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岸田文雄首相は11日、「法相は死刑のはんこを押す地味な役職」と9日に発言し、批判が強まっている葉梨康弘法相(63)を更迭する意向を固めた。岸田内閣では世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題をめぐり先月24日に辞任した山際大志郎前経済再生担当相に続く辞任で、政権への大きな打撃となる。
葉梨氏は11日の記者会見で、過去の会合でも複数回同様の発言をしたと明らかにし「全て撤回する」と述べた。9日以外では東京都内での3件の会合、地元での複数回の会合で同様の発言をしたと明らかにした。
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首相は11日から19日まで20カ国・地域首脳会議(G20サミット)出席などのため東南アジア3カ国を歴訪する。帰国後には臨時国会で令和4年度第2次補正予算案の審議などを控えている。発言への批判が強まれば国会審議に遅滞が生じるため、首相は長期外遊を前に葉梨氏を事実上更迭し、事態の沈静化を図ったとみられる。旧統一教会との関係が相次いで判明した問題の責任を取って辞任した山際氏に続き、岸田内閣では2人目の更迭となる。
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葉梨康弘法務大臣の発言は正直大した失言ではないと考えているのだが、「それを言っちゃあしまいよ」ということなのだろう。だが死刑について、刑事訴訟法について、「法の精神」について、「近代法」について少し延べておきたい。
刑事訴訟法四百七十五条に死刑執行は判決確定から六ヶ月以内にしなければならないとあるが、現実にはされていない。それに対する政府見解は六ヶ月以内というのは「訓示規定」であるとのことだ。人の命を奪う刑であるから慎重を期しているとのこと。
鳩山邦夫元法相は六ヶ月以内に死刑を執行して違法状態を少しでも解消した方が良かったと述べているが。
刑事訴訟法四百七十五条を素直に解釈すれば鳩山邦夫元法相の方が正しいのではなかろうか。法相が死刑に反対であろうとも、死刑囚が無罪だろうともマシーンのごとく(鳩山邦夫元法相はベルトコンベアーのようにと発言)執行しなければならないのではないか。刑事訴訟法に従えばそうなるはずだ。
裁判所に刑事訴訟法四百七十五条の解釈が持ち込まれたことはない。恐らくは政府見解に近い解釈になるだろうが、それは刑事訴訟法を踏みにじっているのではないか。
『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』で死刑執行人の登場人物(ジャイロ・ツェペリ)が無罪の死刑囚の死刑を執行しなければならないことに「納得」がいかず、その執行に反対したところ父親であり先代の死刑執行人に「納得」など死刑執行人が考えてはならないと静かに激怒されたのだ。それでは死刑執行人が裁判をしたことになってしまうからだ。
近代法は必ずしも弱者に優しいわけではない。万人に公平であるから時に冷酷とも思われる判決や執行になったりする。
明らかな犯罪者に裁判で無罪が下されることもある。
1000人の犯罪者を逃そうとも1人の無辜を出すなかれ。それが近代法である。
しかし死刑を六ヶ月以内に執行しないということは刑事訴訟法四百七十五条を空洞化させ「法の精神」を破るものだ。それで良いのか。
「死刑の判子を押すだけ」というのも法の精神に従えば間違ってはいないのだ。
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https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000131
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第四百七十五条 死刑の執行は、法務大臣の命令による。
② 前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。
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死刑の執行に関する質問主意書:質問本文:参議院
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死刑の執行に関する質問主意書
一 刑事訴訟法第四百七十五条第二項は死刑の執行について「判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。」と定めているが、実際には判決確定から六箇月以内に執行する方が稀なことであると認識する。これは法律違反に当たらないのか、政府の見解を明らかにされたい。なお同条同項には「上訴権回復若しくは再審の請求」などの場合、その期間に算入しないという但し書きがついていることは承知しているが、再審請求などがない場合でも執行までの期間は六箇月を超える方が通例となっている。これは法律違反に当たらないのか、併せて政府の見解を明らかにされたい。
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死刑の執行に関する質問に対する答弁書:答弁本文:参議院
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参議院議員水野賢一君提出死刑の執行に関する質問に対する答弁書
一について
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第四百七十五条第二項本文においては、死刑の執行の命令は判決確定の日から六か月以内にしなければならない旨が規定されているが、これは、一般に、訓示規定であると解されており、六か月以内に死刑の執行の命令がなされなくても、裁判の執行とはいえ、人の生命を絶つ極めて重大な刑罰の執行に関することであるため、その執行に慎重を期していることによるものであって、違法であるとは考えていない。
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(参考文献)
『日本人のための憲法原論』著・小室直樹
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