その一、その二、その三、その四の続き
何事も完璧主義者、自分の思い通りにならないと癇癪を起すことがあるフレディの性格は他の伝記にも描かれていたが、パートナーにもそれが向けられる時もあった。その死まで友人関係にあったメアリー・オースティンと同棲していた頃、花瓶に入れた花と配置が気に入らなかったので、花瓶ごと花を捨てたことがこの本に載っていた。DV男だったとは思いたくないが、メアリーもさぞ苦労したことだろう。
ジムに対してもその姿勢は変わらず、何かで腹を立てたフレディがジムが植えたチューリップを全部引き抜き、当たりに投げ散らかしたこともあったとバーバラは証言している。フレディの言いなりで、いいように振り回されるジムをバーバラは気の毒に思っていたようだ。まだ売れない頃、バンドメンバーのブライアン・メイが十二指腸潰瘍でダウンしたのも、フレディの性格も影響したはず。
一方で気さくで礼儀正しい面もあり、フレディの両親に会った人も礼儀正しさを褒めていた。家庭内のことではきちんとしており、「とても“英国人”らしかった」とはジムの評。19世紀半ばに書かれたトマス・ブルフィンチの『ギリシア・ローマ神話』にもパールシーについて、「その清潔な暮らし方や誠実さ、融和的な態度でも彼らは際立った存在」と記述があり、“インドのユダヤ人”は英国人以上ではないか。病気で倒れたブライアンを励ましたのもフレディだし、その十数年後は立場が逆になることを、彼ら自身も想像できなかった。
この本には他のメンバーのこぼれ話も載っており面白かった。美男のロジャーがプレイボーイなのは有名だが、既婚者の他のメンバーも浮気はしていた。ブライアンは無名時代から交際、結婚した最初の妻と別れ、仕事で知り合った女優アニタ・ドブソンと再婚するが、アニタに出会うより前から馴染みの愛人はいたという。まさに“Brighton Rock”を地で行った。拙ブログを見てクイーンファンになった男性ブロガーさんがいて、彼の「ロジャーに限らず、ブライアンもプ○イ・ボーイに見えるのですが」という感想は当たっていた。
意外だったのはジョン・ディーコンのエピソード。フレディの死後彼は深刻なうつ状態に陥っていたそうだ。僅か11歳で父を失った時の感情の記憶が甦り、ラップダンスクラブに通い詰めたこともあった。そこで知り立った25歳のダンサーと付き合うようになり、マンションや自動車などの高価な贈り物を買い与えたとか。この交際の破局後、彼は妻子との静かな暮らしに落ち着く。贈った車はまさかボルボ(※ジョンの愛車)ではないだろうが、ジョンもまた、“I want to break free”だったのだ。古女房から自由になりたい?まったく男というものは、、、
フレディの記念碑の中でも、モントルーのレマン湖のほとりに建てられた像は有名。アルバム『Made In Heaven』のジャケットにもその写真が使われ、1996年11月25日、除幕式が行われた。この式典に出たブライアンは、こう語っている。
―とても素敵なトリビュートだし、式典はとても感動的だった。でも、僕は突然怒りに襲われたんだ。「僕の友はもうこれしか残されていないんだ。それなのに、皆当たり前のことみたいに感動的だなんて顔をしている。でも実際は、こんなのは友の形に造られたブロンズの像でしかなくて、僕の友はもういないんだ」って思った(401頁)。
フレディとの日々を振り返り、バーバラは次のように語っている。
―私たちはどちらも、幸せになろうと頑張りすぎたのね。幸せではなかったから。酔いどれて、コカインやって、道化を演じて、出来るだけ多くの人と寝る。まるで、それでもまだ生きていられるかどうかを試すみたいにね。一種の自殺願望だわ。でも、結局、もっと孤独に、もっと空っぽになるだけなの…(273-274頁)
「僕はスターになるんじゃない、伝説になるんだ!」と、駆けだしの頃からフレディは宣言していたという。まさに彼の若すぎる死によりそれは実現された。彼の生前よりもバンドは大きな存在となり、フレディを直に見たことのない若い世代にも歌は聞きつがれている。
◆関連記事:「Made In Heaven/フレディ没後20年目」
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事実は○○よりも奇なりと言いますが。
「歴史というものは専門の歴史家の手で書かれるのが一番良い。戦時中の指揮官は感情的に深くかかわりすぎていて、自分なり関係者の客観的な姿を描写することができず、自らが抱いた偏見のために、彼に仕えた人を傷つけないともかぎらない」
とは、故ニミッツ提督(最高位は海軍元帥)の常套句だったそうです。
人は自分が思っている以上に正直でなく、それを知らない他者が真意を理解するのは、とても難しい事でしょうね。
人が家族を思う気持ちは、おそらく万国共通だと思いますが、単純でないのも、おそらく万国共通だと思います。まして、宗教も絡むとなると。凡人の私には、到底、想像もつきませんし、偶像を崇拝する事が関の山でしょうね。
>古女房から自由になりたい?まったく男というものは、、、
プ○イボーイでない私には分かりませんが、一般的に、男女を問わず、畳は新しいものがお好きなようで、、、。
ま、そんな事が言えるのも、私がそういった柵にないからなのでしょうか。。。
連投スミマセン。
gooに引っかかりました。
ニミッツ提督の常套句を初めて知りましたが、彼らしく謙虚な言葉ですね。検索したらwikiに載っていました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%8B%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%84
ただ、いわゆる専門の歴史家でも、戦時中の指揮官になれば感情と偏見に満ちたことを書くようになります。「アラビアのロレンス」が典型で、彼の自伝『知恵の七柱』は多くの関係者を傷付けました。オックスフォード首席卒業のインテリですが、学識者も当てにならないということ。その彼はこう言っていました。
「人間というものはいわば内乱状態です。したがってそれに調和を与えたり、またそれを一つの論理的全体にすることは不可能でしょう」
宗教が絡まずとも、家族関係は単純ではありません。フレディ以外のメンバーも家族思いでは同じはずですが、一番家族関係が安定していたはずのブライアンも、ロックミュージシャンになったことで揉めたようです。
スターの恋人や妻も苦労しますね。これも体験がないから言えるのでしょうけど、並大抵のことではつとまらないと思います。
「まったく男というものは、、、」は完全に女の視点です(笑)。本音を言えば女の側も古亭主より…以下略
最近でも…
彼の埋葬された、お墓発見!!とか…
男装をしたダイアナ妃とフレディーが一緒にゲイバーにお忍びで行ってた!!とか…
ニュースを賑わす彼は、今でも、人々を魅了し続けてる証拠ですよね。私も、魅了され続ける、その一人です(笑)
ブライアンがプロデュースで、フレディーの伝記的映画も、公開されるみたいなので、楽しみです。
いまだから、話せる、QUEEN秘話とか、盛り込まれてると、嬉しいですね。
QUEENは、今も熱いです♪
これからも、記事UP楽しみにしています。
お久しぶりです。この駄ブログを読まれて頂いていたとは、ブロガーとして光栄です。
宮城の地元紙の国際面にも、故ダイアナ妃のお忍び事件のことが載っていました。フレディ亡き後20年を過ぎているにも拘らず、未だにニュースになるのはファンとしても喜ばしい限りです。
そしてフレディの伝記映画、来年公開の予定ですよね。主演がサシャ・コーエンなのは少し気になりますが(私的には嫌い)、それでも待ち遠しい想い。どんな映画になるのか、今からとても楽しみです。
私の方こそ今度とも、拙ブログをご贔屓いただけたなら幸いです。
唯々御礼申し上げます。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
暫くですね。体調を崩されたそうで心配しておりましたが、回復されたのは何よりでした。何をするにも健康第一ですから。
ブログの性質上、クッキングホイル氏にはかなり嫌がらせがあるらしく、コメント毎にHNを変える者が張り付いているそうです。昨年自称カトリック信者が書込みしており、その者は教会を非難していましたが、実はカトリック成り済まし。それをクッキングホイル氏が見抜いたことがあります。私には全く分かりませんでしたが、旧教を装う新教徒もいるのを初めて知りました。いかにカトリックが堕落しているか、ネット工作もするそうです。耶蘇の宗派争いは本当に呆れます。
クッキングホイル氏が貴方に攻撃的な対応をしたのも、嫌がらせが多くあるため、ナーバスになっていたのかもしれません。カトリック非難=新教徒と疑ったのでしょう。貴方のこの書込みは納得させられました。
「カトリックは、あたかも日本の伝統宗教と共通点があるかのように演出する。こうして信者を獲得する。もしくは、日本社会に好印象を与えようとしています。だから、腹黒いと表現したのです」
新教も旧教も端から日本の伝統宗教と共存する気はありません。ただ、後者は猫かむりには長けており、それだけ狡猾ということ。塩野七生氏はバチカンの男たちは総じて頭脳明晰と評していましたが、頭の切れるワルは実に厄介です。
私の方こそ、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%80%A7%E5%A4%A7%E9%A3%9F%E7%97%87
私も仕事上のストレスからやけ食いをしたことがありますが、やけ食いと「神経性大食症」は違うのでしょうか?少なくとも私はやけ食いをして、もっと孤独に、もっと空っぽになったことはありません。