大学協同組合出版部 1949年初刊
写真の本は岩波書店 ワイド版岩波文庫 1997年刷のもの

1945年8月の敗戦の日から4年後の1949年(昭和24年)に出版された戦没学徒兵の遺稿集です。巻頭にこのような短歌が掲載されています。
現代語で読むと・・・

嘆けくか 怒るか 
それとも沈黙するか 
聞け 果てしなき海神の声


・・・わだつみは綿津見とも書く海の神の古日本語(わだ=海、津=「の」、=御霊)。
同書を出版する際、題名を一般公募、2000通に及ぶ中から京都市在住の藤谷多喜男さんというかたのものが採用された。冒頭の短歌はその題名に添付されたもの。

あの大戦で非命に斃れた若ものたち、極限の中でどのように自分を見つめていたか、戦後間もない時代、戦前教育しか知らなかった人々の心に衝撃を与えました。一方、当時の時勢としては当然ですが編集方針が「平和を訴える」であったがため、軍国主義謳歌の遺稿は採録されなかったことを批判もされています。・・・第2集では日本主義的な手記も採録されているそうです。出版当時はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の検閲があり編集に制約もありました。戦時下から出された戦没学生の手紙は軍の検閲があり押さえられた文になっているということも考慮しなければなりません。
戦没学生の手記という題名の通り当時は少数の高等教育を受けていた学生の手記であり、一般民衆との間の温度差を指摘する声もあります。

あの戦争」は何だったのか・・・若ものたちはどう考えていたのか・・・それを考える一つの貴重な資料です。それをどう読むか・・・ひとりひとりの問題です。

きけわだつみのこえ」の序文(渡辺一夫)の最後に添えられた詩を掲載します。※渡辺一夫(「きけわだつみのこえ」編集委員、フランス文学者、東大教授、1901~1975年)

     死んだ人々は、帰ってこない以上、
     生き残った人々は、何が判ればいい?
     
     死んだ人々には、慨く術もない以上、
     生き残った人々は、誰のこと、何を、慨いたらいい?

     死んだ人々は、もはや黙ってはいられぬ以上、
     生き残った人々は沈黙を守るべきなのか?


                       ジャン・タルジューフランスの詩人

※冒頭のタイトルで「非命」という言葉を使っています。天皇の「終戦の詔勅」で「非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内爲ニ裂ク」という一節があります。「非命」とは天寿を全うしない命のこと。すなわち志半ばで,生きたくとも生きられなかった命のこと。

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2 コメント

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中村克郎さん (こきおばさんへ・・・ヒキノ)
2015-08-19 07:18:12
この本は昭和22年に東大生活協同組合出版部が編集。中村先生は編集の筆頭顧問、のち「わだつみ会」の理事長・・・ということを知っていました。甲州市の方でした科。
記念館のこと、文中にリンクで補足して書き込もうと思います。

若い人が安保反対でデモしています。彼らのことを「彼ら彼女らの主張は・・・だって戦争に行きたくないジャン・・・という自分中心、極端な利己的考えに基づく・・・
とツイッタ―で発信した議員がいます。
「ジャン」という横浜、甲州方言を使って・・・大事な問題を。

戦場で非命に斃れたものに対する冒涜であり、人の命の重さを消耗品ぐらいに考えた発言です。
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わだつみ平和文庫 (こきおばさん)
2015-08-19 06:44:55
甲州市の医師だった中村克郎さんが集めた資料を展示していた「わだつみ平和文庫」がこの度、甲州市に寄贈されました。詳しいことはこのページをご覧ください。
https://www.yamanashi-nponet.jp/board/detail.php?m=126&i=51

建物の地震対策など諸事情により、甲州市への寄贈となったようです。大切な資料ですから甲州市は教育の一環として活用してくれたらと思います。

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