トーキング・マイノリティ

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もし、新聞がなくなったら…

2008-04-16 21:55:41 | マスコミ、ネット
 今月12日、河北新報は全一面を使い、同6日に都内で行われた日本新聞協会公開シンポジウムの特集を組んだ。この発表会のテーマは「もし新聞がなくなったら-混迷時代の座標軸」。新聞の大見出しにも「ネット社会、存在どう示す」とある。パネリストはヤフーシニアプロデューサー・川辺健太郎氏(33)、ノンフィクションライター・最相葉月氏(44)、昭和女子大学長・坂東真理子氏(61)、朝日新聞社編集担当兼ゼネラルマネジャー兼東京本社編集局長・粕谷卓志氏(56)の4人。コーディネーターは上智大文学部新聞科教授・橋場義之氏(60)。

 興味深いと思った出席者たちの発言をいくつか挙げてみたい。業界内部の自画自賛とネットへの敵意と蔑視が露骨に表れており、新聞御用文化人たちの馴れ合い意見発表の場という感もある。

橋場氏:新聞は非常に苦しい状況にある。まず、若い人が新聞を読まなくなっている。2つ目はインターネットが爆発的に普及してきた時代に、新聞がどう位置づけられるのかという問題だ。さらに世界全体の激変の中で新聞が信頼に値するものになるには、どうすればいいのか。新聞協会の調べでは1997年の5,376万部が読者数のピークだった。年々減少し昨年は5,200万部。十年間の減少率は3.2%。定期購読をしない人は99年の7.5%が昨年は13%に増えた。内閣府の調査では10-29歳で、全く新聞を読まない人は6年前の22.3%から昨年は47.7%に増加した…

最相氏:若い編集者や別業種の若い人と会って「新聞に書いてあったでしょう」と言うと、「読んでない」と言われ、ショックを受けている…

川辺氏:若い人はコンテンツだけではなくネットが持つ双方向性、コミュニケーション性に興味を持っているのでは…紙は便利なので最後まで残るだろうが、少なくはなっていく…

坂東氏:大学1、2年のうちは新聞を読まなくても、生活や勉強が出来る。新聞に問題があるというより、世の中で起こっていることへの関心の度合いが薄れてきたのではないか。社会や政治の動きに興味ない人たちが増えてきている…新聞が1日1回、情報の整理や仕分けをしてくれるのは非常に大きい…新聞の一覧性、記録性は現代でも大きな強みを発揮している・・・ネットで無責任に中傷する人とは違い、新聞は情報を出すまでに手間暇をかけている。なのに新聞は批判される…
 読者を重視しつつ、おもねらない新聞であってほしい。新聞が読者の信頼を得ることとの兼ね合いが難しいが、購読料への依存から読者の顔色を伺って新聞を作るようになれば自殺行為になる。国民も情報を見抜く「情報リテラシー」を自ら身に付ける努力をすべきだ…

粕谷氏:新聞は一覧性とニュース価値、つまり取材と執筆と編集を貫いたクオリティーは負けていない…新聞の大きな強みは正確な情報を心掛け、間違いがないような仕組みを構築している点だ。朝日新聞でも百人の校閲記者が毎日事実関係を確認している。新聞がなくなったなら国が滅びるという意識を持って日々取り組んでいる…新聞はコンテンツを提供する側だが、記事をネットに出した社が責任を持つ。誤報であれば改め、訴訟にも対応する。新聞を商品として発行した社が責任を持つということだ…読者モニター制度で意見を聞くなど、一人よがりにならないような取り組みは各社がやっている。調査報道や権力チェックも大事だ…
 ニュースには読者の好みにも係らず、伝えなければならないニュース、記者たちが伝えたいニュース、読者が知りたいニュースの3種類あるが、そのどれが欠けても新聞は機能を失う。この3点セットを守り強化して、信頼を勝ち取ることが新聞の生き残る道だ。

 特に私が面白いと感じたのが、坂東氏と粕谷氏の主張。女子大学長の前者こそ、新聞におもねっている学者の典型だ。講演料への依存から顔色を伺い、発言しているのかと勘ぐりたくもなる。「情報リテラシー」を身に付けるのこそ、氏自身ではないか?もっとも国民がそれを得たら、各新聞社はさらなる売り上げ減少に繋がることだろう。このような人物が学長に納まっているのは、暗鬱な気分にさせられる。
「新聞がなくなったなら国が滅びるという意識を持って日々取り組んでいる」との粕谷氏の言い分は、もはやペンを持った道化の戯言に近い。こうしてブンヤは国民に新聞を読まずにいられない状況に追い込み、強迫観念を煽るが、これは巧妙な洗脳の変種でもある。ネットがない時代でも、新聞の社会面やTV番組覧のみ見る若者など珍しくもなかった。新聞が商品なら、買わない自由もあるとなる。

 マスコミの暗部を鋭く暴いた「マスコミの嘘と裏」というサイトがある。この中の「新聞が隠してる大きな秘密とは?」は実に興味深い内容だ。新聞の発行部数も“大本営発表”的であり、かなりの新聞が家庭に未配達、新聞販売店から直接ゴミとして捨てられているというのは、ネットでもなければ知りえない情報だろう。資源の無駄の最たるものだが、地球温暖化と違い新聞で取り上げられるはずはない。

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5 コメント

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ねらー嫌い (Mars)
2008-04-16 22:57:43
こんばんは、mugiさん。

私も例に漏れず、自分の事を棚に置きながら、他者を批判する者です。が、本当に、新聞業界の危機感のなさといえば、彼らが常日頃批判する、政治屋・官僚と同レベルのように思えてなりません。
また、若い人が新聞を読まなくなっている現実を、自分自身ではなく、他者に原因を求めるなんて、彼らが阿る、自称アジア国家の方々のようですね。

>新聞の一覧性、記録性は現代でも大きな強みを発揮している
確かに、新聞えを保存しておけば、数ヶ月後でも、確認する事は可能ですが、数ヶ月も保存するには、それなりのスペースが必要となるでしょう。
また、特定のキーワードで内容を探そうと思っても、すべての新聞を開いて探す必要があります。
それに比べ、電子データだと、特定のキーワードで検索が簡単ですし、更に、複数のキーワードで検索するとなると、人手では難しいでしょうね。

>新聞がなくなったなら国が滅びる
今現在、新聞がなくなって、国が滅んだ例を私は存じませんが、先の戦争のように、新聞が国・国民を危うくした例ならば、幾つかあげられそうです。

>誤報であれば改め、訴訟にも対応する。
強制連行、従軍慰安婦、沖縄集団自決、南京大虐殺、オウムによる弁護士殺害、NHKの改編問題など、根拠が薄くなっても、言いだしっぺが嘘だと言っても、誤報であり、訂正したという事があったのでしょうか?
また、仮に、謝罪した事例があったとしても、変な言訳をつけて、自らの誤りを認める事ができない方がほとんどのように思われるのですが、、、。

現実として、ネットの危険性も、既存のメディアと同等か、それ以上のものがあるのも事実です。そして、それに安住する者が自己を振りかえず、胡坐をかいているようでは、規制の声があがるのも無理はないと思います。

本当に、いつまでも、一方的な対立軸で見ているようでは、その溝は簡単に埋まりそうもありませんね
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Unknown (ルイージ)
2008-04-17 11:41:07
私は印刷業界の端くれに席をおいているので
紙媒体の衰退は実際イタイのですがw

新聞の存在意義は紙媒体にしかない、
という訳ではないはずなんですがね?
返信する
コメント、ありがとうございます (mugi)
2008-04-17 22:02:56
>こんばんは、Marsさん。

今回のシンポジウムで学者が2人もいたのが意味深だと感じましたね。コーディネーターが文学部新聞科教授で、“新聞科”なんて学科があったのは驚き。新聞の危機の原因を、ネットと社会や政治に無関心な人たちに求める学者さんたちこそ、勉強不足でしょ。
学者といえピンキリですが、メディアから支援を受ける御用学者も少なくない。

「新聞は情報を出すまでに手間暇をかけている。なのに新聞は批判される…」に至っては、甘ったれもいいところ。金で売る“商品”なのだから手間隙かけるのは当り前。手間をかけているので、批判は免除すべしと言っているのと同じであり、己が批判される立場になるや、すぐいじける精神的虚弱体質が表れてる。これではネットで無責任に中傷する人と全く同じこと。

「新聞がなくなったなら国が滅びる」など、何を考えているんだ、と言いたくなりますよ。独裁国家さえ新聞はある。こんな脅し文句で読者を煽れば、未だに新聞を素直に見てくれると思っているのでしょうか。
朝日新聞が「訴訟にも対応する」のは間違ってはいないと思います。今のところスポンサーに不足しないので、多額の費用が必要な訴訟など怖くもない。怖れているのは、読者から見放され購読してくれなくなること。

仰るとおり、ネットの危険性はかなりあり、だから道徳を口実に規制を企てようとする者もいます。ネットイジメ、人権やらを持ち出してネット規制を呼びかけたりする。その類に限り、チベット問題はスルー。

他のブロガーさんも「アメリカの新聞の凋落」という記事を書かれていました。日本の新聞協会はまだまだ危機感がなさ過ぎる。
http://historia1492.blog98.fc2.com/blog-entry-245.html


>ルイージさん

河北新報の購読料が一月3,007円(夕刊なし、口座引き落とし)とは、安すぎるとさえ思いますね。
配達込みでこの価格を維持できるのは、かなり無理な負担があるはず。しわ寄せを受けるのは末端の人々であり、新聞本社記者ではありません。

仰るとおり、新聞は紙媒体以外にも存在意義はあるはずですが、これまでのやり方ならジリ貧になるのは確実であり、既になりつつあります。ネットを敵視するのではなく、むしろ連携した方がいいと思うのですが…
本好きの私からも、印刷業界が衰退、活字文化が廃れる社会は想像したくありません。
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新聞の編集 (とら)
2008-04-19 00:53:02
こんばんは。その記事は新聞協会が主催だから河北新報だけでなく朝日や読売など各新聞が独自に編集して紙面をつくっていますね。パネリストの発言を編集している場所がそれぞれ違っていて、読み比べるとその新聞社の姿勢がわかります。ちなみに新聞販売に携わっておられる方がこのイベントに参加して録音していたようで、以下のアドレスでテープを起こしたものが全文読めますよ。紙面と読み比べるとまったく違うのがわかって参考になります。
http://minihanroblog.seesaa.net/
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NIE (mugi)
2008-04-19 23:18:18
>こんばんは、とらさん。

紹介されたサイト、とても参考になりました!
パネリストに鋭い意見をする質問者もいましたが、河北新報は全く載せていない。NIE(Newspaper in Education)という、すべての教室に新聞をということで全国の490の小中学校、高校や大学で、新聞を使った授業の取り組みが始まっているのだから、危機感が薄いのは当然ですね。新聞は教育養成紙として延命を図っているようで。新聞がなくなって困るのは官僚や政治家というのも意味深です。

私も権力者や読者におもねらない良質なジャーナリズムは必要だと思いますが、かなり難しいですね。
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