トーキング・マイノリティ

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お父様!

2022-09-04 21:10:57 | 私的関連

 安倍元首相が凶弾に倒れ、犯人の家庭環境が報じられてから今日に至るまで、旧統一教会報道がなかった日はない。改めて統一教会による政界への浸透と癒着には驚くが、メディアも事情は変わりない。
 統一教会といえば霊感商法を財源とするカルトのイメージが強いが、私も高校2年生の頃にカルトまがいの奇妙な集団に遭遇した時がある。2005年8月の記事「カルト」でその体験を書いたが、その記事を再度引用したい。

 夏休み前の土曜日の午後、街をぶらついていた私に、二十歳前後で銀縁眼鏡をかけた真面目そうな女性が(私もマジメ学生に見えただろう)声をかけて来た。何と言ってきたのかは忘れたが、宗教の話になった。とにかく彼女の神の存在を確信してる口ぶりに、生意気盛りの私は揶揄気味で答えたのは確かだ。
 悪人が大手を振ってるのはいつの時代も変わらない、もし、いたとしても神は沈黙してるだけ、のような事を言ったと思う。私の態度にも係らず彼女は丁重な姿勢で、「もし、時間があるなら××外科の近くに集会所があるので話だけでも聞いて下さいませんか」と誘った。外科を“がいか”と言った彼女に軽い侮蔑も感じたが、好奇心もあり、結局集会所について行くことにした。

 集会所に来てみると、すでに20人くらいが集まっていた。彼らは皆若く、ほとんどが女性だが男も数名くらいいた。別に宗教的な象徴はない20畳位の部屋でござが敷いてあり、部屋の前方に教壇のようなものが置かれていた。私を案内した件の女性は、まもなく先生が来る、と言った。暫らくして“先生”が姿を現した。

 その“先生”は結構太めの中年男で、黒縁の眼鏡を掛け、松本清張のような分厚くめくれた唇が特徴だった。何も宗教画のような秀麗な容貌の人を期待してたのではないが、“脂ぎったオッサン”が第一印象で驚いた。

  太めの“先生”が説法を始めたが、話は面白味に欠け声も美声と言えず退屈を感じた。どんな話だったのかまるで覚えてないが、唯ひとつ「いかに今の世が穢れていて、若者を食い物にしているか」の文句だけは記憶にある。そんな馬鹿な、昔の東北を見よ、現代の日本の若者くらい恵まれているのも珍し いでないか、と説教後は反論しようと決めた。

 私がもっとも驚いたのは、彼の説法中に何人もの女性ばかりか男までが「お父様!」と何度も叫んだことだった。この連中、かなりヤバイ、と集会に来たのを後悔した。しかも説法中に布施袋が回って来て献金も要求された。たまたま拾円玉の持ち合わせがなかったので、百円を入れる羽目になる。

 説教は20分もなかったし、“先生”はすぐ去ったので反論の機会を逃がした。あの説法中の異様な雰囲気から、私はここにいる連中とは2度と関らないと決心した。その後、彼らとは会ってない。

 この奇妙な集団は、ひょっとすると統一教会だったのか?とにかく若い信者たちの「お父様!」の絶叫が印象的だった。彼らの「お父様!」とは血の繋がった実父ではなく、信仰上の父なのは高2の私でも分かったが、実父よりも“お父様”を崇拝する姿は違和感を覚えるだけでなく、ただただ不気味としか感じなかった。
 昔の東北を見よ、と内心思ったのは、戦前の東北では昭和農業恐慌もあり娘の身売りが横行していたのだ。私がこれを知っていたのは歴史教科書ではなく、本好きの父が買っていた昭和の歴史ムックから。

 上記の出来事は'70年代末だったし、その頃には既に娘の身売りなど行われていなかった。そのため昔の東北に比べれば今は断然いいと思ったのだ。“お父様”を信仰する若者たちは知らなかっただろうが。
 彼らには何か悩みがあったのか、統一教会とは無関係の信者だったのかは今となっては分からない。ただ、当時の私には深刻な悩みはなかったし、その頃から“歴女”だったので、その知識が怪しげな宗教団体の勧誘から免れた理由だろう。

元信者が明かす訪問勧誘の手口 旧統一教会問題はなぜ「女性被害者」が圧倒的に多いのか」という記事は興味深い。信仰にハマるのは女が多く、特に主婦がハマれば家庭崩壊の確率が高いはず。
 ではカルトに騙されないためにはどうすればよいか?ある程度宗教に関する知識を身に付けること。この場合、メディアの宗教報道は出来るだけ見ない方がよい。宗教=人を幸福にするはずの戯言を主張する始末だから。

◆関連記事:「カルト
悪霊の存在を信じる人々
人を幸福にするはずの宗教?

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