トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

赤目―典型的マルクス史観劇画

2007-01-27 20:23:06 | 漫画

 私が子供の頃見た劇画で、強い衝撃を受けたのが白土三平作の『赤目』だった。本好きの父は劇画も結構見ていたが、側から父の読んだ劇画を私も見ていた。小学校中学年くらいの年齢の児童には難しい内容だったが、特に『赤目』は冒頭から驚かされた。何しろ2頁目で百姓の首が飛ぶのだから。

 時代はおそらく戦国だったと思うが、百姓が作業している農地に、いきなり城の若殿が乗馬姿で乗り込む。百姓たちは「せっかく撒いた種が滅茶苦茶だ」と怒りを感じてもその場を逃げる他ない。若殿は何の罪もなく逃げ遅れた百姓の首を直ちに刎ねる。彼は「ハハハ、なんとよく切れるのだ…まるで大根を切るようだ」と笑いながら、駆け去る。そして無残に殺害された百姓の死体に妻子がすがって泣く場面が続く。

 この鬼畜の若殿は平凡な百姓だった主人公の妊娠中だった妻も惨殺する。腹の子が男か女か確かめる目的だけで、身ごもっている妻をわざと拉致したのだ。側近の止めるのも聴かず、妊婦の腹を切る若殿。主人公の元には遺体となった妻が帰されるが、掛けられたむしろを捲くった彼は、妻がどのような殺され方をされたのか知る。妻と初めての子を失った彼は固く復讐を誓う。『赤目』はこの主人公の復讐物語なのだ。

 いかに復讐に燃えたところで、元来力もない百姓に過ぎなかった彼は、忍者に身を寄せ、忍術を学ぼうとする。だが、意志だけでは忍者になれない。劇画中の解説にもあるとおり、犬が木に登れないように、百姓である主人公には忍者になれる素質が全くなかったのだ。ついに忍術訓練時、片足と片目を失う大怪我をし、を追放される。それでも「(妻の名)、きっと敵は討ってやるぞ」と復讐心は失わなかった。

 万策尽きたかに見えた主人公。しかし、彼は食物連鎖を利用したやり方で復讐を開始する。それは「赤目教」の布教だった。赤目というのは兎であり、僧侶となった彼は赤目を敬えば、極楽往生するという教えを広める。困窮生活を強いられていた百姓たちは彼の教えを受け入れ、元百姓は「お上人様」として村人の絶対的信頼を得る。
 兎を大事にすれば当然兎の数も増えるが、繁殖しすぎれば逆に食糧難、疫病で兎は激減する。兎が減れば、山猫のような肉食動物も影響を受け、人間を襲うようになる。

 城の若殿は既に領主となっていたが、頻繁に人を襲うようになった肉食獣の対策に頭を痛めていた。百姓どもには己の問題には自分達で対処せよと、山猫退治のため銃を渡す。これこそが主人公の狙いだった。銃を手にした百姓を率い、彼は一揆の先頭に立つ。先祖代々の恨みを晴らせ、戦って死ねば極楽往生ぞ、と檄を飛ばして。
 領主の兵は至るところで打ち破られ、一揆軍が勝利する。密かに城から抜け出した領主の前に立っていたのが主人公。

 この劇画のラストもインパクトがすごい。悲願の復讐を遂げた主人公が縄に掛けた領主の首を引きずりながら歩いているが、彼は既に正気を失っていた。「妙、うれしいだろう。赤目様だ。赤目様が飛んでいる…」とつぶやき、立ち去る彼の後姿を写して幕となる。

 この劇画を見た時、私は十歳そこそこだったので、昔の日本ではこのような惨いことが行われていたと本気で信じた。この劇画にも登場するように、貧しくて年貢を納められない百姓はみの踊り(身体にみのを巻き、火を付けられる処刑。もがき苦しむのでこの名が付く)にされるのだと思い込んだ。さらに生き埋めシーンもある。後ろ手に縛られた百姓の男たちが穴に投げ入れられ、そのまま土が被せられる。その上に家族の女、子供、老人が立たされ、土を踏むことを強要される。泣きながら土を踏む家族たち。「このような残酷な手口は旧日本軍が中国大陸でよく行ったものである。抑圧されている人民ほど他の民族に残虐行為を働くといわれるが、それも悲しい歴史があったからだろう」という著者の解説も添えられて。
 だが、長じてこれは典型的マルクス史観による劇画であるのを知った時は、騙された、と怒りを禁じえなかった。白土三平の父もプロレタリア画家なので、根っからのマルクス史観論者だったのだ。

 私の学生時代、白土三平の劇画「カムイ伝」を勧めていた講師がいた。劇画なので試しに読んでみたら、あまりにも虐げられたの話が強調されていて、面白くなかったから2巻目で止めた。あれが一時期人気を集めた劇画だったとは信じ難い。
 この講師は満州事変を「人の国でドンパッチやって、事変と呼ぶのは何事か」「インドは男より女の方が平均寿命が短い。男は働かないで、女に仕事させているからだ」などと言う人物だった。当然人の国でドンパッチやって、解放と呼ぶ中共のことは触れない。明治初期には日本も女の平均寿命の方が短く、これは出産時で死亡するケースが多かったためである。インドの男が働かないとは、デタラメもいいところだ。ペルシア(イラン)からもたらされたパルダという女性隔離制度があり、外に出られない女も少なくなかった。

 もちろん『赤目』のような鬼領主は存在しただろうが、むしろ例外のケースであり、民をこれほど痛めつけては統治も立ち行かなくなるのだ。みの踊りの対象はもっぱらキリシタンであり、彼らは「宗教の衣をまとった帝国主義」の記事でも書いたが、スペイン、ポルトガルと結託もする敵対的なカルト集団だった。
 ネットでは偏向報道が散々批判されているが、子供心にもインパクトを与える偏向劇画・教育は、なお始末が悪い。

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21 コメント

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通りすがり氏へ (mugi)
2015-06-01 22:03:04
 今年でブログ十周年になりますが、ここのような弱小ブログでもアラシは何度もあった。もちろんブログを開設した以上、アラシは覚悟の上ですが、いくらHNを変えても文体は変わらない。長文で突っかかる貴方のコメントは、まるで「くもり」さながら。
「通りすがり」のHN自体、よくアラシが使っている。匿名をいいことにネットにはとんでもない嘘つきが蔓延っているのを、知らないとは言わせません。

「「くもり」なんて知りませんよ!」と怒っていますが、先のコメントで白土作品について「「歴史洗脳」「単なる左翼作品」とするコメントが見られますが…」と書いていた。つまり、コメントを見ていたということだし、今回の貴方の書込みは矛盾している。
 デマが蔓延っているのがネットだし、書込みを鵜呑みにするのは幼稚。ここにも虚言を書き連ねた者がいたし、私はコメントを早々に信じるほど世間知らずではないのであしからず。

 この記事は「赤目」についてであり、「女子高生コンクリート殺人事件」とは直接関係がない。爆サイ西東京雑談板も私は初耳だし、「繊細は,そちらを見てみれば」というならば、せめてリンクを貼るのが筋というものです。
 その掲示板での貴方のやり取りも記事とは無関係で、掲示板風に言えば「スレ違い」。件の掲示板で攻撃され、うっぷん晴らしをしているとしか思えない。

 いきなり8年前の記事に書込みし、記事とは無関係の事件や掲示板でのバトルを長々と書き連ねるのは不躾です。私の猜疑心を非難するのは筋違い。
「物流の受付」の仕事と言っても、匿名では証拠にならない。引きこもりでもエリートやセレブに成り済ませるのがネットだし、拙ブログにもそんな者が現れた。この記事と在日犯罪を絡められるのは大迷惑です。

 貴方が本当に「通りすがり」なら、前回のレスは失礼致しました。しかし、「通りすがり」のHNでのアラシは何度かあったし、暇そうな成り済ましサヨクが殆ど。ブログを開設したことのない人に、アラシを受けた管理人の気持ちは分らないでしょう。
返信する
Unknown (通りすがり)
2015-06-01 13:38:28
凄く意外な反応です。驚いてます。
夜勤の休憩時間にコメしただけですし。
本当に初めの通りすがりですよ。
「くもり」なんて知りませんよ!
貴方の猜疑心は大ハズレですよ。
わけを話すと,こうなります。
昔起きた女子高生コンクリート殺人事件ってありましたよね?実は先日,あの事件に関する掲示板で,スレ内の会話の流れから[カムイ伝]の話を出してきた人がいたんです。あれほど悲惨な,しかも現実に起きた事件に対して漫画の話なんか出されてムカついたので「カムイ伝なんて,あれは漫画だし所詮は作り話じゃん」と,相手に反論コメントしてやったんですよ。
そしたら相手が「カムイ伝は漫画とは言え実話をモチーフにした作品だ!」と,
えらい勢いで突っかかってきたんです。
だから私も「あんなの左翼の階級闘争作品に過ぎん!大体あの事件の犯人の一人の溱伸治の両親が共産党所属の共産主義者で,白土の父親も共産主義者…この偶然を知っていて白土作品を出したのか?」と,要約すれば上記の内容コメをして相手に反論返してやったんですよ。
その後で,何となく白土作品を少し検索してたら,偶然ここに行き着いただけです。読んで見て概ね私と意見を同じくすると思ったんで嬉しくなってコメしただけですよ。因みに,その掲示板は爆サイ西東京雑談板です。繊細は,そちらを見てみれば私が嘘ついてないのが解ると思います。
私と相手のレスが見れるはずだから。
長くなりましたが,そういう事なんです。つまり私は本当に通りすがりです。貴方は疑い過ぎですよ。私が仕事で怠慢かどうかは,ご心配無く。ミスも無く,やるべき事はやってますし(物流の受付)休憩時間にスマホからコメしただけです。因みに私が女子コンクリ殺人事件に関心持つ理由は,あの事件は在日絡みじゃないか?と疑っているからです。では長文失礼。
返信する
通りすがり氏へ (mugi)
2015-05-31 20:58:59
 2007-01-27付けの記事にコメントとは、とても「通りすがり」とは言えませんね。前にコメントしてきた「くもり」なる者は、この後もHNを変えて書込みをしていた。人権の言葉を振りかざしていたことからも、右派ブログ荒らしに精を出すサヨクだと見ています。サヨクにとって余程この記事は不快らしい。

 白戸の父が共産主義者だったのは、私もwikiで知りました。彼は「特高警察の拷問の後遺症で脊椎カリエスを病んでいた父に代わり、山仕事や力仕事で家計を支える」ほどなので、苦労人だったのは確かです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E5%9C%9F%E4%B8%89%E5%B9%B3

 ただ白戸が、「父親の為に作品を描いた人であり、決して自分の為に描いたわけではない」と断言した根拠はありますか?まさか白戸が自伝で述べていた訳ではないでしょ?貴方の憶測や願望的解釈では?あれだけの作品を生み出すほどだから、自分の才能を活かしたいという野心もあったはず。単に父のためだけに描いていたとは私には思えません。
 体制側権力への憎悪は左翼の習性でしょ?飯のタネだし、反権力を気取りながら結局は一番カネがあって強い勢力に付く。

>>それでは深夜に失礼しました m(_ _)m

 日曜日01:40の書込みに断りを入れずとも結構。返って白々しい印象を受けます。

>>夜勤中なもんで…(^◇^;)

 わざわざ「夜勤中」の言い訳を入れるのも怪しい。働いていないことを隠すため、掲示板などで無職暇人が「夜勤中」と嘘を言うのはよくあること。本当に夜勤中だったとしても、勤務中にこんなサイトを見ているようでは怠慢。
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Unknown (通りすがり)
2015-05-31 01:40:10
初めまして…。
白土三平の作品に見られる左翼的階級闘争の色は父親の影響でしょうね。
白土の父親が共産主義者だったらしいですし,実際に特高警察に捕まって拷問まで受けたって話ですし…。
私に言わせれば白土三平という漫画家は結局は父親の亡霊から逃れられず,父親の為に作品を描いた人であり,決して自分の為に描いたわけではないってことです。
白土本人は自覚すらしてないでしょう。
認めもしないと思います。それだからか彼の作品には体制側権力への憎悪を感じるんですよね。
80年代頃まで漫画界もリベラルな左翼的傾向ね作品が多かったのかどうかは,判断しかねますが,もしそうなら,そういう作品が受けたというなら,それは戦後の教育に要因があったのでしょう。
白土作品について「歴史洗脳」「単なる左翼作品」とするコメントが見られますが,それ等の意見に私も概ね同意します。
それでは深夜に失礼しました m(_ _)m
夜勤中なもんで…(^◇^;)
返信する
すす氏へ (mugi)
2014-10-07 21:58:57
 わざわざ7年前の記事にコメントを有難うございました。人の感想は様々ですし、この復讐劇は私には痛快よりも後味の悪さが強かった。領主を倒したのは見事でも、最後は発狂してしまう。このまま生涯を終えたと思わせるラストは衝撃的でした。

 確かに時代の流行もあり、80年代までは左翼臭のある漫画が主流でした。中でも白戸作品は左翼臭が強かった。最近の漫画は見ていないので知りませんが。

>>ちなみに人間を襲うようになったのは狼じゃなくて山猫です

 仰る通りでした。お恥ずかしい。あれだけ大きな山猫が日本にいたとは思えませんが、記事にある狼の箇所を訂正致しました。
返信する
Unknown (すす)
2014-10-07 16:00:53
うちにもありました赤目、好きな作品です。

なんの才能も力もない百姓が権力者に長い年月をかけて巧みに復讐するというのは痛快に思いました。

まあ左翼臭のする作品ですが80年代くらいまでどの漫画も左翼っぽいのばっかだったと思います。

まあ時代の流行でしょうね。

ちなみに人間を襲うようになったのは狼じゃなくて山猫です。

返信する
Re:ありがとうございましたー (mugi)
2009-10-11 20:23:15
>スナトさん

 上記の「くもり」氏のコメントから、白土劇画を持ち上げた学者連中もいたことを知りましたが、その学者達がどのような賞賛をしていたのか、具体的な論文を私は未見なので、内容については何とも言えません。コメントからして、どうも貴方自身のほうが詳しいようですね。
 そして記事にも書きましたが、カムイ伝を見たのは2巻のみだし、白土の作品はこれ以上関心もないし読みたいと思わないので、別サイトで検索する気もありません。

 貴方の仰るとおり、中国の古典には残虐な処刑が見られるし、白土に限らず左翼は総じて親中派の傾向があります。さらに「日本書紀」は中国の歴史書にかなり影響を受けた正史ゆえ、似たような残虐行為が書かれているのやら。武烈天皇は実在も疑われていますよ。
 ただ、カニバリズムの話は西欧や中東の古典にも見られ、わざと子供を殺し、その肉を親に食べさせるという話はあります。
返信する
ありがとうございましたー。 (スナト)
2009-10-11 18:40:30
ご返答ありがとうございました。

>白土劇画を持ち上げた学者連中もいたというから~
…あれ?えーと持ち上げてる部分って生産面とか工業面とか土地の風俗、動物の生態系等の描写を絶賛してるだけじゃなかったんですか?
…という話をチラッと別サイトで見たような…。
あの極端すぎる身分制度の表現も絶賛しているのですか!?
まだカムイ伝に触れてから日が浅いもので…。無知ですみません。

あと「赤目」という作品、以前「ホラーM」(←うろ覚え)というホラー系雑誌で読んだ事があります。妊婦の腹の子が男か女か確かめる目的だけという若殿の行為は、昔読んだ「封神演義」の小説に出てくる商王が妖婦ダッキにそそのかされ妊婦の腹を割いたというのととてもよく似ています。
そもそもそういう残虐な処刑(?)は中国のほうが多いと思うんですか…。

白土三平は親中派なのかな…。

あ、でも「日本書紀」の中で武烈天皇も同じようなことをしたとも書いてありますよね…。
武烈天皇の残虐の行いには諸説ありますが。
返信する
Re:記事から2年ほど経ってますが… (mugi)
2009-10-07 23:05:34
>こんばんは、 スナトさん。
 私は4年前の記事でも全く失礼とは思いませんし、拙ブログへのコメントを有難うございました。

 仰るとおり映画「カムイ外伝」が公開中ですが、私はまだ未見なので、この実写版については論評は出来ません。しかし、私が読んだ他の白土作品も史実について、かなり疑問の多い傾向があります。そして貴方の書かれたとおり、江戸時代以前から身分制度はあったし、士農工商の言葉も中国が起源です。「穢れ」もまた江戸時代よりずっと前からあり、日本に限らず他国でも見られ、其のことも以前エントリーにしています。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/d1de2f132a0c00c986b6b237e2afde4c

 白土三平ファンサイトのご紹介、有難うございました。このHP管理人と拙ブログへのコメンター「くもり」氏が同一人物か確認は不可能だし、単にハンドルが一致しただけかもしれません。同一人物であろうとなかろうと、劇画をそのまま歴史書と受け取るのは困ったものです。「くもり」氏も上記でコメントしていますが、白土劇画を持ち上げた学者連中もいたというから、日本の学者の質はどうしようもない。
返信する
記事から2年ほど経ってますが… (スナト)
2009-10-07 19:02:07
こんにちは、はじめまして。
はじめに、二年も前のブログ主の記事にコメントするのもどうかなーとは思いましたが、
失礼とは思いつつ、あえてコメントさせていただきます。

現在カムイ伝のスピンオフ作品「カムイ外伝」が実写化され、公開されていますが、この作品からカムイ伝を知りました。
読んでみると史実をあまりにも身分制度を曲解、もしくは極端すぎるまでに表現してるんではないかと思いました。
それで、カムイ伝の内容と史実の矛盾点を調べているうち、貴殿のブログにたどり着きました。

歴史には興味があったのでついで、という感じで身分制度も少し調べたことがあります。
そうすると、江戸幕府が身分制度に号令をかける以前に身分差別というのはあったんですね。

それに幕府が制度化したということで。(…とっとちが追うかな?)
昔から「穢れ」に対する嫌いはあったんですね。(牛馬の毛皮を扱う人たちに対して等)

あと、ブログ主さんと論争(?)されてたくもりさんという方と同じ名前の人が運営しているサイト、私知ってますよ。
別人かもしれませんが…。
白土三平の作品についていろいろ書いています。リンク、とりあえず貼っておきますね。

http://homepage1.nifty.com/kumori-hibi/sirato01.html

あと本当に、すみません、失礼しました。
私のコメントはスルーして下さって構いません。
返信する
再度コメント、ありがとうございます (mugi)
2007-02-01 21:32:00
くもりさん、再びコメントをありがとうございます。

>作品の正しい見方を押さえ込んでしまっているのでは?
劇画の見方など十人十色です。彼方は何をもって「正しい見方」を定義するのですか?
白戸ファンといえど、見方は様々でしょう。自分の見解だけが正しい見方と思い上がる傲慢かつ狭量なファンなのですか?この言葉だけで彼方の思考性が垣間見えますね。
私は「人皆偏向」とは思いません。人間は複雑で多様性に富むものであり、少数でもバランスの取れた見方が出来る方もいます。偏向が激しいのは狂信者。マルキストが偏向しているも共産主義という“欠陥宗教”を、未だに信仰しているから。

この作品の発表された数年後に学者たちがヨイショしたというなら、彼らは白戸より遥かに悪質かつ学者の責務を放棄した連中ですね。
学者なら史料文献を手にする機会は誰よりもあったはず。にも係らず、何が真実か学術研究もせず、人気劇画家の作品を讃えた。それなら戦前ろくな研究もせず、ひたすら皇国史観を書き連ねた学者と全く変わりない。右か左に奉仕している学問に過ぎません。
もちろん何処の国にも御用学者はいますが、このような学者どもは時代と共に弾劾され、葬られて当然の輩です。

私が記事にした馬鹿講師が教鞭を取っていた時、既に'80年代となってましたが、一応彼は一流大学卒業でした。このような愚かな研究者や学者がかつては大手を振っていたのです。

こちらも突っ込みをさせていただきますが、彼方のコメントは2回とも、特に1回目は空行なし長文で極めて見にくいものでした。長文コメントは一向に差し支えありませんが、ネット初心者でもないでしょうに、他のコメンターの方々のように見易く改行なり空行を空けるなりの配慮がなかったのは残念です。ま、元から突っかかるのが目的だから、まとまりを欠く文章となるのは当然でしょう。

他人のブログ記事に「批判するのは如何かと」と何とも歯切れの悪い(「書くな!」とは言えないのでしょう)突っかかりだけなら、小学生でも出来ますよ。言い訳がましいコメントをしても本音など分かる。
日本は言論・思想の自由があり、白戸の劇画を讃えたり擁護する自由はありますが、同時に批判する自由もある。彼方は「歴史の空気を正しく知るためにはかなりの勉強が必要」と仰いますが、たとえ勉強しない人でも意見する自由があるのをお忘れのようですね。
ただ、白戸をヨイショしていた学者がいい例ですが、勉強したところで思い込みからモノが見えない人も珍しくもない。

昨日04:03:31、今日02:53:23の深夜に2度のコメントをされるくらいなので、彼方は時間に余裕のある方とお見受けいたしました。白戸作品や当時の歴史をかなり勉強されているでしょうから、是非ブログを立ち上げて、自説を開陳さなっては如何でしょう?期待しております。
返信する
こんばんは (くもり)
2007-02-01 02:53:23
とても丁寧な返答ありがとうございます!いえいえその通りだと思います。マルクス史観論者の作品ゆえ悪質だ、という単純な先入観で作品の正しい見方を押さえ込んでしまっているのでは?ととってしまったものですから。あと「偏向劇画」言葉自体からは私も人皆偏向と思っているものですから引っかからなかったのですが、本文の流れから併せて突っかかってしまった次第です。

ただ一つだけ横槍を入れさせていただくと、学者までヨイショはこの作品の数年後のことです(大きくなるのは10年以上後でしょうか)。この作品発表の当時はやはり子供たちに大きな衝撃を与えたようです(といっても一部ですが)。当時としてはありえない考えですが白土三平はやはり大人を意識してこの漫画を描いていますね。「目的に生きている人間はその目的を失ったとき精神が壊れる」という難しい要素は子供には理解が難しいですからね。自分で書いておいてなんですが私も「もしかしたらこの作品は読者(子供)無視かも」とか考え直してます(^^;。作品表現に誇張はつきものですが、その多さが批判の対象になるのは仕方がないとも思います。ご存知の通り白土三平の目論見は成功し、この後漫画は評論の対象となり、大人漫画表現へと発達していくのですね。勉強になりました。ありがとうございました。
返信する
初めまして (mugi)
2007-01-31 21:57:05
初めまして、くもりさん。

作品を書く以上勉強するのは当り前であり、劇画家ばかりか作家や学者にも勉強不足の方がいますね。もし白戸が勉強家なら、何故あのような作品を書いたのか?史実を知りながら、史実と異なる時代劇画を描いたのか、その意図はどこにあるのか、私は不可解です。私から言わせれば、モノを知らずに書いた劇画家よりも遥かに悪質です。卑しくも彼もプロの漫画家なら、人気のある自分の作品が社会にどのような影響を与えるか考慮しなかったのなら、文化人として無責任極まりない。
彼は果たしてリスクなど負っていたのですか?彼の作品は当時学者までヨイショしていたのですよ。

>歴史の粗を見つけることは誰にでもできます
それなら白戸や私、彼方もやってますね(笑)。作品を書いた以上、批判があるのは当然であり、批判を受ける覚悟なければ漫画家として務まらない。批判を如何なものか、という意見こそ、如何なものだと思います。擁護としても拙劣なやり方でしょう。
現代、奴隷制は人類史の暗部とされてます。だが19世紀までは世界中で当り前だったのですよ。同じく階級制も普通だった。現代の歴史家及び知識人で讃える人はいない。それを昔は当り前だったから、「今」に沿った批評をするのはどうか、と言う者もまずいない。人間の価値観など、時代により大きく変わる。あなたの意見は奴隷制を何とか擁護とする者(一部あり)の見解と基本的に同じです。

>45年前の、子供に真実を隠す世論の中で
45年前といえ戦後ですよ。当時の世論だけが子供に真実を隠していた訳でもないでしょう。何をもってそのような結論を下すのですか?
ちなみに私が教育を受けた'70年代の教科書には「家制度により個人の創造性は押し潰されていった」などと記載されてました。

「偏向劇画」の表現が気に食わなければ、「(歴史)歪曲劇画」と言い換えましょうか?むしろこちらが相応しいですね。
もちろん私のブログもある人からすれば「偏向ブログ」だろうし、あなたの書込みも「偏向コメント」になるかもしれない。十人十色なのが人の意見なのだから。

どの人間でも大なり小なりの信念は持っており、その信念で漫画なり著書の作品を残す。それが無ければ作品は書けませんが、人の口に扉は立てられぬもの。作品への評価も時代により大きく変わるのが人間社会の常なのです。
返信する
はじめましてー。 (くもり)
2007-01-31 04:03:31
現在から日本の歴史を意識して昔の白土作品を読むとやはり異論を唱えたくなりますよね。そこのところ擁護もできないのですが、当時から白土三平は勉強家で洋書もよく読んでいて、フィクションとして、私が思うにエンタテイメントとして日本の歴史とは関係なく「人間」を描くのが好きだったようです。事象としても日本より大陸で多いネズミの大量発生やバッタの集団行動を描いておりますし、「犬万」(カムイ外伝などでよく出てきます)に到ってはアメリカ大陸のミミズの効用を忍術として使用してますから。
中学の時に「はだしのゲン」の作者が学校に公演に来たのですが、その時氏が「中国での日本軍の蛮行」として話していた内容がこの「赤目」で白土三平が描いているそのままであったことが記憶に残っています。ということは当時の人間がこの情報(元ソースは判りませんが)に触れたときの衝撃度はかなり高かったようですね。今となっては歴史的情報が世間に溢れておりますので「今」に沿った作品の批評もいいと思いますが……歴史の粗を見つけることは誰にでもできます。ただ歴史の空気を正しく知るためにはかなりの勉強が必要だと思います。45年前の、子供に真実を隠す世論の中で、リスクを一人で背負い批判の中で人間の負の部分を知ってもらおうと生み出した作品に対して「偏向劇画」と批判するのは如何なものかと思いますです。。まあこれが現代の最新作でしたら私も歴史の「負」にも当たらないくだらない作品だと思うでしょうけど(^^;
駄文失礼しました。
返信する
コメント&TBありがとうございます (mugi)
2007-01-29 21:20:26
>知足さん
仰るとおりメディアや劇画まで使った歴史洗脳は今始まったことでなく、根が深そうですね。
一昨年、'60年代に東京で活躍していた元KGB要員ミトロヒンが著書を出してますが、それによるとマスコミ界に多数協力者がいたとか。
もちろん旧ソ連だけでなく、アメリカ、中共も同じ工作をしているのは明らかでしょう。
返信する
Unknown (知足)
2007-01-29 14:37:48
私も昔「カムイ伝」は読んだことがある。あの頃から歴史洗脳は流行し始めていたのかも。
返信する
コメント、ありがとうございます (mugi)
2007-01-28 20:56:44
>凛乎さん
仰るとおり白戸三平の忍者マンガは面白いですよね。ただ、これも誇張がありすぎる。
まさか白戸三平も子供向けに「赤目」を書いた訳でもないでしょうが、日本史の予備知識がない人が見れば、あれを事実と思い込む方もいると思います。


>こんばんは、スポンジ頭さん。

結構教師に白戸三平ファンがいたのですね。記事にした講師も今頃まさか教授になっていたならば、恐ろしい。
卑しくも教育者が創作劇画を史実を描いたとして勧めるのは、困ったことです。最近の教師の中には「新聞を教育の場に」と、新聞を学校教育に取り入れるよう活動している者もいますが、公正を欠く新聞ではこれも問題。
胎児が男か女か、どのような状態でいるか見たいだけで妊婦の腹を斬る領主など、シナの話のようですね。マルクス史観に取り付かれると、日本史とシナ史もごっちゃになるようで。


>キモトさん
日本の民話に登場する狼はあまり獰猛な印象はないのですが、二ホンオオカミが絶滅して久しい現代は狼といえば悪いイメージばかりですね。映画や小説に出てくる狼が悪役中心なのも(狼男など)、影響しているかもしれません。


>こんばんは、Marsさん。

マルクス主義を取り入れた国々の実態は、共産党の凄まじい階級体制と反革命分子と見なされた人々を押込めた収容所の増設でした。
昔の封建領主と共産党幹部では、どちらが民衆に惨かったのか、書くまでもありませんね。

欧米人が旧日本軍を非難するのは、自分たちの植民地支配の歴史はもっと人道的だったと喧伝か、特定アジアの提灯持ちが動機でしょう。
欧米人の人権など、所詮外交の具に過ぎません。

またに犬HKと罵られるだけある放送局の番組に相応しい。被害者が日本人である奴隷貿易を何故取り上げないのか、手落ちもいいところ。
キリシタンがスペイン、ポルトガル人の援軍を期待していたのは哀れですね。いざとなれば異民族など構ってくれないのに。
これって現代も変わりない。日本人キリスト教徒または少数のムスリムにも、「自分たちには数億の信者が付いている」と言う者もいますよ。かつてのキリシタンの轍を踏んでいるとしか思えない。

キ○スト教も様々なカ○トがあり、アメリカで集団自決する教団もありましたね。
返信する
酔いどれ小○魔 (Mars)
2007-01-28 20:15:28
こんばんは、mugiさん。

マルクス史観的に言えば、過去の封建主義等は民衆からの搾取の歴史といいますが、果たして、マルクス主義を取り入れた国々がどうなったのか。
搾取する側が封建君主から、一部の貴族や王族に変わっただけで、何がかわったというのでしょう。
更に、自由や人権に対する抑圧といえば、より悪化した部分も少なくないでしょうね。

>「このような残酷な手口は~
mugiさんも仰るとおり、他民族に対する残虐行為といば、漢民族の十八番でしょう。
更に重要なのは、事実無根の場合もあるにしても、日本の蛮行が過去のものであるのに対し、中共、北朝鮮等の人権弾圧は現在進行形ですよね。
何かしろ、日本を非難する欧米人も、商売の為なら、人権も何もあったものではないですね。

先日、N○Kで「島原の乱」を取り上げていた番組を拝見したのですが。
スペイン、ポルトガル人との交流、援軍を期待していた、とまでは紹介していましたが、奴隷貿易までは扱っておりませんでした。
また、反乱に加わりながら、脱出しようとした者を、本人は殺さず、妻子を殺し、牢獄に入れた、最終的に集団自決したことをみると、キ○スト教も、カ○ト教団とあまり変わらないように思えました。

酒に酔いしれている幸せを、先人への感謝を忘れたくないものです。
返信する
困ったちゃん (セリ摘み王キモト)
2007-01-28 07:43:50
確かに「みの踊り」は島原の乱のきっかけとなった松倉勝家がおこなった処刑方ですね。



しかし、難しいのは狼ですね。





江戸時代、狼は信仰の対象であり人を襲う事はほとんど無かったのですが明治に入って環境破壊が進み狼達は家畜を襲う様になりました。



狼が人を襲うと言われる様になったのは20世紀になってから、しかも二ホンオオカミが絶滅してからです。
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私の教師もファンでした (スポンジ頭)
2007-01-27 22:59:18
こんばんは。

私の小学校時代の教師もヒダリマキ+白土三平のファンで、私も「カムイ伝」をほんの少しですが読み、江戸時代はろくでもない時代だと思った時期があります。
「みの踊り」は島原の乱を引き起こす元になった松倉勝家がキリスト教徒以外の百姓を拷問するのに使用しています。但し彼は幕府に島原の乱の責任を問われて江戸時代大名で唯一の打ち首にされるので、むしろ過酷な扱いは犯罪と考えられていたことを示しています。
「生き埋め」に関してはシナ歴史ではありますが、日本の歴史で聞いたことがありません。どこの誰がそんな刑罰をしていたんでしょう。その日本軍の蛮行ってシナ人の行動そっくりなんですが。
白土三平は才能があると思いますが、創作を実際の日本歴史の暗部として書くのは困ります。
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忍者漫画としては (凛乎)
2007-01-27 22:48:30
「赤目」は今読むと、酷い作品ですよ。「カムイ伝」は忍者漫画としては面白いと思うんですけど。でも今になってみれば、白土三平の作品はただの左翼漫画なんですよね…
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