トーキング・マイノリティ

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青池保子さんのインタビュー その①

2019-02-23 21:10:10 | 漫画

 ムック『AERA in Rock クイーンの時代』を先日購入にした。ブーム便乗本なのはタイトルだけで分るし、いかにクイーンファンでも私は買う予定はなかった。既にシンコー・ミュージック版ムック『MUSIC LIFE Presents クイーン』を購入していたし、AERAは朝日新聞社の雑誌である。
 浅野裕見子なる下劣記者もいて、この者が電子版で投稿した記事を紹介しているサイトもある。アマゾンにも辛口な批評が結構あり、買う価値なし、と思った。

 にも関わらず、私が購入したのは青池保子さんのインタビューが掲載されていたのを知ったからだ。この件はアマゾンではなく、あるクイーンファンのツイートを見て初めて知った。アマゾンの紹介には青池さんのインタビューのことは書かれていない。表紙の左側に「特別インタビュー  青池保子「イブの息子たち」「エロイカより愛をこめて誕生秘話」の見出しがあり、これは絶対に見逃せないと思った。
 私は高校時代から青池漫画のファンで、既に40年近くもなることに今更ながら驚く。'96年からハマったクイーンよりファン歴が長いのだ。私が青池作品を知ったのは、クラスメートの友人から「イブの息子たち」を紹介されたことがきっかけ。友人いわく、「これ面白いよ。世界史の勉強になるよ」

 AERAのインタビュー記事は3頁(66-68)に亘っており、インタビュアーは何と浅野裕見子だった。さすがに今回は観相学から見た青池さんへの言説はなかったが、特集見出しには「ロックと少女漫画の蜜月関係」とあり、見出し文はこうあった。
日本での洋楽ロックの歴史を語るうえで、切り離せないのが少女漫画だ。漫画家はロックに影響され、読者は漫画でロックを知った。時代をぐいぐいと推し進めた。あのパワーは何だったんだろう

「イブの息子たち」は青池さんの出世作である。デビューから10年ほど鳴かず飛ばず状態だった彼女が、これを境に作風を大きく変えていく。連載開始は1976年、それまでの少女漫画といえば純愛を描く「恋愛もの」が主流で、ベルばらもその王道の作品なのだ。
 しかし青池さんは、「固定観念を壊したい」「面白いものが描きたい!」の一念を新作「イブの息子たち」にぶつけたそうだ。それまでは主に講談社の「週刊少女フレンド」に投稿していた青池さんが、秋田書店の「月刊プリンセス」で活動を始め、ヒット作を生み出していく。青池さんも、「秋田書店でなかったら、『イブの息子たち』も『エロイカより愛をこめて』も描けなかったでしょうね」という。

「イブの息子たち」を青池さんは「破壊の漫画」と呼んでいる。主人公は詩人のバージル、ピアニストのヒース、ロック歌手ジャスティン等英国青年3人組で、彼らは或る日天使ドジエルから、イブの肋骨から作られた男性だけの一族ヴァン・ローゼ族であることを告げられる。
 この設定自体も実にユニークだが、歴史上の実在の人物や架空の人物が時系列にお構いなしに登場、ヴァン・ローゼ族と敵対する女たちとの騒動に主人公3人組は毎回巻き込まれるというストーリー。コピーのひとつは「ハチャメチャコメディー」で、青池さんも「面白いこと、新しいことをこれでもか、これでもか、っていう日々でした」と振り返る。

 それまでの純愛少女漫画路線からの完全な転換であり、以前のファンからは、「あなたは堕落したんですね。さようなら」という手紙が来たこともあったことは、以前のインタビューで知っていた。ちょっとショックだったが、「でも面白いのよ。止められない。描きたかった」と語る青池さん。

 そのモチベーションの背中をぐいぐい押してくれたのがロックだった。「イブの息子たち」のヒースのモデルはキース・エマーソンエマーソン・レイク・アンド・パーマー(EL&P))なのも知っていたが、ジャスティンのモデルがピーター・フランプトンだったとは、今回初めて分かった。その理由を青池さんはこう話している。
私の作品は硬派だっていわれるんです。東西冷戦を描いたり、男性も筋肉質だったりしますから。音楽の趣味もわりと硬派で、ハードロックやプログレッシブ・ロックが大好き。ピーター・フランプトンみたいなアイドルっぽいのはあんまり好きじゃない。だから、なよなよした女の子っぽいキャラクターで、いじめられ役にしちゃったんです(笑)
その②に続く

◆関連記事:「『エロイカより愛をこめて』の創りかた

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (鳳山)
2019-02-24 00:27:12
青池保子さんは『サラディンの日』が面白かった記憶があります。あまり少女漫画は知らないのでこれくらいの薄いコメントしかできませんが…。
返信する
鳳山さんへ (mugi)
2019-02-24 22:34:05
 鳳山さんが『サラディンの日』を読まれていたとは意外でした。青池さんは女性漫画家にも関わらず、その硬質な作風が気に入っています。
返信する
ハチャメチャコメディーとはいいながら・・・。 (mobile)
2019-02-25 16:11:14
ハチャメチャコメディーとはいいながら『イブの息子たち』の情報量はハンパないです。
-------☆☆☆-------
で、青池保子氏の好きなモノはフレディーとの共通点が多いのです。
-------☆☆☆-------
日本酒(しかも辛口)好きの白鳥ニジンスキーを覚えているでしょうか?
実はフレディーもニジンスキー大好きなことが" I Want To Break Free"のMVを観てワカッテしまった。
ブログに書いたので見てニンマリしてください。
https://blog.goo.ne.jp/mobilis-in-mobili/e/3deda7f5d095d5d6dd114863eaad52a1
-------☆☆☆-------
『イブの息子たち』って話全体が・・・いってみれば大和和紀『はいからさんが通る』の楽屋オチ総集編で成立しているような漫画でしたので、原典がワカルととても嬉しかった記憶があります。
-------☆☆☆-------
後年になるまで分からなかったのが『タルカス』と『マンティコア』・・・エマーソン聴いていなかったからなあ。
-------☆☆☆-------
そして最終回に登場するベレー帽のイケメン。
あれがチェーザレ・ボルジアだと分かった時は感動したなあ・・・。
返信する
Re:ハチャメチャコメディーとはいいながら・・・。 (mugi)
2019-02-26 22:44:14
>mobile さん、

 白鳥ニジンスキー、強烈なキャラだったので憶えております。『イブの息子たち』のおかげでニジンスキーという実在のバレリーナがいたことを知りました。

 フレディはバレエ好きだし、ニジンスキーを当然知っていたでしょうね。" I Want To Break Free"のMVでのフレディは、白黒まだら牛柄のレオタード姿で登場しており、初めて見た時はキモいおっさんとしか思えなかった。『イブの息子たち』のニジンスキーも白黒ダイヤ柄で登場したこともあったから、青池さんもクイーンは嫌いではなかったのでしょう。

 私もエマーソンは聴いていなかったので、『タルカス』と『マンティコア』のことは今回のコメントで初めて知りました。

 あるクイーンファンがツイートで、ジャスティンのバンドメンバーのドラマーとベーシストのモデルはクイーンではないか、と言っていました。確かにドラマーは金髪だし、ベーシストはたれ目で髪にはアミが掛かっている。2人はどう見ても女たらし、というバージルの台詞もありますし。

 毒薬カンタレラを使っていることから、ベレー帽のイケメンがチェーザレ・ボルジアであるのが分りますよね。尤も私にそれを教えてくれたのは、『イブ』を紹介してくれた友人でした。
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