
『けなげな魚図鑑』(松浦啓一著、エクスナレッジ)を元日に面白く見た。「日本の魚はたくましい!」というサブタイトルがあり、魚の生き様が紹介されている。以下は表紙裏にある紹介。
―この本に収録されている79種の魚は、すべて日本に生息しています。一度は名前を聞いたことがあるような身近な魚も、その日常をのぞけば、人知れぬ苦労があります。この本をもって、水族館や海、川に繰り出し、けなげに生きる魚たちに会いに行きましょう。きっとこれまでとは見方が変わってきます。
本書は多くのサイトで紹介されているが、「田舎の本屋さん」では分かり易く解説されているので引用したい。
―さかなクン推薦!!「おさかな大国」日本に生息する、けなげでちょっと切ない魚たちの個性豊かな日常を覗くイラスト図鑑!!イラストはただ楽しいだけでなく、水産学博士の松浦先生監修のもと、魚の尾びれの形など、細かなところを正確に表現した“イラスト図鑑"です。目で見てパッとわかる日本での生息地情報や、その魚が見られる水族館情報、写真で見せるサブカットも掲載。
本書の4-5頁には、けなげな魚の生き様として、四種の見出しがある。
「毎日が生き残りをかけたサバイバル。時には農業もします」
「パートナー探しや子育てが大変なのは、人間も魚も同じ」
「「進化」はかっこよくなるばかりではありません」
「私たち人間のせいで切ない運命をたどる魚がいることも忘れてはなりません」
農業をする魚として、クロソラスズメダイが挙げられている。この魚は本書で初めて知ったが、紹介文が「エサにこだわりすぎて、海の中で毎日農業」。クロソラスズメダイは自分で育てたイトグサという海藻だけを食べているそうだ。海藻を食べる魚は珍しくないが、自ら育てる魚がいたことほ本書で初めて知った読者も多かっただろう。
パートナー探しで並々ならぬ苦労をする魚にアマミホシゾラフグがいる。この種は松浦先生が奄美大島から報告した新種で、オスはメスの産卵のために直径2mの巣を作るが、オスの全長は12㎝前後なのだ。しかし、せっかく大掛かりな巣を作っても、モテないオスの巣にはメスが寄り付かないという。
松浦先生は進化は一長一短と断言する。例えば固いウロコをまとい、魚類界屈指の防御力を手に入れたマツカサウオは、スイスイ泳ぐことはできない。ニシンは人間の乱獲により数は激減、ニホンウナギは絶滅の危機にある。これ等は人間のせいで切ない運命をたどった魚なのだ。
サメは獰猛な魚として有名だが、シロワニは生まれる前に兄弟同士で殺し合いをしている。メスが産んだ卵は子宮内で育ちふ化するが、ふ化した子供は卵を食べ、子供同士も食い合いをする。シロワニには子宮がふたつあるが、最後に残った子供だけが出産されるそうだ。
さすがサメ、生まれながらに残酷だと思った読者が大半かもしれないが、ベーリング海に住むスケソウダラは共食いをするという。胃の中を調べたところ、何と36%はスケソウダラの稚魚や若魚だったという報告もあり、「胃の中の3分の1くらいは自分や仲間の子ども」だった。かまぼこの材料となる魚の共食いを初めて知った。
メスと一体化するビワアンコウのオスの生き様は、けなげというよりも究極のヒモに思える。何しろ「メスに出会ったオスは、ほとんどの臓器がなくなる」そうで、栄養はメスから受け取るようになるそうだ。1匹のメスに何匹もオスがくっついていることもあり、内心羨ましいと感じた男性もいるのではないか?
日本に住んでいるタイ科の魚は13種しかいないが、タイ科ではないのに「○○ダイ」という和名が付いている魚は日本に360種もいるそうだ。作者曰く「日本人はよっぽどタイが好きなのでしょう」。
Amazonには4種の魚が載っており、サケが放流されすぎて体が小さくなってきていることを初めて知った方も少なくないだろう。他にも知られざる魚たちの生態が紹介されており、イラストも可愛いらしく、大人が読んでもとても面白い“イラスト図鑑"だった。
腰帯には「けなげに生きる魚たちの姿は、人生のお手本です」というコピーがあり、魚の多様性には驚くばかり。
ただ、アンコウだけは一応茨城の名産品なので、
小学生の時大洗水族館の展示でしりました。
ウチの町だと最寄りの水族館で小学生の遠足の定番地
なんです。私は当時は生殖器を残して雌に吸収される
ことが恐ろしく、「アンコウに生まれなくてよかったわ」と思ってましたw
アンコウとは対照的にイクメンに徹する魚もいるそうです。そのためメスより短命ですが、イクメン放棄してもホモサピエンスの♂も短命ですね。