昨日本当に偶然に館野泉さんの演奏をテレビで少しだけ聴くことができた。
確かNHK教育の『福祉ジャーナル』という番組だったと思う。
(なんせ洗濯物をたたみながらみたので
)
彼のことは随分前から知っていた。
演奏はほとんど聴いた事がなかったが
『ショパン』という音楽雑誌に昔フィンランドの音楽事情や
自身の音楽活動などのエッセイを連載していた覚えがあるのだ。
その頃は
「北欧で活動している日本人演奏家がいるんだな」ということと
「シベリウスって面白そうだな~」
位の気持ちしかなかったのだが
なぜか彼の名前だけはずっと忘れずにいたのだ。
近年、彼が脳溢血によって右手が動きづらくなったと聞いていた。
そして左手だけでの演奏活動を再開したとも。
日々の忙しさに取り紛れてそれ以上のことを知らなかったし
あえてその演奏がどうなのだろうとも思わなかったのである。
昨日偶然にも耳にした彼の音楽は素晴らしかった。
左手だけでも充分雄弁に何かを語っている気がした。
音質も様々だし、音楽に色がある。
柔らかく、穏やかで、温かな音。
ワタシはほんの一部分を聴いたに過ぎないが、
演奏する彼の姿は幸せそうに見えた。
体の機能の状態が悪かった時も
彼の頭の中は常に音楽が鳴り響いていたという。
音楽、音楽、音楽・・・。
きっと今までどおり
自分の全てを駆使して表現したい欲求に駆られていたに違いない。
その時の心情を思うと、本当に辛かっただろうと思う。
でもそこで音楽を奏でる事を諦めなかった彼は
よりいっそうの音楽の極みに到達したのかもしれない。
自分もピアノを弾けなくなるときがくるかもしれない。
死ぬまで引き続けるつもりでいるワタシだが
いつ彼のように病気になるか、また事故に遭うかわからない。
ヘタでもなんでも何不自由なくピアノを弾ける幸せを
改めて感じずにはいられなかった。