トーキング・マイノリティ

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カルト

2005-08-06 23:24:28 | 私的関連
   カルトという言葉がなかった頃から、その類の怪しげな宗教団体は絶えたことがない。確証はないが、私もカルトまがいの奇妙な集団に遭遇した時がある。高校2年生の頃だった。

  夏休み前の土曜日の午後、街をぶらついていた私に、二十歳前後で銀縁眼鏡をかけた真面目そうな女性が(私もマジメ学生に見えただろう)声を かけて来た。何と言ってきたのかは忘れたが、宗教の話になった。とにかく彼女の神の存在を確信してる口ぶりに、生意気盛りの私は揶揄気味で答えたのは確か だ。悪人が大手を振ってるのはいつの時代も変わらない、もし、いたとしても神は沈黙してるだけ、のような事を言ったと思う。私の態度にも係らず彼女は丁重 な姿勢で、「もし、時間があるなら××外科の近くに集会所があるので話だけでも聞いて下さいませんか」と誘った。外科を“がいか”と言った彼女に軽い侮蔑 も感じたが、好奇心もあり、結局集会所について行くことにした。

  集会所に来てみると、すでに20人くらいが集まっていた。彼らは皆若く、ほとんどが女性だが男も数名くらいいた。別に宗教的な象徴はない 20畳位の部屋でござが敷いてあり、部屋の前方に教壇のようなものが置かれていた。私を案内した件の女性は、まもなく先生が来る、と言った。暫らくして “先生”が姿を現した。

  その“先生”は結構太めの中年男で、黒縁の眼鏡を掛け、松本清張のような分厚くめくれた唇が特徴だった。何も宗教画のような秀麗な容貌の人を期待してたのではないが、“脂ぎったオッサン”が第一印象で驚いた。

  太めの“先生”が説法を始めたが、話は面白味に欠け声も美声と言えず退屈を感じた。どんな話だったのかまるで覚えてないが、唯ひとつ「いか に今の世が穢れていて、若者を食い物にしているか」の文句だけは記憶にある。そんな馬鹿な、昔の東北を見よ、現代の日本の若者くらい恵まれているのも珍し いでないか、と説教後は反論しようと決めた。

  私がもっとも驚いたのは、彼の説法中に何人もの女性ばかりか男までが「お父様!」と何度も叫んだことだった。この連中、かなりヤバイ、と集会に来たのを後悔した。しかも説法中に布施袋が回って来て献金も要求された。たまたま拾円玉の持ち合わせがなかったので、百円を入れる羽目になる。

  説教は20分もなかったし、“先生”はすぐ去ったので反論の機会を逃がした。あの説法中の異様な雰囲気から、私はここにいる連中とは2度と関らないと決心した。その後、彼らとは会ってない。

  カルト関連ニュースを見ると、彼らを思い出す、今頃どうしているのか。

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