光陰矢のごとし、の諺どおり早いもので今日でちょうどクイーンのボーリスト、フレディ・マーキュリーの没後20年目になる。もう20年も経ったのか、とファンならずとも感じるだろうが、彼の死亡時には私は別に好きではなかった。名前は知っていたし、歌だけでなくプロモーション・ビデオも見ており、それが返ってフレディを敬遠する原因となった。現役で聞けた世代でありながら、クイーンにハマったのはフレディの死後5年後だった。
クイーンというバンドは中学時代に名前だけは知っていた。後席の女生徒がファンで、クイーンの話をしていたから。ただ、その頃の私は洋楽を聴かなかったし関心もなかった。クイーンやフレディの姿を実際に目にしたのはもっと後で、彼らを初めて見たのは民放「ベストヒットUSA」で映された『Radio Ga Ga』のプロモーションビデオだった。
しかし、この時の印象はかなり悪かった。特にフレディはやけにオーバーアクションが鼻に付くオッサンにしか見えず、一目見てコイツ、フツーじゃないと感じた。フレディがゲイだったことを知ったのは彼の死によってだったが、第一印象からしてそれらしい雰囲気を感じた。さらに胸毛もかなり濃いし、それを誇らしげに見せつけるのも不快だった。後にインドや欧米の女性は胸毛を好む傾向があるのを知るものの、私はモロに毛嫌いしてしまった。
フレディはルックスだけでダメだったが、その側で俳優かモデル張りの美形がいたことはよく憶えている。これも後でドラマーのロジャー・テイラーだと知るが、初めて見た時は何故この人が歌わないのか残念と感じたほど。それでも『Radio Ga Ga』の歌はよかったし、 FM放送からカセットテープに録音した(※1984年当時、ラジオからテープに録る時代)。現代は便利なことにネットで『Radio Ga Ga』PVが見られる。
『Radio Ga Ga』に続く『ブレイク・フリー』は歌だけでなくPVもよかったし、メンバー全員が女装していたのには笑える。英本国や日本ではウケたが、米国では非難されたという。いずれにせよ、フレディにはキモい胸毛のおっさんのイメージが根付いてしまい、好きになれなかった。
1991年11月23日、フレディはAIDS患者であることをついに公表、その翌日に45歳の若さで死去した。訃報を聞いてもファンではなかった私は、あの男ならさもありなん…程度にしか感じなかった。ロック界にゲイが多いのは知られているし、ミュージシャンとして優れているのならば個人の性的志向は問題ない。
フレディの死後、すっかりクイーンのことは忘れており、1996年春、キリン一番搾りのCMに『ボーン・トゥ・ラヴ・ユー』が使われ、いい曲だと思った。ボーカルがAIDSで死んだバンドとして記憶していたが、この曲がよかったので試にベストアルバム『グレイテスト・ヒッツ』を買って聞いてみた。そしてハマった。
『グレイテスト・ヒッツ』を聴いた翌日、続けて『グレイテスト・ヒッツII』も買い、完全にハマった。歌も好きになれば、かつて毛嫌いしていた歌手への見方も変わる。書店に行き、音楽コーナーで見かけたのが『フレディ・マーキュリー、華やかな孤独』(リック・スカイ著、シンコー・ミュージック)。立ち読みしたら、第1章でフレディが何とゾロアスター教徒だったことが載っていた。この箇所を見ただけで即刻立ち読みを止め、レジに本を持っていった。これでかつての毛嫌いは完全に消え失せた。
その二に続く
◆関連記事:「フレディ・マーキュリー ロックスターになったパールシー」
「優秀なる移民」
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私は大変なミーハーなクイーンファンなので、フレディ傾倒は完全にルックスからです。
彼らのコンサートには何度も行ったし、あまり音楽がどう、思想がどう等考えなかったです(その辺のおバカぶりは恥ずかしながら昨日ブログに初めて書いた/20年だから許してという感じ)。
でも、私もそのゾロアスター教徒というのに死後初めて気がついて、こだわり始めました。イランで過ごした時も永遠の火の灯るヤズドにはぜひ行きたいと家族を説得し、拝火致しましたし(苦笑)。不思議ですね、何かが心のなかにストンと落ちたんでしょうね、それまでのフレディとは違う姿が立ち現れるのですから。
二回目以降の記事、期待しております。
先ほど、東京タワーの「クイーンフォーエバー」展に行って来ました。インド時代のフレディ、一枚だけ出ていましたよ。今回、母君の特別の許可を得て初めて提供してもらったそうです。
貴女もクイーンファンだったとは、少し意外でした。前にストーンズ映画を見に行ったというコメントを頂いていたので、クイーンは好みではないのでは…と想像していました。しかし、貴女の記事に軽く目を通したら、生前からの熱心なファンだったのですね。上記に書いたとおり、私はフレディのルックスだけで敬遠していたのが悔やまれてなりません。胸毛だけでなく首毛まであり、初めて見た時は、ドン引きしました(笑)。
ヤズドに行かれたとは羨ましい限りです。フレディファンの中にはヤズドやムンバイ巡りをする人もいるそうで、現地に行けは感想はまた違ってくるでしょう。
私がゾロアスター教に関心を持ったのは、イラン・イラク戦争終結後暫くだったと思いますが、『ニュースステーション』でイランのゾロアスター教徒を紹介していたことがきっかけです。世界史の教科書でも扱いの少ない古代宗教の信者が未だにいたこと自体、ビックリしました。松本清張もゾロアスター教に関心を持っており、『火の路』という小説を書いています。
東京タワーの「クイーンフォーエバー」展、面白そうですね。何とか都合をつけて、行きたいと思います。
私は、某天邪鬼ブロガーさんに嵌められる前は、QUEENの曲は幾つか存じておりましたが、CDも買い漁り、遂には展示会にも行ってきましたが。本当に、某天邪鬼ブロガーさんに謝罪と賠償を求めます(藁)。
また、その展示会ですが、二時間、メイ一杯、写真撮ったり、展示物を眺めたり、シアターを観たりで楽しめました。何でしたら、私が東京を案内してもいいのですが、某天邪鬼ブロガーさんも来られますか??
(私のブログでは、決まらない構図の写真とつまらない駄文で記事を書いてみましたが、よかったら、よっぽどお暇な時にでもお越し下さい(藁))
某天邪鬼ブロガーもキリンビールのCMを見なければ、未だにQUEENにハマらなかったかもしれません。件のブロガーにしてみれば、酒代のみならずCDや関連書籍代も捻出させられる羽目になったので、キリンには謝罪と賠償を求めたい想いでしょう(藁)。
東京タワーの展示会に行かれましたか。本当に羨ましい限りです。今月は絶望的なので、来月に何とか時間を調整して展示会に行きたいものです。東京には出来れば他にも見物したい所が沢山ありますが、今回は行けたとしても、東京タワーのみの日帰りとなりそう。