この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#513 宮尾登美子著「天璋院篤姫」

2008年09月08日 | 日本文学
NHKの大河ドラマ「篤姫」の人気が高い。私もビデオに録画しながら見ている。たしかに面白い。
先日久し振りに地元の図書館に行ったときにこの本に目がとまった、上下のうち下しかなかったが借りて来た。
読んで見るとたしかに面白い。
この本の裏書を見ると、この小説は日本経済新聞の夕刊に連載されたものだそうである。1983年2月から1984年5月まで連載されたようである。

私はこの時期,日経新聞を読んでいたはずだが、これほど面白い小説が連載されていたとは気付いていなかった。

幕末に薩摩藩主の一族の今和泉家に生まれ、薩摩藩主島津斉彬の養女として、さらには近衛家の養女として徳川13代将軍徳川家定の正室として送り込まれたこのような女性がいたことは幕末の歴史や物語に興味をもっている私もうかつながら知っていなかった。

宮尾登美子氏の小説はあまり読んでいないのであるが、同氏の小説がドラマ化されるといずれも実に面白く、女性ならでは描けない女性の感情や心理のひだひだはなるほどと説得性がある。

この下巻での大きなテーマは、徳川家の姑である天璋院篤姫と嫁である皇女和宮との間の軋轢である。これは永遠のテーマである嫁と姑の問題である以上に、幕末という背景の下での、徳川家と天皇家を背景とした人々との軋轢である。

篤姫は徳川家を守る人物として描かれている。著者から見ると、最後の将軍の徳川慶喜以上に徳川家のことを考えている。

これは著者の見解にもとづくものか、それとも史実にもとづく篤姫の見解なのかはわからないが、最後の将軍徳川慶喜に対する見方は大層厳しいのが面白い。
これは、和宮の慶喜に対する見方とも通ずるのである。

篤姫は、時期将軍が一橋慶喜になるように画策するように期待されて養父の島津斉彬から将軍家に嫁がされた経緯から見ても面白いことである。

「二人がこのように親しくなった一因に、共にいまだに慶喜を忌み嫌うという一点があり、表面徳川門葉として相集ってはいても、心中なお容れない思いがあるのは女性の潔癖もあったろうか。篤姫の宮への相談というのはこのことであって。今後徳川宗家と慶喜の一族とは硬く婚姻することを禁ずるという家訓を作りたいという考えをまず宮に篤姫は打ち明けたかった。必ずや宮も賛同してくれるであろうと篤姫は信じて疑わず、これまではさまざま行き違いがあったけれど、これからはは二人力をあわせ、徳川家を再興できると思うと胸も晴れるような感じがあった。」(宮尾登美子 天璋院篤姫より)

最近私は人がいつ何歳で亡くなったのかに自然と関心を持っている。
篤姫も和宮も亡くなったのは全てのことが終わって明治の代になってからとのことである。
この作品の最後の部分は幕末の波乱も過去のものとなり平和な世の中で二人の仲も円満になっている描写は読んでいるものもほっとする。

和宮(静寛院宮)は1846年生まれ、で1877年(明治8年)に32歳で亡くなっている。脚気の療養先の箱根塔ノ沢の環翠楼でなくなったとのことである。

一方天璋院篤姫は1836年生まれ、1883年(明治16年)に東京の徳川宗家の家達(孫にあたる。)の家で48歳で亡くなったのだそうである。

インターネットのWikipediaによると和宮について次のような記載がある。
小柄な女性であったことがわかる。そして興味をそそるような記述もある。
ずいぶん前に有吉佐和子著の「和宮御留」を面白く読んだのを思い出した。

「『増上寺徳川将軍家墓とその遺品・遺体』によると、和宮は身長143cm、体重34kg(いずれも推定)であり、骨格の形状から極端な反っ歯と内股が特徴の小柄な女性であったと推定されている。また、不思議な事に左手の手首から先の骨がいくら探しても見つからず、増上寺にある和宮の銅像も左手は不自然に隠れている事から、彼女が生前、何らかの理由で左手を欠損していたのではないかという説がある」(Wikipediaより)

「和宮御留」をまた読みかえして見ようと思った。

画像:宮尾登美子著「天璋院篤姫」下 講談社刊

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3 コメント

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大河ドラマ (近藤 滋)
2008-09-23 09:11:23
面白く拝見しました
「篤姫」はNHKの大がドラマの中でも良く出来た作品ではないでしょうか?
前作がとんだ駄作で途中から観ることを放棄してしまった私も家内も夢中になってみています
作品の中の二人の演技は流石で演出家の腕も相当のものですが,あまり役になりきっている二人を見て「此の二人私生活ではどんなだろう」なんて下世話な思いを抱くのは私の野次馬根性の性でしょうか
次回「和宮御留」の記事を楽しみにしています
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Thank you for your comment (MS)
2008-09-27 09:51:05
Thank you for your commemt.
Really "Atsuhime"is very enjoyable.
I wish I could talk on this TV drama when we meet next time together with our friends of SCS.

I am writing this message of thanks to you in English because this column does not accept Japanes words at this moment ,I do not know the reason why.

I am looking forward to seeing you soon.

Best regars.
M.S
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コメント有難うございました。 (MS)
2008-09-28 10:06:41
近藤様

コメントを頂き有難うございました。
本当に、NHKの今年の大河ドラマ篤姫はいろいろな点で面白いドラマですね。
幕末の幕府と薩摩のような外様の有力藩の関係、皇室と幕府の関係、大奥での武家と天皇家のしきたりの違い、等々。

そして原作が力のある女性作家であるだけに、女性の登場人物が面白く、また女優さんたちも見事に演じていますね。
音楽も素晴らしい。

また皆様とご一緒に篤姫を肴にお酒を飲みたいですね。

今日は日本語でのインプットができますので、あらためて頂いたコメントのお礼を申し上げます。
 
有難うございました。
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