思いつくまま

思いついたことを書いています。

吉田修一著『元職員』(講談社)を読む。

2009年01月18日 05時55分55秒 | 読書
昨年末に某新聞の小さな記事を読んで興味を惹かれて読んでみた。
新聞には、「公金を横領、使い込み。 発覚を恐れた主人公がタイへ逃亡し、現地の女性と日々をすごす(「過ごす」くらい漢字で書けよ~)が、虚無感は消えず帰国を決意する ---。人生を投げ出した男の愚かしさと哀しみがまざまざと迫ってくる。」って書いてあったけど、しっかり内容を読んで紹介しているのかはなはだ疑問。 とばし読みで適当に書いただけの記事でデタラメとは言わないが、実際に読んでみるとちょっと違うんだよな~~。
この著者って、2002年に茶川賞(ならぬ芥川賞)を受賞していたのか、知らなかったなぁ。

帰りの電車の中で、たぶんニヤケながら(別にHな場面が出てくるという意味では無いが)読んだが、160ページそこそこの書き下ろし、異国・タイで働く日本人青年(彼はペナルティのワッキー みたいにタイ語がペラペラ)に紹介してもらった現地女性のミント(名前があのミントキャンディのミントというのもイイねぇ)とのアバンチュール、なんだか自分のできそうもない願望を次々に実現している感じで、自分をこの主人公に置き換えて、頭に映像を浮かべながら、アユタヤにも行ったりしながら、一気に読んでしまった。 面白かった。
主人公は公金発覚を恐れて逃亡したわけではなく、横領したカネで遊ぶために休暇を取って妻と一緒に旅行でタイに来る予定だったのが、妻が公金横領を認識して、旅行に行きたくないと言い出した(ドタキャンした)から、しかたなく1人で来ただけ。たまたまそこで出合ったワッキーがミントを紹介してくれたから、そこから楽しく遊んだだけで、虚無感から帰国を決意したわけではなくて、楽しかったけど(最後はムエタイファイターに殴られたけど)予定の滞在期間が過ぎたから帰るだけなのに----、現時点では人生を投げ出したわけではなくて、公金横領もまだ妻以外にバレたわけでもなくて(でも新人を採用することになったのでいずれバレそうだけど)、元・職員ではなくまだ職員なわけで、最初に書いた新聞記事の内容がデタラメに思えてくるくらいな感じだった。

ただ現実には、たとえば自分が敏腕な会計担当者で、いくらボンクラ上司がメクラ判ばかり押していても(おいおいコンピューターで処理しろよ)、何千万円もの横領はできない(そんなマヌケな遅れた公社でそんな資金が捻出できるとは思えないが、頭のいい○知○職員ならそれくらいウラガネで歌え君が代を捻出できるかも。)し、また、タイのように外はクソ暑くて建物の中はガンガンに冷房を効かせているところでは、すぐに温度差でバテてくたばるし、食べ物も辛いものばかりでは胃腸がもたないな。
ワッキーのようにタイ語がペラペラならいいけど、「コップン カム」(英語でテンキュー)くらいしか言えない自分では会話ができなくて、ミントとの意思疎通もむずかしいしなぁ。

あ~あ、やっぱり夢の中だけの世界だなぁ。でも、それくらい本当にタイでの生活、 よく書けていたよ。


某新聞の記事よりも、こちらの琉球新報の記事のほうがよっぽどか的を射ている。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-139613-storytopic-137.html


最新の画像もっと見る