トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

青池保子さんのインタビュー その②

2019-02-24 21:40:13 | 漫画

その①の続き 
 青池さんの仕事場には当然ロックがガンガンかかっていて、情報源は主にFMと音楽雑誌。「ミュージック・ライフ」は特に頼みの綱だったという。代表作「エロイカより愛をこめて」の主人公ドリアン・レッド・グローリア伯爵のモデルがロバート・プラントレッド・ツェッペリン/ZEP)なのはファンにはよく知られているが、青池さんとロバート・プラントは同い年だそうだ。
 ロバート・プラントは「イブの息子たち」にもバンドメンバーと共にそのまま登場している。あの超高音を発して敵の飛行船を爆発させているのだ(プリンセスコミック第2巻109頁)。

 実は同作の第2巻にはフレディ・マーキュリーも登場している。ブログ『吉良吉影は静かに暮らしたい』2018-11-16付記事には28頁がそのままコピーされており、「クイーン人気はまず日本から・・・これが証拠だ!?」の見出しがある。
 ここではフレディはアルキメデスの恋人という設定になっていて、86頁には2人で仲良く風呂に入っている。フレディは女性化されていても歯がかなり強調され、「すげえ歯出な女だな」とヒースがドン引きしている。紀元前の大科学者と20世紀のロックスターが恋人同士という設定がスゴイ。
 プリンセスコミック第3巻206頁にはフレディとロバート・プラントが揃って登場、「新興キッスに負けてたまるか」「見よ栄光のハラ毛を!ベテランは強い!」と、2人して胸毛や腹毛をむしっている。今見返しても笑えた。

 青池さんが一番好きなバンドはやはりZEPで、最も好きな曲は「アキレス最後の戦い」という。「あの爽快感。躍動感がいいんです。さあ行くぞ!って感じで原稿がはかどるんです。締め切りに追い詰められた状態にぴったりで(笑)」



 残念ながら青池さんは、クイーンは特に好きではないようだ。ZEPが最もお気に入りならば、クイーンは軟弱バンドに思えても仕方ない。ボーカルは歯出すぎるし、ドラマーは美形アイドルの権化、ギターとベースは優男とZEPのような男くささがないのだ。それでも「イブの息子たち」番外編には「グッド・カンパニー」があることから、クイーンを聴いていたのは確かだろう。
 青池さんのお気に入りなのでZEPのCDを聴いてみたが、私的にはあまり好きになれなかった。「天国への階段」は名曲だが、その他はどれも同じような曲にしか感じられず、全編ハードロックでは飽きてしまう。対照的にクイーンの曲は多様性があって、聞き飽きない。

 今も執筆を続けている青池さんだが、現在の仕事中のBGMは「無音」という。その理由をこうだった。
ロックは今も好きですが、パンクが流行り出したころから、新しいものを追うのはやめました。勢いはあるけれどロマンが感じられなくなってしまった。ZEPの中世音楽のような妖艶さや、EL&Pの重圧感には及ばない気がして

 青池さんは国際情勢についても興味深いことを話している。
冷戦構造の崩壊を経て、むしろ情勢は複雑になった。アジアもEUもアメリカも、思いもしなかった方向へ転がって大変な局面を迎えていますよね
「では今は描きたいことだらけですよね」、と的外れな質問をする浅野裕見子。尤も当人は「水を向ける」と言っているが、青池さんは首を振って答える。
むしろ描けません。ストーリーが生まれる余裕がないんです。インターネットやSNSが発達して、事件から周囲の反応までの時間が短すぎる。国際情勢も世の中も、描くころには現実が先へ行ってしまっているんです

 水を向けたつもりだったろうが、逆に複雑な現代社会の実情を突きつけられる羽目になった。全くこの問だけで、浅野の取材能力が知れよう。分析能力に乏しく、社会情勢にうとい女が記者をしているのだ。
 これなら音楽雑誌ミュージック・ライフ記者の方が遥かに鋭い質問をしている。世界のトップミュージシャン相手に取材をしているため、ボンクラでは勤まらないのだ。

 聞き手はボンクラでも、今回の特別インタビューは良かった。ムックにはクイーンをテーマとしたシマあつこさんの「8ビートギャグ」新作も載っていて、ラストには泣けた。
 それに対し、巻末の池田理代子氏による「おとなのROCK塗り絵」だけはカンベンしてくれ、と言いたくなる。メンバーの雰囲気は出ているものの、池田氏の画風はROCKに似合わない。

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愛しのボーナム君

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2 コメント

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何だかナットク (mobile)
2019-02-25 16:26:12
>ロックは今も好きですが、パンクが流行り出したころから、新しいものを追うのはやめました。
-------☆☆☆-------
最近の新しい音楽はメロディー・ラインというものがナイように思います。80年代に出尽くしたのではナイでしょうか?釘を打つようなパンクのリズムもそうですが、ラップというものが登場して一層聴くのが苦痛になってきました。
-------☆☆☆-------
で、80年代名残りのようなバンドを聴いています。
今も新曲を出してくれるのは、Judas Priest と Blondie くらいになりましたが、還暦を超えていまだ健在なのがアリガタイです。
-------☆☆☆-------
で、最近の国際情勢はどんどん複雑化・・・「今に(唯一残っていた悪の象徴)北朝鮮書記長がヒーローになるかもしれない」なんて思ってしまうくらいに先が見えません。
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Re:何だかナットク (mugi)
2019-02-26 22:46:19
 私もパンクやラップは苦手なので、殆ど聞きませんね。シド・ヴィシャスがフレディに絡んだエピソードがありますが、格が違い過ぎた。2人の死は自業自得の面もありますが、その姿勢は正反対。やはりシドはアホの小心者でした。

 Judas Priest と Blondie って、今も活躍していたとは知りませんでした。ストーンズだって現役ですよね。

 本当に現代の国際情勢は混とんとしていますよね。北朝鮮書記長がヒーローになるのは難しいと思いますが、PLOのアラファトもノーベル賞を受賞したこともある。今の時代は正に一寸先は闇です。
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