今までういろうといえば名古屋名産のういろうで、しかもお菓子のことだと思い込んでいた。
しかし本家は小田原の外郎(ういろう)家で、本当のういろうとは薬のことであった。
外郎家は中国で約1000年、日本で600年続く由緒ある家柄で、豊臣秀吉が小田原北条家を滅ぼした後、その家臣であったにもかかわらず特別な秘薬の製造法を知っているために外郎家だけは特例でお家断絶をしなくてすんだ。つまり許されたのである。
その後、外郎家は薬を一般に売り出し、医薬の方に専心することになったのだそうである。
今でも小田原市本町に外郎家は存続しており、その薬である「ういろう」を売っている。
さくら貝の先生から1粒だけいただき、口に入れたが、ちょっと仁丹のような味がした。
享保年間、歌舞伎役者・二代目市川団十郎は持病の咳と痰のため台詞が言えなかったが、その薬であるういろうで病気が全快した。彼は感謝の気持ちで舞台でPRしようと団十郎創作による「外郎売」が誕生したのだそうだ。
お菓子の方のういろうは本家が明治に入ってから売り出した、ということである。
しょっちゅう咳ばらいしている者にとっては(かく言う私もそうだが)、この薬を一度試してみる価値ありそうだが、いかがであろうか。