トーキング・マイノリティ

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ザ・シューター 極大射程 07年/米 アントワーン・フークア監督

2007-06-12 21:16:58 | 映画
 「民間人を撃った感想は?」の問に、「銃の反射」と答えた超一流のスナイパーがこの映画の主役。水鉄砲や豆鉄砲しか撃ったことのない者には無縁な感想だが、それぐらいでなければ到底映画のコピーのように、「合衆国VS孤高の狙撃手」と、精鋭部隊に立ち向かう能力はない。

 元海兵隊のスナイパー、スワガーは 一線を退いた後、広大な自然に囲まれた山奥で隠遁生活を送っていた。退役する前、彼はエチオピアでの任務で相棒を死なれた過去がある。そんな彼の元に軍の 要人が訪れ、大統領暗殺計画が発覚したので、是非協力してほしいと依頼する。相棒が死んだのも情報機関が危険地域に置き去りにしたのが原因だったので、上 層部には強い不信感を抱いているスワガーだが、愛国心は失っていない彼は、仕事を引き受ける。だが、それは巧妙に仕組まれた罠だった。

 合衆国大統領と訪米中のエチオピア大司教との記者会見場で狙撃がおき、スワガーは犯人の濡れ衣を着せられる。軍や警察に追い詰められるスワガー。しかし、彼は誓う。「犯人を見つけ出し、復讐する」。
 超人的なヒーローがたった一人で精鋭部隊と戦うのはランボーを思わせる。しかし、スワガーには協力者がいるのがランボーと違う。協力者といえ、有無を言わさず手伝わされたのがFBI捜査官メンフィス。メンフィスはスワガーが逃走する際車を奪われたので、上司から激しい叱責を受けていた。

 映画の途中で、諸悪の根源は複合企業なのが分かってくる。軍や政府の一部にワルがいるのは確かだが、彼らもまた巨大企業の駒のひとつに過ぎない。事件に深く関っているモンタナ州の上院議員がうそぶく。
腐敗は人間の本質」「大統領がTVに出て、(戦いは)由のためだ、石油のためではないと演説しても、誰も何も言わない。皆ウソだと知っているからだ

  かつてスワガーがエチオピアで任務に就いたのも、石油パイプライン敷設のためだった。パイプラインを敷くため移転を迫られるも、土地を去るのを拒否した村 人がいた。彼らは一村ごと虐殺され、遺体は埋められる。任務の全容を知らなかったといえ、虐殺者に手を貸していたことを知り、衝撃を受けるスワガー。しか し、モンタナの上院議員殿は事情を知っていた。
私こそ、救世主だ。部族が違うといって、殺し合いをするのを防げたのだから

  スワガー役のマーク・ウォールバーグ、アクション映画の主役をやる割に案外小柄だし、特に特徴のある容貌でもない。普通アクション大作映画はストレス解消 にもってこいなのだが、この作品は見終わった後に重いものがある。銃で片付く開拓時代ではないからだろう。共産主義圏が悪とされていたランボーは、敵を倒 して幕という単純さだった。

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